天使に別れを告げて。
元々天使でなかった君へ。
君は弱かったね。いいや、元々弱かった。
下界が怖かったでしょう?
剥き出しの悪意や怒り、寂しさや苦しさに襲われて
手に取るように、自分が蝕まれるように
君を殺していってしまったね。
そして、生まれ変わった君は
毒を持つ者がどこへ行けばいいのか知りたがっていると知った。
そうして、君は道を切り開いて、指し示し
「あなたの居場所はここだよ」
と微笑むの。
毒を持つ者はそこで浄化されたりもした。
だが、その居場所から逃げ出す者もいた。
君は天使になったから、居場所から逃げ出す者にどう接すればいいのかわからなかったんだ。
また、毒を持つ者も同じように、優しすぎる世界が初めての感覚で怖くてどうすればいいのかわからなかったんだ。
ねえ、優しさも暴力になりうるんだよ。
そうして、君は堕天したんだ。毒を持つ者と一緒に。
「一緒に堕ちてしまえばいいのに」
ってそう思ってたでしょ?
それが優しさなんて思ってるのなら、愚かな事だよ。
それは弱さだ。君は弱い。
君は弱った。元々弱いのにそれ以上弱った。
だから、身を潜めて休んだんだ。でも、身を潜めていても賢者は容易く君を見つけ出す。そして、賢者たちは君に、こう口を揃えて言うんだ。
「美しい者は毒があるから綺麗なんだ。」
今ならわかるだろう?
弱い優しさは暴力だ。
なら何が必要だ?
毒を制するには、何が必要だ?
君に毒を授けよう。
毒を以て毒を制すんだ。
毒の使い方を間違えてはいけないよ。
君は存在するだけで人を魅了してしまうんだ。
それは、天使も悪魔も同じこと。
だから、毒の使い方をしりなさい。
それが毒を癒す、薬になるように。
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