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関東の清水寺 西光院
by noriko
ゆるやかな丘を、彼岸花があちらこちらの畦などに群れて咲くのを辿りながら進んで行くと、向こうの方に見えていた低い山が、いつの間にか消えて、うす暗い山道を蛇行しながら登り、ああ、さっきまで見えていた山の中を車は走っているのだな、と気づいた。
こんなうっそうとした山の中にしては、たくさんの車とすれ違った。いったいどこから来てどこに向かうのだろう。不思議に思うような山道だった。
木々に当たる陽の光が作り出す強烈なコントラストが、かえって不安をあおってくる。
最近強い雨、風があたったのか、道路の方に覆いかぶさりはしないまでも、林の中では、たくさんの木々が折れ、倒されていた。
あれこれ思い巡らしているうちに、「西光院」に到着。
撮影が禁じられていることも踏まえて、静かに中に入っていくと、辿り着いたことを知らせるように、ここでも真っ赤な彼岸花が咲いていた。
すると今度はどこからか金木犀の香りが漂ってきて、私を十一面観音のお堂へと導いた。目の前に、一本の木で彫られたと思われる大きな観音様が現れた。お腹のところのギザギザは筑波山のようにも見える。
手を合わせ、その先の本堂へ。「関東の清水寺」と言われている、という実感が沸いた。岩から突き出るように柱が組まれている。懸造(かけづくり)というらしい。舞台のような場所に上がり、お参りをする。見える景色に圧倒されそうになったが、まずは手を合わせないわけにはいかない。平安時代に開基された、にも関わらず、最近やっとここを知り、今日のご縁につながったのだ。
青い空、その手前の山並み、田園と家々。それほど高い山ではないのに眼下の広がりは申し分のない絶景。途中で見かけた、パラグライダーに乗って鳥のように飛んで山から降りる人の爽快感を、私もひそかに味わっていた。
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by reiko
10月に入ったというのに気温は30度を超えるという。そんな暑い秋の日にドライブに出かけた。目指すは石岡市の西光院。『関東の清水寺』とも呼ばれているらしい。
道すがら、大きなススキが生えているのを見つける。「お化けススキだ!と」車中で盛り上がる。秋のうす暗い夕暮れ時に、あの背の高いススキの影を見たら、びっくりして怯えてしまいそうだ。彼岸花もあちこちに咲いていて、秋の気配がしっかりある。
道中、標識に『土師』という地名を見つけ、なんと読むんだろう?という話になった。調べたら、『ハジ』と読むらしい。その昔、埴輪や土器を作っていた職人たちをそう呼んでいたのだという。以前、郷土の文献を読んだ際に、そこからほど離れていない場所に、埴輪を作る大規模な窯場があったという話を読んだことがある。そういった仕事をする人たちが、暮らしていた場所なのかもしれない。
広い田畑の向こうには、小高い山が連なっている。もしかしたら、あの中に古墳もあるのかも。
車が、西光院が建つ山中に入っていく。仄暗く山深いわりに、前から車が何台もやってくる。決して通り抜けやすい道ではないと思うのだが、往来があるのが不思議だった。山の向こうとこっちの近道なのだろうか。
目的地が近くなると、より道がくねる。どうやってこんな場所に寺を作ったのだか。
辿りついた西光院は、写真撮影不可だった。小高い山の上、崖のような斜面に建っている珍しいお堂なのに、写真に収めることは出来ないらしい。となれば、俄然「見ること」に集中する。急な傾斜の、岩がごつごつした斜面に突き出るようにして、木造の建物が立っていた。
印象としては、(写真でしか見たことがないが)中国の懸空寺に近いものがある。あれほどの険しい崖っぷちではないのだが、感覚としては似ている気がする。
お堂の周りの囲いは、膝までしか高さがなく、手摺としては機能してくれない。おそるおそる廊下を進んで、お参りし、振り返ると、小高い山々と田畑と点在する人里の景色が見渡せた。うっすらと霞がかっているのが、また情緒がある。
写真に残せないと思うと、景色を目に焼きつけようと真剣になる。もしまたこの場所を味わいたければ、再訪するしかない。写真を撮ることがインスタントになった今、そういう気持ちになることが新鮮で、姿勢が正される心地がした。
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