報佛寺
by noriko
親鸞の弟子である唯円が開基したという、水戸市にある報佛寺は、しだれ桜が美しく、ちょっとした名所になっていて、今ならスマホなどで情報を簡単に得られるが、そうでなかった時代でもどこから聞きつけてきたのか、あるいは今が見頃だと感知する能力が備わっているのか、この時期はいつも人だかりになっていた。
だからといって、その中の一人として毎年桜に見とれているのか、というわけにはなかなかいかないもので、隙間からわずかに見える桜をよそめに、寺の横を通り過ぎてしまうのが常だった。
多分、桜には「ご縁」というものがあって、時が満ちてこないと、なかなか巡り会わせてもらえないのかも知れない。
その「ご縁」に恵まれて、今年はついに愛でることができ、やさしく風に揺れる、ベールのようなしだれ桜を存分に楽しむことができた。
そうなればしめたもの。次に訪れる期会までもいただいた。
ここは、しだれ桜ばかりでなく、さまざまな草花が、よく手入れされた庭を彩っており、そばには、これからの出番を待って、硬いつぼみをたくさんつけた花たちが、目に飛び込んできた。
ちょうど見頃になった花々に出会うというのは、奇跡に近い。自分の家の庭でない限り、そうタイミングよく「今日が、その日デス」というわけにはいかないものだ。
かといって時には、執着せずとも、すんなりと出会えてしまうこともある。「ご縁」だから。
次のご縁では、濃いピンク、白、赤、オレンジ。色とりどりのつつじに誘導されて、この間とはまた別の花々にお目にかかれた。
中でも白い藤は、生垣になっていて、花の一つぶ一つぶが大きく、だからなのか芳しい香があたり一面に漂っていたのが印象的だった。
さてこんどは、いつ連れてきてもらえるだろうか。紅葉の季節にでも、期待したい。
by reiko
報佛寺。親鸞の直弟子が開いたとされる浄土真宗のお寺である。
親鸞は、茨城県の笠間を拠点に20年ほど布教活動をしていたらしい。教科書に載っている昔の人が身近な所にいたことに、ほえーっと感嘆する。
郷土のことに特に関心がないまま大人になった私だが、最近少しずつ興味が出てきている。この場所でこんなことをしていたのかぁと、その人物や物事に思いを馳せる想像力がついてきたようだ。フィクションではない。実際にここで人間がこのように生きていたのだ、と考えられるようになって、郷土の歴史資料を読むのが面白くなった。
報佛寺は、歩きで行くには遠いが、バスでは直通でたどり着かない。そのため途中までバス、その後しばらく歩くという形で向かう。現地までの交通手段が2種類以上になると、遠方に行くわけではなくとも、『小さな旅』感が出るのが楽しい。
報佛寺のあたりは、学生時代によく通った道なのだが、当時はそこにお寺があることに全く気がついていなかった。興味がない時期にはそんなに徹底的に無関心なものかと、我ながらびっくりする。
前回の記事も藤が目的のお出かけだったが、報佛寺にも藤棚があり、それを見に行った。そして今回も藤は少なく、代わりにつつじがよく咲いていた。
4月下旬の快晴の陽の光の中、色とりどりのつつじが輝いている。わー、綺麗! と心の風通しが良くなる。つつじの種類もいくつかあるようで、時々花の形が違うものを見つけては、こういうつつじもあるんだな~とまじまじと観察した。
帰りの道を歩いていると、道端に「○○八景」と書かれた立札があった。ここからの景観が『良いもの』として選ばれているのか、と立ち止まって眺める。そこにあるのは、学生時代も見ていた景色。特に格別美しいというわけではない。
しかし昔は報佛寺を含めた一帯が城だったらしく、立札の辺りは宿場があったそうだ。
今とは全然違った景色が広がっていたんだろうな。あの建物や道路がなければ、筑波山まで見渡せたのかもしれない。と当時を想像しながら歩いた。