中学受験で得られるものとは?
まえがき
毎年、中学受験を経験した子どもたちを見ていて、合格できた子どもはともかく、合格できなかった子どもたちにとって何が得られたのかと自問自答をするのが講師です。受験が終わっても塾をやめずに次のステップに向かって歩みだすその強さがどこからくるのか。塾卒業のときの表情、その後、成長した再会のときの表情と言葉から気付かされることを執筆します。
沖縄県内の受験での流れですが、おそらくどの地域でも同じことがいえるのではないかと感じています。受験や合否発表の時期などは2024年現在としての情報となります。
①沖縄の中学受験事情
沖縄県の中学受験は12月の開邦中や球陽中などの県立中高一貫校と沖尚や興南の私立中学推薦入試からはじまります。
その後、1月に沖尚や興南の前期入試、そして昭和薬科大学附属中と続きます。1月中に鹿児島の池田中、佐賀の弘学館、愛知の海陽中、奈良の西大和が沖縄現地試験として実施されます。
沖縄在住の中学受験希望者はその時期に向かって小4あたりから入塾し本格的に動き出します。はやくスタートをきるほうが無理のない受験対策になりますが、なかには小6から入塾して頑張る子どもたちもいます。
②子どもたちの勉強法
受験勉強は入塾することで何をどのようにやっていくのかを塾の指導によってすすめていきます。
昭和薬科は小学校の調査書などは不要、実力をしっかりつけていけばいいのですが、開邦中や球陽中、沖尚や興南は調査書やよい子のあゆみなどの提出が課されます。
塾で中学受験の勉強さえしていればいいというわけでもありません。
中学受験のために入塾する前に、基本的な漢字力や計算力、学校の宿題をしっかりやるというような姿勢はとても大切です。
中学受験を目指し入塾したあとは学校の宿題に加え、塾の宿題や自主的な復習をしっかりと継続する力が重要になります。
あとは塾の指導にしたがって成長していくだけとなります。
③親と子のギャップ
私立中や県立中高一貫校に通うことで、子どもにとってプラスになるという情報を親が聞き、子どもの意志に関係なく入塾に動き出すパターンも多いです。
しっかりと学ぶ姿勢を育ててきている場合はいいのですが、小学校の宿題やテストなどもままならない状態の場合、塾の指導が効果的にならないことがあります。
そのような子どもの場合、そもそも塾に入りたくないのに、仕方なく通わされてしまうだけになる可能性があります。
最近の進学塾では、そのような子どもたちも育てようとする方向性が高まっていますが、やはり姿勢がしっかりとできた状態で入塾するのが効果的です。
勉強をていねいにできる流れで中学受験を目指すことができれば、効果的に合格のチャンスに近づきます。
塾にさえ入れておけば合格させてくれるというイメージではなかなかうまく行きません。
親子でチャレンジすることを楽しめる環境があると目に見えて学力のアップにつながるでしょう。
しっかりと受験に向かい、その結果を受け止めることで得られるもの。それは受験未経験者には得られない大きなポイントがあるのです。
④中学受験合格発表の様子
開邦中や球陽中は年末に合否発表があります。県立中高一貫校の場合、合格という表現ではなく、「入学予定者に選ばれました」という通知が郵送で来ます。
私立中ではWEB上で発表などを実施します。
塾に来ると子どもたちは自らの受験結果を報告してくれます。笑顔の良い結果、泣いたであろう腫れた目のよくない結果…。
講師が嬉しさと辛さの両方を突きつけられる時間。
合格者への喜びも大きいのですが、合格に導けなかった不甲斐なさや申し訳無さ…
その両方に真摯に対応することが求められます。
でも…
もっともその結果を受け止めなければならないのは子ども自身なのです。講師でも親でもありません。
特に不合格という結果は、強がってなにも感じていないようにみせる子どもでも大きな辛さを感じるはずなのです。
⑤中学受験で得られるもの
努力を継続することで、目標とする志望校に合格する。
その経験は、努力は裏切らない。自分自身の力、自信など未来につながる大きな力としていきてきます。
不合格になった子どもたちはどうでしょうか?その子たちって敗北者なのでしょうか?未来もうまくいかない子どもなのでしょうか?
そんなことは全くありません。合格者と同様に不合格になった子どもたちも多くいます。
その子たち、しっかりと成長しています。あのとき不合格になったことで、「自分の努力の甘さを知った」「悔しい気持ちを初めて知った」「実は手を抜いていた、やっぱり現実って厳しかった」などと卒業したあと遊びに来てくれたときに話してくれます。
その成長で、合格させてやれなかった辛さが、少しだけ癒やされる瞬間です。
合格しても不合格でも、そこから自分を振り返り、新たなステップで踏み出せる強さとたくましさを持った子どもたち。
これが中学受験で得られることだと感じています。
親っていつまでも生きてはいられないんです。子どもが自立して強く生きていく糧をもってほしい。
私自身も親です。子どもの合格を心から祈るのですが、合否を超えた次に向かう力をつけてもらうことが大切だと考えています。
さあ、命より大切なお子さんたちに何を伝えていくべきか!合格のための指導は当たり前、さらに伝えられることを!
塾講師は教育者です。子どもたちの未来、お父さんやお母さんほどの愛情には届きませんが、そこに近い存在として、子どもたちの未来に求められていることを指導することが使命だと感じています。
さあ、子どもたちために。未来を見据えていきましょう!
子どもたちへ生きる力を!
2024年2月 執筆