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garakutax
雪と温もり
静かな山里に暮らす少年、悠人は、冬になると祖母の家に滞在するのが好きだった。祖母の家は囲炉裏があり、薪がはぜる音と、雪の降る静寂が心地よく調和していた。
ある日、大雪の日に祖母と二人で雪かきをしていた悠人は、ふと遠くにうずくまる小さな影を見つけた。それは、凍えた子狐だった。悠人は祖母に頼み、子狐を囲炉裏のそばに連れてきた。
「雪は冷たいけれど、人の心があれば温かくできるよ」
祖母はそう言って、子狐のために少しの食べ物を分け与えた。悠人は子狐の毛並みを優しく撫でながら、少しずつ温もりが戻っていくのを感じた。
やがて春が訪れ、山に帰っていった子狐。しかし、翌年の冬、また祖母の家に訪れた悠人は、家の前でじっと彼を見つめる一匹の狐を見つける。その瞳には、あの時の感謝が宿っているようだった。
悠人は微笑み、そっと手を伸ばした。雪が降る中、その手に伝わる温もりは、確かに去年の冬よりも優しく、そして深かった。