2019年11月、浪江取材/北上ノ原
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加倉スクリーニング場の脇を過ぎ、高台の北上ノ原へ向かう。
この場所は放射線管理区域のレベルは超えている(約0.6μSv/h以上)。つまり本来は飲食禁止。実際、帰還困難区域ゲートに立つ警備員は、自分の立っている場所では飲食はしないと証言している。朝、コンビニで買ったおにぎりを立ち食いしながら、複雑な気持ちになった。
高台に上がる上り坂の手前で、新しくフレコン置き場が出来ていた。
元々浪江に住んでいた知人によれば、これは台風被害によって発生したフレコンバッグで、放射性廃棄物ではないのでは?とのこと。
確かにこのフレコンには線量等は書かれていなかった。
ちなみに、高台となっている地域の麓付近には、このように1〜2μSv/hの場所が広がっている。広大な範囲の「ホットスポット」となっている。
坂を登りきると、ある会社の社員寮がある。
当然ながら、震災後は誰も住んでいない。
中は綺麗に片付けられていた。
周囲は荒れているが…強化ガラスだろうか、破られてるようなことはない。
中は綺麗に片付けられているが…ここもいずれ解体されるのだろう。
人気は全くない。こんな空間に慣れつつある自分がいるが、初めて足を運ぶ人は恐怖を覚えるかもしれない。いや、自分だって、常に心拍数は上がりっぱなしだ。ちょっとした物音でビクッとする。
さらに南へ進む。
こんな廃屋が並ぶ町を「ゴーストタウン」と呼ぶことが悪いことだとは思わない。しかし、ここからわずか数百メートル離れた場所に人が住んでいるのも事実だ。
ここにも猪が掘り返した跡がある。僕自身、真昼間に浪江で遭遇しているが、猪と猿はとにかく多いという。
平屋が並ぶ。片付けられてるところもあれば、震災直後のままと思われる家もあった。
動物が突っ込んで破った窓もあれば、空き巣の入った家もあるだろう。以前書いたかもしれないが、空き巣を捕まえてみたら、元々は同じ地域に住んでいたご近所さんだったことがあったという。しかもそれは珍しいことではなく、実はいろんな場所で起きているということだった。
今年3月、夜ノ森や大熊や双葉で立入規制が緩和されたが、それに伴って当然のようにまた空き巣が増えたという。震災から9年が経ち、「もう何も盗るものなんてないのにね」と双葉から避難している知人は話す。
心がざわつく。静かで人っ子一人いない。
視線の先には中上ノ原団地が見える。
木造の小さな家だが、屋根以外地震で壊れた様子はない。ただ、原発事故で汚染されただけだ。
この家の中は片付けられているが…こんな光景を、一体日本中のどれだけの人が見ただろうか。これで五輪などにうつつを抜かしている場合だろうか。「復興」を掲げて決まった東京五輪だが、今や新型コロナでそんな建前も消えてしまった。「新コロに打ち勝つ五輪」どうにでもでっち上げ可能な五輪など、ただの政治ショーだ。必死に練習しているアスリートたちが政治のコマとして扱われる。とても失礼だ。
空は青いのに
ただ人だけが、自ら傷つけあって殺しあって、地球さえ壊す。
北上ノ原を抜け、この後中上ノ原団地へ。過去2回訪れた場所で、いわば定点観測だ。
<続く>
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