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2020年10月双葉町取材の記録(写真) その5 産業交流センターから実証実験の現場〜浪江へ(終)

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<続き>


伝承館と産業交流センター周辺にしか整備されていないインフラ

 中間貯蔵施設から退出した後、再び原子力災害伝承館方面へ。隣の産業交流センターにて昼食をとる。2020年10月のこの時も、駅前が避難指示解除され人が住み始めた2022年10月も、そして2024年10月の今も、双葉町にはコンビニや飲食店、ホテルはここにしかない。住居がある双葉駅の周辺には、小さなクリニックと郵便局しかない。

 双葉町は、産業交流センターに出張でやってきた首都圏の社畜のための施設ばかり充実して、居住している人のためのインフラはほぼないのが現状である。

伝承館へ向かう道すがら、今はなき正福寺とまどか保育園の入り口が向こうに見える。
産業交流センター。この時はまだファミマもなかった。

若い移住者のためだけに開かれるイベント

 何十億もかけて作ったこの産業交流センターでは、イベントも多く開かれる。町民が住んでいる駅西住宅からは2km以上離れており、高齢の帰還者はここまで歩いてくることは出来ない。移住した若い人たちは車でここまでやってきて、皆で楽しくイベントをして過ごす。

 主催団体の人に「駅前でやれば高齢の帰還者も参加できるのに」と伝えると、「そういう考え方もありますね」と返事が来た。移住してきたというその人物の頭には、帰還した高齢者のことは全くなかった。

 昨年それを伝えてから、当事者からの訴えもあり、双葉駅前でイベントが開かれることも増えてきた。しかし今も、帰還者と移住者の間には溝が存在したままである。

伝承館周辺の風景

あの白い建物の中で、汚染土をふるいにかけて減容化(容積の縮小)を行う。
海側に残された廃墟。

 伝承館よりも海寄りの場所には、復興祈念公園が作られる。2020年10月の段階でそれは決まっていたが、4年経った今もまだ完成していない。予定地にあった墓地は、強制的に接収された(お骨は家族が引き取った)。

津波で流された車。今もここにあるかは不明。

20年8月に実証実験のために植えた野菜を見に行く

 鵜沼久江さんは、自分の目で本当のことを知りたいと双葉町の農業委員会に所属している。そんな鵜沼さんに誘われて、この年の8月、僕は農作物栽培の実証実験の現場に行っていた。そこがどうなっているか確認したいというので、皆でそこへ見に行った。

 電気柵で囲われた中にその場所はある。

 「一部収穫されている」と鵜沼さんは話した。

 植える時だけ農業委員会に所属している農家に依頼して、収穫は行政が勝手にやる。悪い結果が出た場合は何も発表せず隠し、いい結果が出た時だけ公表する。その不誠実なやり方に、今も鵜沼さんは怒りを口にする。

福島の自然は美しい。しかしこの場所は「復興祈念公園」として全て人間の手で整備される。
ここは津波の浸水域であるため、人が住むことはない。なので公園とする。
耕地整理記念碑と向こうに見える原子力災害伝承館および産業交流センター。

浪江町へ向かう

 この日、僕と初対面のYさんは、双葉に来たのは数年ぶりだった。双葉郡の様々な変わりようを見せようと僕と鵜沼さんで相談し移動する。Yさんはそんな僕に「あんた、私たちよりこの町知ってんじゃないの」と目を丸くして話す。

寺内前阿弥陀堂。今は解体され跡形もない。
県道井手長塚線を走り、双葉IC近くの瓦礫集積所へ。
瓦礫集積所を見ながら、浪江へ移動する。

浪江町のメガソーラー

 最後に、ここをYさんに見せたかった。原発事故で汚染された農地の行末。今も都市に搾取される福島。

谷津田地区。ここで作られた電気は首都圏へ送られる。
酒井地区。谷津田地区とはパネルの並び方が違う。
ここは除染をしておらず、今も飛び地のような帰還困難区域となっている。
帰還困難区域であることを知らせる看板が4枚並ぶ。先頭が英語であることに注目。

酒井地区はなぜ除染をしないのか

 酒井地区は除染をしていない。そのため、今も帰還困難区域のまま。これは、栄養の豊かな農地を除染という形で剥がしてそれまでの歴史を捨てるより、セシウム137の影響がほぼなくなる300年先に向けて土を残すために決断したこと。

 汚染された土地を国は買い取らない。東電は300坪120円でしか買わないという。除染して農業を再開しても売れるかわからない。であれば、太陽光発電の事業者にパネル用地として貸す方がよほどマシ。

 メガソーラーというと多くの人が顔をしかめるが、これも苦渋の決断だということを理解してもらえたら。

帰り際、山麓線(県道35号)を走っていた時に、車内の空間線量が5.0μSv/hを超えた。

<終わり>

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