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2020年6月福島取材③/桁違いのホットスポット
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<続き>
双葉厚生病院は代行バスから何度も見てた。JVJA(日本ビジュアルジャーナリスト協会)の人たちが震災直後に浜通りに行き、双葉厚生病院の前で撮影した映像もYou Tubeで見ていた。そこの目の前に来たことに、ちょっとした感慨を覚える。窓越しに中を覗くと、震災当時の混乱を思い起こさせる光景がそこにあった。
9年3ヶ月を経て、建物内部に植物が入り込み、枯れ葉が床に多数広がっている。その先に見える病院の外来受付は席が乱れ、ベッドが廊下に置かれたまま。その光景にどうにも圧倒される。
玄関付近から離れ、脇の道を歩いて施設を見渡す。ダンプが何台も道路を走り抜けこちらをチラ見していくが、そんなことはおかまいなしに僕は撮影して歩いた。僕の中では、ステーションプラザふたばで、個人情報を晒してまで積算線量計を借りて町なかを歩いているので、行政公認のような意識もあった。
双葉厚生病院附属の、双葉准看護学院の入口が見えてきた。そこから雑草が茂った敷地内に入る。
(双葉厚生病院をさっきとは反対側から臨む。)
六国から東へ入ってから、線量は高め。空間線量は常に毎時1.0μSvを超えていた。双葉厚生病院や看護学校の敷地内も当然高く、毎時2.0μSv前後で推移している。この敷地内は除染をしたのだろうか。コンクリで固められていて、高圧洗浄するだけで済むと思うが、果たしてどうなのだろう。
双葉厚生病院の脇には、社協や地域包括支援センター、デイサービスなどが入る福祉施設「ヘルスケアーふたば」もあった。
(通常は、こう言った施設のそばには葬儀屋も建つのが日本の風景だ。)
災害時、障害者や高齢者の避難は苛烈を極める。まさに死と隣り合わせで、大熊の双葉病院の患者が大量に亡くなったことは有名だ。双葉厚生病院やヘルスケアーふたば、その前に立つ特養ホームせんだんなど、ここには福祉施設が集中しているが、当時は大混乱だったと思う。もし自分がそこで働いていたらどうだったか、考えるだけでも恐ろしい。
デイサービスの風呂と思われる場所は綺麗に片付いていた。震災が起きたのは午後2時46分。通常のデイサービスなら入浴は午前中で終え、綺麗に清掃した後なので整っているのだろう。地震が起きたのが午前中だったら、この中は地獄絵図だったはずだ。
(特別養護老人ホーム、せんだん。)
(ここに入居していた人の一体何人が、今も生きているだろうか。)
(双葉町老人福祉会館。)
(緑のシートに覆われたフレコンバッグ。あの向こうは中間貯蔵施設建設エリアであり、届出なしに入ることは出来ない。)
双葉厚生病院からさらに東へ進むと、双葉町青年婦人会館があった。モニタリングポストは1.382μSv/h。
そこには、パッと見、小綺麗な車が並んでいる。ゼネコンが駐車場にしているのか?と思い回り込んで見てみると、どの車もタイヤから空気が抜けペシャンコになっている。9年3ヶ月このままだ。皆、仕事場から着の身着のままで逃げた。
建物の玄関前は床のタイルとコンクリにヒビが入って割れており、当時の地震の凄まじさを9年が過ぎたこの日も伝えている。
建物自体が大量の放射性物質を浴びていることもあって、いずれは解体されるのだろうが、震災遺構として保存しておいてほしいとさえ思う。
その後、六国脇のJAふたばに次いでモニタリングポストが高い数値を示していた、東電長塚第一独身寮付近へ。
ここは敷地内に入った途端に線量計が凄まじい勢いでカウントを鳴らし、一気に数値が上がった。
それまで道路上で毎時1.0〜2.0μSv程度で推移していたのが、敷地内であっという間に3.0はおろか4.0も超え、植え込みの前では毎時5.82μSvまで上がった。
首都圏では、毎時0.23μSvを超えるような場所をホットスポットというが、双葉町のホットスポットはレベルが違う。
帰還困難区域の基準は、年間20mSv(1日8時間屋外、16時間屋内として、毎時3.8μSv)以上だ。本来そこは、許可がなければ入れないし、防護服を身につけるべきレベルの空間線量だ。しかし実際は、大人だけでなく赤子でさえも、誰でも入れるエリアに、年間50mSvを超えるような場所が点在している。
「特定復興再生拠点区域」としてこのエリアには商業施設が建ち、海側にある避難指示解除されたエリアに住民が帰還した際(2022年以降)には、買い物が出来たり働く場所として整備されるというが、それまでに行政は念入りに除染を行わなければならない。しかし、今のこの国に対する信頼は失墜しており、僕には嫌な予感しかしない。
(隣の東電長塚第二独身寮。)
(この写真の左の赤い葉の近くが非常に高線量だった。)
その後、大量のフレコンバッグが見えた「中間貯蔵施設建設エリア」へ向かう。
<続く>
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