【2024年2月、双葉、大熊、富岡取材その12 更地だらけの夜ノ森(終) 】
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<続き>
鬱蒼とした山の坂を通り抜け、夜ノ森の町へ出ると、広い更地が広がる。ところどころ解体されてない家があるものの、ほぼ更地だ。こうしなければ線量は下がらなかったと思われるが、それにしてもこの姿はあまりにも悲惨。0.2μSv/h程度の場所もあれば、1.0μSv/hを超える場所もある。
夜ノ森といえば桜が有名だ。毎年桜の時期になれば、この場所は花見の人で賑わう。かつてバリケードがあった頃、前に立つ警備員に聞いたことがあった。
「桜まつりの時期だけ大量に人がやってきてお祭り騒ぎ。違和感はありませんか?」
「もう慣れましたね」
慣れましたね、ということは、最初は戸惑ったということだ。僕も戸惑った。真新しい遊具が建つ夜ノ森公園。普段は誰もいない夜ノ森公園。笑顔で桜を愛でる人の向こうには、廃墟や更地が広がる。この人たちの目はどうなっているのだろう? 桜の向こうの風景は視界に入らないのか、あれを見ても何とも思わないのか。苦虫を噛み潰したような表情で桜の向こうを見つめる人のことが気にならないのか。僕は空を真っ赤に染めた『紅』という絵本にその気持ちを込めた。そしてそれ以来、桜まつりには絶対行かないと心に決めた。
夜ノ森駅に到着。かつての駅舎を模したトイレのベンチに座る。トイレの目の前のベンチで弁当をかきこむ30代くらいの男性がいた。この人は、おそらく昨年暮れに夜ノ森から小良ヶ浜を歩いた時にもいた人だ。あの時も同じ場所で弁当を食べていた。富岡に住んでいるのだろうか。声をかけようか迷っているうちに、その彼は迎えにきた車に乗ってどこかへ行ってしまった。
それから1時間あまり、夜ノ森駅周辺を見て歩く。デイリーヤマザキも解体され消えてしまった。そういえば、リフレ富岡なんてのがあったっけ。郷愁に浸りつつ、常磐線に乗って帰路に就いた。次は新緑の季節にでも歩きに来ようか。今度行けば、いよいよトータル500kmに達するな、そんなことを思いながら帰った。
この日の積算線量は、富岡駅以北でトータル7.7時間、5.93μSv。大熊町側がとにかく線量が高かったが、富岡に入ってからは、ホットスポットは別にして概ね低めで推移したため、1時間平均では少し低めとなった。
<終わり>
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