3月終わり、旅立つ憧れ
2023年始まってもう3ヶ月たってしまいましたね…1月、2月の怒涛の日々を終え、3月は経験した本番の中で感じた個人的な課題を見つめ直す月でした。
タイトルにある「憧れ」ですが、WBC決勝戦の前に大谷翔平選手が言っていた「憧れを捨てましょう」の言葉が思い出されます。最後勝負を決める時はそういう精神で挑んでるのですね。
音楽の世界も勿論競争や勝ち負けが存在しますが、スポーツのように一目瞭然で点数が出ることはありません。「優勝者より、昨日の予選で聴いたあの人の演奏の方が好きだな」なんてことはザラです。そこから仕事に繋がることもあります。 意見をくださる周りに対して素直であることと同じくらい、自分はこれが好きだ、こんな風になりたい!という意思を強く持つことが大切だとも、この3月に受けたレッスンで改めて学びました。WBCという最高峰の戦いの前こそ憧れは邪魔になり得ますが、おそらくどんな世界でも、憧れは自分の「好き」を大きく支えてくれている筈です。
私にも憧れの奏者がいます。
人柄は明るく気さくで、朗らかで、団員さんにも私のような若手にも分け隔てなく接してくれ、
奏者としては大切なことをバンバン教えてくれる、大変ありがたい女性です。数個前の記事「背中」にも記した、いい姿勢で吹きなさいと注意してくださった方です。
そんな私の憧れが、この3月に亡くなられました。
初めましてのリハーサル時、その団体にお邪魔するのは初めてで、プルプル震えながらチマっと挨拶だけしている私を連れて団員さんに紹介してまわってくださいました。
リハーサルの休憩時間では気さくに雑談してくださいました。リード工具入れは手作りなの?とか、客席から見たら翠ちゃんの今日の赤いシャツが鮮やかで素敵だわ!とか。あの方が団におられる理由がすぐわかるというか、個人的には居てくださると本当に助かるし有難いし、とにかくめちゃくちゃいい人でした。
プロオケで初めてのプッチーニのオペラ、失敗ばかりの私に忙しいリハーサル時に根気よく2ndのノウハウをほんの一部とは思いますが、叩き込んでくださいました。
姿勢良く上手そうに吹くこと、腕の力を抜け、2nd譜面の上に1stの音を書きなさい(そうすれば和音が見えるってことだと解釈してる)、2ndを吹くには、1stの譜面を1stの人と同じ音色、音程感で吹けること。
どうしようもない若造をなんとかしようとしてくださって、恩しかありません。
数回しかお会いできませんでしたが、会う度に「こんな人になりたい!」という憧れが強まりました。あの人のような音になりたい、あの人のように演奏したい、は、勿論ありますが、それ以上に立ち振る舞いや、演奏に向かう姿勢を、本当に勉強させていただきました。
夜に予定があった為、お通夜の開式前にお焼香だけ上げに伺いました。ほんの少しの時間でも、ご挨拶できてよかったです。
お葬式の経験が小学生で止まっており、大人になってから初めての機会でした。不謹慎かも知れませんが、こんなところまで初めてを教えてくださるのかと思いました。めちゃくちゃ予習して伺いました。貴方様は今後の私に大切なことの一番初めにいてくださるんですね。
輝く憧れを力にかえて、これからも腕を磨いていきます。
旅立たれた故人のご冥福をお祈りします。