とけてゆく鼠

神楽坂を少し過ぎて橋をわたるおれは
雨の予感かんじながらひとりきりで歩く
切れるくらい頬をかすめ舞い上がる風は
天の果て知らないでいるおれたちと生きてる

家路急ぐ人の群れは暗く路地を満たし
踊る影を踏んで歩くたびまた老いていく
干物めいた跡となった死んだ鼠も
とけてゆく今日がそっと消え去るときに

君が死んだ知らせからはずっと遠い
一目みた鼠さえもおれは忘れない
すべて果てて乾いているこの世界には
話してなにか意味になる何物もない

君のいない世界からも意味を探せる
とめどなく書いて消してもおれの詩は尽きず
明日もまたなにも得ずにゆらゆらと生きる
見えているこの世界さえ君には足らない

友へ 

 

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