にしん/電泥
さまざまな小説です。今後集中的に書いていきます。
日本紳士録のポエム
夜市 映画を見ていた。くたびれた男が黄色っぽい背景の中でぎくしゃくと歩く。動く。「タクシードライバー」。字幕はついていない。フィリピンの田舎町の片隅に、隠れるようにしてある映画館。英語なんてほとんどわからなかった19歳の僕は(信じがたいことに!)ロバート・デ・ニーロも知らなかったのだった。 「どうだった?」 隣に座っていた男が言った。フィリピンなまりのきつい英語だった。 「トレーニングするところが良かった」 僕は言った。 「ジョーカーよりはマシだよな
日曜日はウーバーイーツで台湾スイーツを注文する。割とすぐに届く。豆花というやつ。あんまり甘すぎず、味付けされたかき氷がおいしい。リピ確定。 日曜の夜から月曜の朝にかけて1Q84を読む。文庫にして4冊読んだのでかなり疲れた。村上春樹のヒロインはすごく現代的なかわいさがあり、それが人気の要因なのではないかと真剣に考察する。ヒロインだけラノベに移植しても違和感なさそうだ。 死んだ友達の遺稿を本にする作業は停滞中。一応時代順に並べたのであとは書籍としての形式を決めるだけだが、それ
コロナに罹ってすでに四日が経過した。木曜あたりからちょっと寒気するなーくらいに思いつつ、まあ気のせいだろとアロハシャツで大学に向かう。その日は重たい曇り空で、むわっと湿っぽい空気が不快だったことを覚えている。 若くて健康だったからか、もしくはワクチンを3回接種したからかわからないけど、コロナ特有の症状らしきものはほとんど見られず、ただなんとなく濃い味の食べ物を受けつけなくなるくらいだった。あとはもうほとんど普通の風邪。何が作用してこうも軽症で済んだのかはわからないけど、ちゃ
神楽坂を少し過ぎて橋をわたるおれは 雨の予感かんじながらひとりきりで歩く 切れるくらい頬をかすめ舞い上がる風は 天の果て知らないでいるおれたちと生きてる 家路急ぐ人の群れは暗く路地を満たし 踊る影を踏んで歩くたびまた老いていく 干物めいた跡となった死んだ鼠も とけてゆく今日がそっと消え去るときに 君が死んだ知らせからはずっと遠い 一目みた鼠さえもおれは忘れない すべて果てて乾いているこの世界には 話してなにか意味になる何物もない 君のいない世界からも意味を探せる とめど
member にしん(@nipponshinshi) 都市に潜む鍋(@tosinisumaunabe) date 21/11/2021 weather cloudy place 新宿御苑 もう二か月近く前のことになりますが、僕(にしん)と鍋くんの二人で新宿御苑にて吟行をおこないました。動きやすい秋日和ではありつつも、ときおり冷たい風が吹き、じょじょに東京が冬めきはじめていることを感じながら。 にしん 曇天やたるる紅葉をよけて行く からす見て鳥になりたくなる世界 濁
妖精さんが死にました 古い納屋には黄色い呪文 魔法にかけられ動く人 叢雲を青に変え どくどく流れる紫紺の血 王の寿命をのばすため わたしたちの村にすむ 大きな頭に小さな胴 百年を知る長老も かれらをあえて語らない わたしたちの村にすむ かれらはなにも語らない かれらはなにもしないけど 子供たちだけ知っている 知っているけど忘れてく 息をすれば見つかるぞ 黒い梢に気をつけろ
この日わたしが見たものは すべて星月夜にとける この街にいる生き物の 固有の音を透過する わたしがわたしのいる街で その場かぎりの灯をともし それが運命などという まだ見ぬものはすべて見て あしたもとうに生きつくし 眠るばかりの人の住む この街中に詩は遊ぶ いつになったら空をとぶ 魚の群れは消えるのか 気づかないまましおれゆく わたしが見えるものすべて
わたしがいる時間には日がすこし陰り空気に灰がまじるわたしはいつも空になって泥のついたペットボトルを見るとかなしくなって見るのもいやになってしまうわたしは名前で呼ばれないことが多いなぜかは知らないけれどいつかわたしには声がきこえたことがあってそれのことを思い出すといつもわたしは苦しくなるし布に顔を押し当てて泣いているわたしには名前があってそれはお母さんがつけてくれました
過去を語るときの空を見る 子どもになる前のいきもの 生まれたての熱が溶けていく アスファルトになにを忘れたか ひびを抱いて眠る枯れ木 言葉がとおくなってなにも 聞こえなくなってから話す 意図しないでゆれるまぶたの 皮膚をさいて知る道は静か あれこれを知らせる音楽の 暮れてより来る薄く見える終わり いつも足らずすぎていく 捨てられたまま 生きるものみな 踊ることに夢中で
わたしがいつか泣いたのは きょうへとつづくことはなく ひとりきりには遠い場所 しきりに鳴いた虫たちの 子どもはぜんぶ土のなか 川のはやさを思いだす 生き物たちの死はゆれる 死にいる人は悲しけれ 生あるうちに枯れていく まだ割れ硝子の中に立つ 小さな街の模型には わたしの影があるだろう
てらてら光る都市の明かりに 所在なさげに空を泳ぐ 意識がある ものだけ生きていること に錆びの影から気づくなど おれが故郷を思っても いない彼らにあげるものなど 金がないからできないという 学ばない人ばかりいる この街からは どの場所に続く 切れ端ばかりの社会で 生きる生きない を繰りかえす 言葉はなにも生まないし 少なくとも夜を越えない 続けることだってできるし できないことの方が多いから 悩んでないのに苦しい たまに花に変わるやつがいる
舞うビニールのこぼれる歌は 青青とした耳のいろ ととろと流る樋の中 わたくしほどの小ささの わたくしたちが水色の かいなをあわせひらり揺る そこは楽楽水の国 今日はいずこの国に舞う くろがね街の真ん中に あくるひかえる裸足の子
こんにちは。日本紳士録です。きょうはタイトル通りのことをしようと思います。 まず結果。早稲田大学は合格しました。やりました。あと明治大学と法政大学も合格しました。やった。慶応は落ちましたけど。まあ慶応しか落ちていないと前向きに捉えるしかない。人間の目はなぜ前についているか。そういうこと。 振り返ってみれば、結局受験勉強を本格的に始めたのは夏からでした。ざっくり入試本番の半年前。まあ英文解体新書が楽しすぎた。そういう言い方もできます。人間の目はなぜ前向きについているか。そう
あつい雲のうえで揺蕩う光の線が、雲間を通り地にそそぐ。ゆらぐこと。自律的に駆動している。 ぼくは旅にでる。だれか別のからだで考える必要がある。からだは刻々とかわる。動くものはしずかになる。巡礼。時空をこえて、からだを失ったひとを思う。アルジェリアの民兵。コンゴの呪術師。血が乾き、灰色になる。 旅する。すこしずつ死んでいくということ。すこしずつ、灰に近づく。気づかないまま、土地から土地へ変質する精神。小道をとおり、淡い感受性を光にかざす。貝殻の海。太陽の色。 七年いきると
石をなげて空に消えていく 青色の絵の具が少なくなってきている 空を飛ぶ魚の図鑑 死んだあとの猫の体 冷たい皮膚と爪 海竜の化石 生き物の呼吸 徐々に浅くなる 空を飛ぶ魚のかたち
いま図書館から帰ってきて暇なので、どうすれば鬱を効果的にやり過ごすことができるかをまとめておくと便利かもしれないとかねがね思っていたことを実行に移そうかな、と思いました。タイトルにある三つというのはきりが良いからそうしただけで三つもあるか分からないということはあらかじめ断っておきます。 1.安定剤を飲む鬱の人の思考は鬱になった人しか分からないとよく言われます。僕個人でも鬱の時は自分でもびっくりするくらい思考力が衰えているので、そこそこ元気な状態にいるときの僕から鬱の時の僕の