好きな人や物のそばでハタラク。―ハタラクヒトビト6人目 ―
全国に店舗を構える日本百貨店。系列店でありながら、ひとつとして同じお店はありません。それは、お店を作り出すスタッフの「好き」が全面に出ているから。
連載「ハタラクヒトビト」は、日本百貨店を形作る“ヒトビト”が、自身の「好きだからできる、やってみよう精神!」を語る読みものです。日本百貨店でハタラク原動力や、「好き」な気持ちが活きるハラタク環境、お客様や作り手さんとの関わり方について伺います。
今回、6人目にお話を伺ったのは、植村妙子さん。主にバックオフィスのシステム管理や、イレギュラー発生時のオペレーション対応などを担当している、マーケティング部コーディネーターです。
本部での仕事がメインではあるものの、ヘルプで店頭に立つと他のスタッフよりも商品を売るという、やり手かつ、周りの仲間いわく”貪欲”(笑)な植村さん。彼女のハタラク原動力を伺いました。
冷めた感覚から、熱量のある場所へ
もともと地域活性に関わる仕事をしていて、物産展のイベントの企画や運営をしたり、商品開発をしたり、地域の特産品や名産品を集めたギフトボックスを作って販売したりもしていました。
いろいろな地域の方とつながることもたくさんあったし、特定の地域の方と密にタッグを組んで取り組む仕事もありました。地域それぞれの特性を見るのもおもしろかったですね。
ただ、事業が進んでいくうちに、オンラインショップに力を入れるようになったんですね。そうすると、お客様とのやりとりが「データ」になっちゃうんです、全部。
多くの人に届くのはオンラインのいいところなんですけど、お客様からの注文もデータ、問い合わせの声もデータ、って物のやりとりをしている感覚が薄くなってしまったんです。そうしたら、なんだかすごく冷めてしまった感覚がありました。
鈴木とは顔見知りだったので、日本百貨店は知っていました。会社全体が持ってる熱量は、魅力だと思いましたね。
「ちゃんと使う」サイクルを回したい
個人的には漆や螺鈿などの伝統工芸品が好きで、身近なところだと手ぬぐいが好きなんです。たぶん、200枚は持っているかな。伝統工芸品に魅力を感じた、最初の入口が手ぬぐいでした。
手ぬぐいってただの染めた布なんだけど、季節ごとに絵柄を変えたり、ちょっとウィットに飛んだ柄があったりしておもしろいんです。例えば、鯨の目が大きく書いてあるだけの手ぬぐいがあるんですけど、必ず横向き。なぜかと言うと「目くじらを立てない」って意味なんだそうです。すごくおもしろいじゃないですか。ちょっとニヤッとしちゃうようなところが好きなんですよね。
あとは、いろいろな活用の仕方があるのも手ぬぐいの好きなところです。ハンカチ代わりに使うことが多いですが、ケバ立たないし、水をよく吸うし、乾くのも速い。髪をまとめるのに頭に巻いても、日差しよけに首に巻いてもいい。手ぬぐいってすごいんです。
伝統工芸品は「使ってこそ」のものだと思っていて。私が使っている漆のお椀や、文庫革の名刺入れも、もう20年ぐらい使っています。
ちゃんと使い込んで、消耗したら新しいものを買って、またそれもちゃんと使う。そのサイクルを使い手としても回したいし、売り手としてもお客様がそのサイクルを回すお手伝いをしていきたいですね。
日本百貨店で取り扱っているのは現代的な商品も多いですが、伝統的なものもあります。なくなってしまいそうな「美しい文化」を、形を変えながらでもきちんと残していくこと。それは前職のときから変わらない目標です。
現場に行く。それが大事
仕事内容は基本的にシステムです。レジのデータを作るのが一番メインの仕事ですね。前職でやっていたわけではないんですけど、まあ新しいものが好きでいろいろ触っているうちに詳しくなったので担当に、という感じです。
それに加えて、ことあるごとにお店に立つことが多いですね。新店舗のオープンのときに応援に行ったり、店舗スタッフが足りてなければヘルプで入ります。呼ばれれば、どこでも行きますよ。現場に行くことが大事だと思っているので。
店頭に立つことで、システムの仕事につながることもありますね。実際に現場で「あ、スタッフはこうなっているとデータを使いやすいんだ」とか、わかることも多いです。使う人に合わせた作り方ができるようになる。そういう面でも、やっぱり現場に行くのは大事ですね。
あとは、好きなんですよね、接客が。お客様とおしゃべりしているうちに、結果的にお買い上げいただくことが多いです。例えば、今着ている『リップル洋品店』の洋服も、御徒町店のイベントや日本橋店に置いてあるものですが、着ながら接客していると売れたりするんです。今日着けているイヤリングも『ツヅレ』というブランドのもので、常設ではないですが、日本百貨店で出会ったものです。素敵な商品と、お客様が出会うひとつのきっかけになれたら嬉しいですね。
後ろで支える人が、一人ぐらいいてもいい
お店に行くと、スタッフのみんなに会えるのも楽しいです。仕事の悩みを聞いたり、売上分析のやり方を聞かれたり、恋の悩み相談を受けたり。ありとあらゆる相談窓口みたいになってますね(笑)
なんでも聞きますよって人が、一人ぐらいいたらいいだろうと思うんですよね。日本百貨店は、スタッフみんながいきいきと自分の価値観を表現しようとしている分、ときにぶつかることもある。熱意だけだと方向性を見失ってしまうときもあると思うので、私は後ろから「こうしたらいいんじゃない?」って支えていけたらいいのかなって。それが自分の役割かなと思っています。
逆に、スタッフのみんなから得ているものもたくさんあります。どうしても歳を取ってくると、自分の好きなものや価値感って固まってくるんですけど、いろいろな価値感を持っているスタッフがたくさんいるので刺激をもらっています。
彼らが仕入れる商品一つとっても、自分が知らなかった世界を教えてくれるんですよね。自分だったら仕入れないだろうなって思ったものでも、紹介されて食べたり使ったりしてみたら、すごくいいじゃん!とか。
私の最近のイチオシは、日本百貨店しょくひんかんで買った『珠せいろ』っていう牡蠣ですね。しょくひんかんの店長、簑島さんが気に入って仕入れたものです。
お店に行ったら、スタッフに『最近のあなたのおすすめは何?』って聞いてみてほしいですね。みんなお客様とおしゃべりしたくて待っているし、遠慮しているときもあるので、ぜひ固まった価値感をほぐしてくれるような熱量を体験してもらいたいです。