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職人技のコラボで咲いた「Cohana(こはな)」 ーニッポンのヒャッカ第6回ー

 67年前、洋裁道具メーカーとして創業して以来、現在も東京・日本橋に本社を置く老舗の手芸道具メーカー。ヘビーユーザーのファンも多い株式会社KAWAGUCHIが3年ほど前に立ちあげたハンドメイドの道具ブランドが「Cohana(こはな)」だ。
 「Cohana」とは、富士山信仰にもゆかりがあり、日本神話に登場する女神「コノハナサクヤヒメ」に由来するという。日本の伝統美を象徴するブランドだけあって、「Cohana」は、日本全国各地の伝統工芸のエッセンスを随所にちりばめた珠玉のラインナップを誇る。
 待針や針山などの手芸道具らしい品から、なかにはコレクションしたくなるような、インテリア雑貨ともいえるようなオリジナルアイテムが揃う。

庄三郎 伊賀くみひもの糸切ばさみ

 「Cohana」の最大の特徴は、日本の伝統工芸の職人技を1つの商品にミックスさせた点だ。例えば『庄三郎 伊賀くみひも糸切ばさみ』。「庄三郎のはさみ」といえば、知る人ぞ知る、日本のはさみの製作研究の先駆者として世界的にも知られた三浦庄三郎の製造技術を引き継ぐ直系の職人が手がける逸品。一丁ずつ丁寧につくり上げられた、切れ味は群を抜く東京の伝統工芸品だ。「Cohana」の「庄三郎のはさみ」は、その持ち手部分に鮮やかに染められた絹糸が巻かれていて、なんともスタイリッシュであか抜けているのだ。

庄三郎のはさみに3本どりで糸切ばさみにくみひもを巻きつけていく

「これは、武具などのくみひもとして、奈良時代以前からの歴史を誇る伊賀のくみひもです。庄三郎のはさみに1つ1つ伊賀の組紐職人さんが『Cohana』オリジナルカラーに染めた絹糸を巻きつけて仕上げてくださいます」と教えてくれたのは「Cohana」プロジェクトチームの河口万里さんだ。
「『Cohana』の商品は、国内各地の地域産業の技を結集し、オリジナルな道具として完成させています。どれも3世代くらいは使っていただくことを考えてつくっています」。
 東京の老舗の品が三重の伝統工芸の技術でさらに美しく、手にも優しく。1つの素材に3地域の技術をコラボレーションすることも珍しくないと河口さんは言う。

店舗にて河口万里さん。庄三郎伊賀くみひもの糸切ばさみを手に

店舗にて河口万里さん。庄三郎伊賀くみひもの糸切ばさみを手に。

社員の英知が育んだブランド

 「Cohana」の始まりは、「どうやったら自分たちにしかできない、老舗らしい手芸用品が生み出せるのか、というアイディアを全員に募ったのです。その中に伝統工芸にこだわった手づくりの品を、という声が複数あったことがきっかけでした」と河口さん。ブランドカラーは、黄系の「黄水仙(きすいせん)」、赤系の「薔薇色(ばらいろ)」、グリーン系は「水浅葱(みずあさぎ)」、水色系の「露草色(つゆくさいろ)」、グレー系の「深川鼠(ふかがわねずみ)」の5色。いずれも日本の伝統色で四季の移ろいを感じられる色彩が選ばれている。
 しかし、商品によっては必ずしもこの5色全てを展開しているわけではないという。「小樽切子はグレーの深川鼠色で試作しましたが、モヤモヤした色になったため、やめました。同じく伊賀くみひもも、グレーは断念しました。やはり持っていてワクワクするようなアイテムかどうかを大切に判断しています。そのためには妥協は一切しません。今は春・秋に新商品を発表していますが、当初は5アイテムをご用意しようと進めていても、納得が行く品ができなければ、涙をのんで3アイテムしか発表しない、というケースもあります」。そして「利益よりも価格を重視しています。悩みますが(笑)、買っていただける価格であることを優先しています」と聞けば、会社の信念は想像以上に固いことがわかる。


ワクワク感をさらにプラス!

小樽切子のピンクッション。4色

小樽切子のピンクッション。

 伝統工芸の品に、オリジナルのデザインや機能性を持たせ、さらに別の伝統技術のトッピングをプラスしている「Cohana」。あえて手芸道具にとどまらず、アイディア次第で暮らしのワクワクしたエッセンスにもなる品がたくさんあると気づかされる。小樽切子のピンクッションは、クッションを取れば小さな一輪挿しになるし、曲げわっぱの道具箱は化粧小物を入れてもよさそうだ。
 先にも触れた南部鉄器の文ちんは、キュートなボタンをモチーフにしたデザインだから、デスクのちょっとしたメモのペーパーウエイトにしたくなる。河口さんは「南部鉄器の文ちんは手芸用の文ちんとしてだけでなく、印づけ用のペンが立てられたら便利だと考え、ボタンのデザインの穴の部分をペン立てにしました。老舗の手芸用品店らしさを忘れずに、何かプラスアルファを常に模索しています」。なるほど、だからデスクでも使えそうだとイメージが浮かぶわけだ。
 各地の伝統職人技がコラボレーションした上に、可愛くて妥協のない「Cohana」の品々。センスのよい「メイド・イン・ジャパン」アイテムに目の肥えた、海外のユーザーも圧倒的に多いというのもうなずける。

Cohana:公式サイト

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