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釣りが理由でサケの子孫が小さくなる?

科学論文を釣り情報へ還元する第23回目の投稿です。

今回のテーマ:釣りが理由でサケの子孫が小さくなる?

今回ご紹介するのはこちらの論文です。
Saura, M., Moran, P., Brotherstone, S., Caballero, A., Alvarez, J., & Villanueva, B. (2010). Predictions of response to selection caused by angling in a wild population of Atlantic salmon (Salmo salar). Freshwater Biology, 55(4), 923-930.

今回はDNA解析を通して、未来のサケの体長や体重を予測した研究をご紹介します。

この論文を一言でまとめると、
スペインのある地方で生息するアトランティックサーモンは、釣りの影響によって1世代あたり体長で2 mm、体重で100 g程度小さくなっていく可能性があるということでした。

サケの仲間では近年最も私たちの食卓に上る機会が多くなったサカナがこのアトランティックサーモン(タイセイヨウサケ)ではないでしょうか?
ノルウェーサーモンやチリ産のサケの多くがこのサカナを指すというのは、よく知られるようになりました。

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今回はスペインの野生のアトランティックサーモン(以下、アトラン)のお話です。


一般にアトランは1~4年を海で過ごした後遡上します。

スペイン北西部のビダソア川のアトランは、以前は2年以上海で過ごすことも多かったそうですが、現在はほとんどが1~2年を海で過ごした後、川へ遡上するそうです。

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スペインのアトランはは3月から12月にかけて産卵のために川に遡上しますが、実際に繁殖(産卵)する時期は12月頃になります。
(実はアトランは母川回帰性は高く、通常の迷走率は5%程度だそうです)

その中でも、3~7月に戻る「早期遡上群」と夏の終わりから遡上する「後期遡上群」に2つのグループに分かれており、早期遡上群は1年以上海洋生活を送っている個体であり、後期遡上群は1年前後の海洋生活で戻る個体で構成されます。


早期遡上群は、すでに1年以上海で生活していますから、後期遡上群より大型です。


一方で、遡上するアトランの釣りは、スペインでは70年以上もの歴史がある伝統のレクリエーションだそうです。

しかしながら、このアトラン釣りのシーズンは春~夏までの数ヵ月で集中しており、主に釣られるのは高齢で大型の早期遡上群になってしまうわけです。


今回の試験ではDNA解析を通して、親子鑑定(のような分析)をすることで、親世代と子世代の身体情報を予測したというものです。

その結果、子世代は親世代よりもはっきりと小さくなっており、1年あたりの予想される体長と体重の減少はそれぞれ約 0.63 mm と 34.4 g となり、
1世代の期間を3年(河川生活1年+海洋生活1~2年)と仮定すると、体長が約2 mm、体重が約100 g減少すると予測されたそうです。

この予測の結果には、当然、周辺環境の影響もあるでしょうし、すべて釣りだけの責任というわけではないかと思います。

しかし、その一方で大型で長く海洋生活を送る早期遡上群を、一定期間に集中して釣っているという事実が過去70年間にわたってあり、
過去には2年以上海洋生活を送るアトランがいた事実も考えると、その影響は決して無視できるものでもないかもしれませんね。

例えば、「ドナルドソン」という大型の品種改良されたニジマスがいることは釣り好きの方はご存知の方も多いですよね?
大型に成長するサカナ同士を常に交配させて次世代を作り出す、いわゆる選抜育種という方法です。

ワシントン大学のドナルドソン博士を中心としたグループが、約30年かけて作り上げた1 mを超して大型化するニジマスです。

ドナルドソンは人為的に”意図して”作り上げていますが、今回のアトランも知らず知らずのうちに負の選抜育種をしてしまった可能性があるわけです。

筆者は現在の釣りのルールを見直すきっかけになれば・・・と考えていますが、もしかするとこういったことは世界各地色々なところで起こってしまっていることかもしれませんね。

それではまた次回お会いしましょう。

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