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親と子が一緒に育つ幼稚園で、時代を感じながら自分と向き合った話

娘が札幌トモエ幼稚園(以下、トモエ)を卒園して、この4月から小学生になった。息子から数えて7年、娘と通って3年のトモエ生活が、ひとまず区切りになった。自分の環境も変化していきそうな予感がしているが、ここでの経験の記録として、トモエについてまとめておこうと思う。結局のところ何が言いたいのかは自分でもまとまってないが、とにかく徒然に書いてみた。

ざっくり要約すると…トモエという世界的にも稀有な幼稚園での学びは大きかった。「親も通う」トモエでの日々は、苦労もあったけど、娘に向き合えたという充実感もある。札幌で子どもが生まれた人は、ぜひトモエに!…というお話。

オープンスペースの園舎。上の園長室では園長が淹れたコーヒーが100円で飲める

札幌トモエ幼稚園

我が家は長男が1歳の時に札幌に移住してきた。その際、子どもを保育園などに預けるという選択をせず、札幌トモエ幼稚園という、世界的にも稀有な幼稚園に通う選択をした。具体的には以下のような特徴を持った幼稚園だ。

 ・親子で通って、親子で育ちあう
 ・札幌の山の大自然の中にある。まわりに柵も敷居もない
 ・教室に分かれていない、オープンスペースの園舎
 ・縦割りのクラス分けも、担任も時間割もない
 ・好きな時に、好きな人と、好きな場所で、好きなことをして遊ぶ
 ・大人が子どもを管理しない。自分で考え、自分で行動する
 ・卒園児も「虹組」としていつでも来園できる
 ・夏のキャンプ、冬のチューブスライダーなどが敷地内で楽しめる

一般的な幼稚園も含めて見学をしてまわったのだが、トモエのファーストインプレッションは、かなり衝撃的なものだった。

 🏃‍♀️子どもたちが縦横無尽に駆け回るカオスな空間!
 🌋子どもたちが遊んでるすぐ横に崖のような急斜面!はるか下に谷底!!
 🐍園舎の前で3歳くらいの女の子が青大将(ヘビ)振り回してる!!!

とりわけ稀有なのは「親子で通って、親子で育ちあう」というところだろう。実は自分としては、預かってもらえる一般的な幼稚園の方がいいなと思っていた。ただでさえ親元を離れ、新しい環境、新しい職場。博士論文の執筆も控えている。自分は絶対に一緒に通うことはできない。妻も完全に家庭に収まるようなタイプでもない。どうしてもワンオペになってしまう状況で、追加でストレスを抱えるような状況にはしたくなかった。

結果的に、他の幼稚園にピンと来なかったことと、妻が息子との関わりに向き合いたいという希望があったことから、トモエに通うことになった。自分自身、虫が苦手だったり、守られた環境に身を置きすぎていると自覚しているので、トモエのような環境で逞しさを身につけてもらえたらという思いもあり、反対はしなかった。

スタッフ手作りの石窯も自由に使える

娘を通じて自分と向き合う2年間

上の息子が通っていた期間は、自分がフルタイムだったため、妻が毎日通っていた。息子が小学校に上がり、娘が入園するタイミングで、妻と攻守交代をすることになった。しかし自分も当時、いろいろと仕事や活動の話をいただいていたのもあり、毎日一緒に通うのは難しい状況。一度は一般的な幼稚園に通わせることにした。

ところが娘は、怖い、行きたくないと毎日号泣。いたたまれなくなってトモエのスタッフに相談したところ、みんなでフォローするからおいでと言っていただいて、トモエに通うことに。息子の時の4年間の積み重ねの中で、信頼していただいたのだと思う。子どもが園のバスで先に行って、自分は昼ごはん前後からという半日通うスタイルを中心にした通園となった。

自分のような凸凹&繊細さん傾向の人間にとっては、人が多い場所、子どもたちが全力で走り回っているカオスな環境は、何もしていなくても疲労する。たとえ半日でも帰ったらクタクタになる。帰って少し休んだら小学生の息子を迎えに行って、帰ったら晩御飯の用意。隙間時間はもちろんあるが、自分の特性とキャパの小ささでは、最低限の作業しかできなかった。仕事やキャリアに関しては、雌伏の2年間ではあった。

その分、娘に向き合えて、成長を間近でみられて、かけがえのない時間を過ごすことができた。親としての苦労も喜びも、一通りは話ができるくらいの経験はできたのではと思う。子育ては綺麗事ではない。日々葛藤が尽きない。子どもと向き合うことは、自分自身と向き合うことでもある。やっぱDNAってあるんやな!と実感できるくらい、子どもたちの言動は自分や妻とそっくりだ。「お前もまわりからそう思われてるぞ」なんてことは重々承知なのだけど、マイペースな娘にイライラしてしまう。同族嫌悪に近いものもあるかもしれない。トモエの園長は常々「待つことは愛」とおっしゃっているが、言うは易しでなかなか難しい。でもぐっと我慢して、待って、寄り添ってができたときは、驚くほど反応が変わる。

また子どもに対する感じ方、接し方で、自分や妻が何を大事にしているのか、無意識な価値観に気づいたりもする。自分の場合は意外と保守的で、きっちりしなければという意識が根強い。これは持って生まれての性格なのか、長男気質なのか、両親の教育の影響なのか。いずれにしても、つい「これくらいは我慢しなさい」と強く言ってしまう時がある。こうした傾向を自覚しつつ、どうしても出てしまう場合は、違うところでフォローできるように考える。常に正解のない葛藤の中、バランスを探っている。その時の指針になるのが、トモエの園長やスタッフの子どもたちへの関わり方、日頃のあり方、言葉だ。自分の価値観も大事にしつつ、子どもに寄り添うにはどうしたらいいのか、羅針盤のような存在で、大変ありがたい。

冬は思う存分雪遊びができる。スノーボードもチューブスライダーもある

親同士も関わり合う幼稚園

ちなみに「親子で通う」ということは、親同士の関わりも濃くなる。トモエは親コミュニティの場でもあるのだ。おかげで一緒に遊んだり、助け合ったりができる、家族ぐるみの友人もできた。一方で関わりが濃いのはネガティブな面もあって、意見や価値観の相違による衝突というのも、珍しくはない。ただそれらも、表面的な付き合いが多くなっている今の時代においては、貴重な経験・学びとも言える。自分は少し引いた距離感でいたので、諍いごとには(たぶん)あわずに終わることができたが、それも良し悪しだなと思う。

日常に関しては自分はあまり模範的ではない親だったと思う。それでもイベントごとなどでは全力で関わってきたし、特に最後の3ヶ月は予定を極力入れず、トモエでの時間を最優先にした。最後は青組(年長組)保護者メンバーで企画をやりきり、仲間意識を共有できる関係にもなれた。心残りはなく、やりきれたという充実感はある。

トモエは卒園しても「虹組」として、いつでも遊びに行ける。息子も週1、2回、小学校がどうしてもしんどい時はほぼ毎日、娘と一緒に通っていた。子どもにとってのサードプレイスの存在は、本当にありがたい。なので卒園といっても、あまり実感がない。頻度は下がっても、札幌に住んでいる限りは定期的に遊びに行くので。

時代の流れを肌で感じる場

トモエという存在は、今の時代には特に貴重だ。普通に考えたら時代に逆行している。女性の社会進出、夫婦共働きがあたりまえ。昔のように女性は家庭に入る時代ではない。経済的な状況も厳しい。実際入園家族の数は少しずつ減ってきている。

一方でコロナ禍を経て、リモートで可能な仕事の範囲が広がったことで、父親の関わりが大きく増えた。娘の入園式の時に、スタッフの方が「こんなにお父さんの参加が多いのは初めてです」と驚いていた。また仕事環境だけでなく、男性側のトモエに対する理解・共感も広がっている気がする。8年前に周りから聞いた感じでは、母親の強い希望でトモエに通っているが、父親は全く理解してくれていない、という声が多かった。今は日常的に父親も多いし、イベントなどは普段通えない父親も積極的に参加している。仕事の形が多様になったことに加え、男性側の価値観も柔軟になってきているのかもしれない。

このように、トモエという特殊な場は、時代の流れを肌で感じることができる存在でもある。

夏のキャンプでは、花火やキャンプファイアも

トモエのススメ

これから札幌で子育てをする人は、ぜひ一度訪れて、様子を見てみてほしい。札幌の人は、トモエという幼稚園があることは聞いたことはあるが、遠巻きに見ている人も多いと思う。実はトモエに通う家族は道外出身の人が多い。せっかく稀有な環境が身近にあるのに、ちょっともったいないなと思う。何もつながりがなく連絡するのはハードルが高い人は、自分も紹介できるので、気軽に連絡ください。

この4月からは、ついに子どもが二人とも小学生になった。すでに1日がちょっと長く感じる。とはいえ日々の家事や育児はまだまだ続く。変わらない部分も多いが、変わりそうな予感やワクワクを大事にしたい。今回は、この2年間の経験を今後に活かすための記録として、トモエについてまとめてみた。

天気の良い日は、本当に気持ちがいい。四季折々の自然を楽しめる

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