乾杯_

水の割りがね。

昨日、ぼくは「かもめ」という名の特急に乗って長崎に来た。
そして、この記事を長崎駅前のスタバで書いている。

昨夜は、友達になったばかりの友達のご両親が経営しているバーで「ママ」をやらせてもらった。

この日は通りに猫しかおらず(長崎は猫が多い)、二時間ほどお客さんは来なかった。その間、マスターと友達といろんな話をして「今日はスタッフミーティングに出勤だったな」と帰りかけた頃に、どどっと団体のお客さんがやって来た。

それまで安心しきって気が大きくなっていたぼくは、瞬時に縮こまり、そしてテンパった。

人は緊張すると、それまで気にならなかったことが気になる。
ぼくの場合は「水の割り」だった。

注文された水割をつくるのだけれど、水とお酒を何対何でつくったらいいか分からない。ぼくは下戸だからだ。

だから、一杯ごとに「濃!なんじゃこりゃあ」「薄すぎるだろ!」と怒られやしないかとビビっていた。ぼくの「水の割り」によって、このお店からお客さんが離れていっては大変困る。

マスターに「このへんまで」と指で示してもらって、そこまで注ぐことにしても、次の瞬間には接客に行ってしまうので、最後は、目分量でいくしかない。そんなことを気にしていたら、グラスのお客さんの飲み口をむんずと手でつかんでしまう。

そんな内外のドタバタ劇はつゆ知らず、お客さんは自分たちのソフトボールチームのことを熱弁して、楽しそうにお酒を飲んでいた。

ぼくはお酒を飲まないので、こんな機会でもなければバーに来ることなんてなかったと思う。でも入ってみて、ここは中年以降の男性にとっての憩いの場だなあと思った。

女性は歳を重ねても、持ち前の社交性で病院でもどこでも集うことができるが、男は不器用で孤立しやすい。そんな男が集う場所には、やっぱり「ママ」がいるように思えた。ぼくは「サワコママ」という名前だったが、ただの兄ちゃんだったから、なんの役にも立たない。

この店は再開発によってなくなってしまうかもしれない、という話を聞いたが、もったいないように思えた。男には居場所が必要で、そこはきれいにインスタ映えした場所とは限らない。

十年、二十年とかけて染み付いたこの店の、この感じの中に、見過ごされている大事なものがあるように思えた。

ちなみに今回「ママ」体験をさせていただいたお店は、長崎市船大工町の「スナック梓」さん。最寄りは路面電車の駅で、遊郭に行こか戻ろか思案したところから付いた「思案橋」。色っぽいいい地名だ。

50円で「ママ」体験できるし、3,000円で120分(くらい)飲み放題、カラオケ歌い放題らしい(安くね?)。

マスターがダンディーで話のキャッチ力がものすごいし、お店の雰囲気もいいので、長崎にお立ち寄りの際は、ぜひ。ぼくも下戸だけど、また行きます!

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澤 祐典
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