満ちるめし_

満ちるめし。

さっきまでね、『あなたのうた』をお届けしに、あるお宅に行っていたのよ。

でさあ、そこで出してもらったごはんが、めっちゃうまくて。

料理好きな人のつくった食事って、ほんと食材のひとつひとつが人間みたいに個性があって、愛らしくて。

ごぼうとか、カボチャとか、名前わからないけどこの緑のやつとか「ありがとうありがとう。うまいなあ」と思いながら、文字通り、味わった。

ふつうの、特に自分がつくった食事だと、食材って「なんか得体のしれないもの」に変わっちゃって、こうはいかないんだよねぇ。「いただきます」「ごちそうさま」に込める気持ちも弱まるというか。

その点、今日のは「いただいてます」「ごちそうさまです」って心底思いながら食べた食事だった。

以前、ぼくは『あなたのうた』みたいに『あなたのめし』っていうのがあったらいいなあと妄想していたけれど、

こういう食事は、ただ食材を切って盛っただけじゃない「なにか」が入ってる。明らかに。

で、それがあると「もっと食べたい」っていうのがなくなって「満腹」を味わえる気がする。

ぼくの場合、料理がすきじゃないから自分でつくる食事と比較するとわかりやすいのだけれど、自分のつくった料理っていくら食べてもなにかが足りない。で、ついついパンとかを頬張って、でもなんか足りなくて。

ものすごい量を食べていても「満腹」っていうポイントがわからないまま、なんとなく飽きて食事が終わる。

「なにか」が込められている食事だと、そうはならないんだよね。欲が止まるというか。

それで思ったのだけれど、人の欲というのは満たされると止まるもので、それは、物とか食材とかいうよりは、その奥にある「なにか」に向かっているものなんだと思う。

簡単にいえば、愛情、なんだろうけど、それだけじゃない「なにか」に。

そこで交流できたときに「ああ、満たされた」って人は感じるような気がする。

ぼくはその「なにか」を歌には込められるので『あなたのうた』で歌をおとどけして、お返しにごはんをいただいた。(もちろんお金もいただくのだけれど)

そういうゆたかな交換ができると、人って心底満たされるんじゃないかなーと思った。才能を分かち合うとかいうのも、こういうことじゃないかなって。

ああ、そうだ。これもうまかったなー。
お手製のしそジュース。


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澤 祐典
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