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時には仕事の話を。

フェイスブックで紹介されたり、問い合わせが入ったりしたので、久しぶりに自営の仕事(㐧二音楽室)のことを文章にした。

書いたのは、次のようなことだ。

『あなたのうた』は、15分間「未二観」(みにかん)のかたちでお話をうかがい、そこから曲をおつくりする㐧二音楽室の主力事業、そして今後、ライフワークになる気がする仕事です。

最近、『あなたのうた』は記念写真みたいなもんじゃないかとよく考えます。写真が一瞬一瞬容赦なく過ぎていく「いま」を刻むように、『あなたのうた』では、15分の語りの中に現れたかけがえのない「あなた」を記念したい。

「いまのあなた」も「これまでのあなた」も、欲をいえば「これからのあなた」をも。

そして、写真が後から見返してうれしいように、『あなたのうた』も聴き返すたびに新しい意味を見つけられるものであれたなら。

そんなことを思っています。

ここぞという時に写真館で撮るように、あるいは、なんとなくパシャりととるポートレートのように、あなたとあなたを取り巻くものを歌に記念したいと思っています。
作曲にはいろんな取り組み方がありますが、『作曲事始』でやる作曲はことばと音のパズルです。

たとえば、フフフン♪という鼻歌に「あかちゃん」と詞をつけるか、「カナブン」とするか、「とうちゃん」とするか、「天丼」とするかで、そのあとの展開はまったく変わってくる。

そんなパズルをしながら、ひとりの人から現れる、その人にしかできないチョイスとその展開をたのしむ。

毎回一時間ほどの時間を重ねながら、そんなことをしています。

目指すのは、ただひたすら自分自身の満足を追求すること。
自分以外の誰かがいいと思うかはどうでもいい。僕もしばしば「いいねぇ」とか言いますが、それには惑わされず(笑)、自分が「すきだな」と思える方向へ突き進んでもらいたいと思っています。

そうすることで、いまのあなたの気持ちや思いや「好き」を歌のかたちにして残せたらいいなと思うので。

音楽の知識や技術はいりません。必要なところはカバーしますし、僕が言うのもなんですが、ここでつくる曲ってみじかいフレーズでも、ただのうめき声でも、なんなら完成しなくてもいいと思うので。

自分さえ満足させられたら。

そんな遊びをいっしょに面白がってくれる方の参加をお待ちしています。

あ、もちろん、しっかり曲のつくりかたを学びたい、完成させたいという「ガチ勢」の方もどうぞ。僕の知りうることはお話ししますし、できないこと(たくさんあります)はできる人をご紹介しますので。

僕は同じことを何度も書くのが苦手だ。そして上の二つの仕事は大きく内容が変わるようなことがないから、新しく言うことがないときにはずっと何も言わないままになってしまう。知ってもらう意味では何か言った方がいいに決まっているのに、何も言えない。

でも何も言わないからといって何も考えていないわけではない。それどころか、新しく言えるようなことを探すために「この仕事は何のためにあるのだろう」とか「この仕事の魅力は何だろう」といったことはずっと考えている。

そうしてできた新しい文章のキーワードは「記念写真」と「自己満足」。
毎日書く日記のように誰も読まないものでも、自分が満足すればいい、という姿勢が鮮明になったように思う。

歌を通して誰かを感動させたい人は大勢いる。もちろん歌や曲は誰かの心を響かせることができる。けれども、少なくとも僕が手がける仕事は、まず自分が「すきだな」と思えることを大事にしたい。そんなことを思った。自分自身、そんなふうにして曲をつくってきたし、誰かの心になぜ響くのかはその後に探求する永遠の謎のように思えるからだ。

そしてたとえそれが悪い意味で「自己満足」と他人から評価されるようなものであっても、かけがえのないその時の「あなた」を記す上では何の過不足もないと思っている。というか、その評価は自分以外の誰にも下すことはできないという実感がある。

この瞬間を、この自分を収めておきたい。刻んでおきたい。
人がそうしてカメラのシャッターを切るように、ただいま存在している自分のことをいいところもそうでないところも、希望も悩みもひっくるめて記念したい人とともに過ごし、仕事をさせてもらいたいと思っている。

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澤 祐典
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