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「役にたちたい」

こないだ台風が来たと思ったら、また次の台風が近づいている。かなり強い台風らしい。

それで、越してきたばかりの新居でどう備えるかについて考えているのだけれど、その中に「まわりの木が折れたりしたら後始末を手伝おう」という考えが混ざっていることに気づく。

おれ、そんなこと考える人だったっけ?と思う。

若かりしサラリーマン時代、僕は手の空いたときに「なにか手伝いましょうか?」と声をかけるのが苦手だった。そう言って、なにかさせられるのがいやだったのだ。当時の僕にとってそれは自分の時間を奪われることだった。

なのに、ここでは自然と「後始末を手伝おう」となっている。それがいやじゃなくなっている。進んでやろうとしている。

この感覚はとても新しい。
少なくとも前の土地にいたとき(それは今週月曜日のことだ)にはなかったもので、言葉にするならば

「役にたちたい」

そんな衝動が、ここ数日のうちに芽生えている。

新しい土地、それも田舎に来たのだから、まわりの人に好かれた方がいいに決まっている。けれど、いま芽生えている感覚はそういう世渡りのすべとは違う、いつのまにか胸に巣食った感じがしている。

たった三日かそこら、この土地にいただけで、そんなふうになってしまうのか。空気中に含まれたこの土地の DNA を吸ったことで、僕自身の DNA が変わってしまったのか。

この一週間、前の台風のときか、昨日か、今日か。あまりにいろんな人に親切にされるうちに感化されたのか。とにかく、いつのまにか変わってしまった。人は変わるというけれど、こういう変わり方をするのは初めてだ。

僕はいろんな土地に引っ越して住んできたけれど、こんなことはここ、那珂川・南畑でしか起きていない。

なんなんだ、ここは?!

という大いなる謎を残して、新しい仕事の最初の一週間が終わった。はっきり言って、めちゃくちゃ新鮮で、めまぐるしく、そして楽しかった。



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澤 祐典
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