2022年に観た新作アニメ映画18本の中でランキングを付けてみる
皆さんは今年、アニメ映画を何本ご覧になられましたか?
今やアニメ映画は日本のエンタメではトップクラスに売れるコンテンツと化してますよね。例えば今年なら『 ONE PIECE FILM RED』が興行収入187億円に到達。作中に出ていたウタというキャラクターが歌った『新時代』も大ヒットしました。
更には11月に公開された『すずめの戸締まり』が公開1ヶ月で100億円を突破するなど、過去5年間で6作品ものアニメ映画が興行収入100億円を突破してるんですよね。
下の一覧を見ていただくとよくわかるんですが、
日本国内では過去5年間、本数でもお金でも外国映画にアニメ映画が勝っちゃってるんですよね(笑)こんなコンテンツ他にないでしょ。
もちろん日本のアニメ映画の方が面白いとか、実写や3Dアニメがダメで2Dアニメこそ至高だとか、そんな事を言いたいわけではありません。
ただ、僕はアニメ映画が好きで映画館に足繁く通っているのですが、本当に素晴らしい作品が多いですよ。その中にはアニメファンじゃなくても知っている作品もあれば、本当に知られていないような作品もある。面白いのに売れてない作品を観ると、もっと知ってもらいたくなったりもします。
なので今回は僕が今年観たアニメ映画18作品の中で、シンプルに面白かった順にランキングをつけてみようと思います!
一応去年もランキングを付けているので、よければそちらもご覧ください。
10点満点方式で、10位から発表。良かった点とあんまりだった点をそれぞれ書いていこうかなと思います〜。
で一応言っときますが10位以上の作品は基本全部面白いです(笑)少なくとも観て損はないレベルの作品ばかりなので、気になったら作品も観てみてください!
それでは早速行きます。
第10位
かがみの孤城
12月23日公開(12月28日現在公開中)
監督 原恵一
興行収入 1.4億円(12月28日現在)
評価 8.0点
つい5日前に公開されたばかりの作品ですね。原作は辻村深月さんの小説で、6年前に発売されました。
監督は原恵一さんで、まあオトナ帝国を作った方ですね。オトナ帝国は21世紀の中ではトップ3には必ず入るぐらいの名作で、それを作った監督なのでわりと期待して観に行ったんですが。
あらすじは予告をご覧ください。
まず、よく出来たお話だなあというのが一番でしたね。最初のシーンから仕掛けを打ってるし、最後には綺麗に回収できている。クライマックスでの映像演出も素晴らしく、特に飽きる事なく最後まで観れました。
この映画はまだ始まったばかりなので具体的なネタバレは避けますが、キャラクター達の仕掛けには結構早いタイミングで気付きました。それでも最後の種明かしで鼻白む事はなくて、それはやっぱ丁寧に作ってるのが伝わってきたからだと思うんですね。
残念なところといえば、まあ特にはないんですが…地味だった事ぐらいですかね?高揚感という意味では物足りなく感じて、ただひたすら出来のいいお話を観てるだけって感じでした。
ただ観た後に後悔はありませんでしたし、誰が観ても飽きない作品にはなっていると思うので皆様も一度観てほしいですね。
第9位
四畳半タイムマシンブルース
9月30日公開
監督 夏目真悟
興行収入 1.3億円
評価 8.0
原作は森見登美彦さんの小説『四畳半神話大系』。2010年に同タイトルでアニメ化され今回12年振りにアニメ化されたわけですが。
監督さんは『スペースダンディ』や『Sonny Boy』などを手掛けた夏目真悟さんという方で、まだ42歳という若さ。この2作品は観ておりましたが、正直調べるまで名前も知らない方でした。
こちらも『かがみの孤城』と同じく、話が上手くまとまっていた印象です。テンポが軽快でノリが軽く、とても観やすい作品でありました。
『ドラえもん』で出てきそうな古典的なタイムマシンを使って昨日と今日を行き来する姿はコミカルで面白かったですし、風呂敷を大きく広げずに寮アパートの中で話を展開させたのもコンパクトで良かったですね。
嫌なところはなかったですが、ただコミカルで面白い以上の評価にはならなかったので8.0くらいにさせていただきました。今はディズニープラスで見れるのかな?頭使わずに観れるのでオススメですよ。
第8位
映画 バクテン!!
7月2日公開
監督 黒柳トシマサ
興行収入 不明
評価 8.0
2021年にノイタミナで放送された同名アニメの映画化ですね、東日本大震災復興10周年という企画で作られた東北3部作のうちの1つで、TVアニメ版を観ましたがマジ面白かったんですよ。
TVアニメ版は単体で記事も書いてます。
そして期待値を高く持ったまま映画を観たわけですが。
監督はTVアニメ版と同じく黒柳トシマサさん。この方も42歳の若手監督でして、極一部超熱狂的な支持を集めたアニメ『少年ハリウッド』の監督さんでもあります。
映画も面白かったです。人間ドラマを丁寧に描いていて、メッセージ性がちゃんと込められている。それはテレビ版と変わらなくて良かったんですが。
ただ…申し訳ないですがちょっとOVAでもやれる内容だったかなと。映画でやる意味あったのかなと思っちゃって、まあファン向け映画としては100点だったんでそれならそれで良いんですけど、個人的な期待値が高かったからかもう少し映画単体で成立するようなものにしてほしかったですね〜。『四畳半タイムマシンブルース』はそれをやれてましたからね。
しかしTVアニメ版は名作といって差し支えない作品。まだ観ていない方は一度観てもらいたいです。
第7位
地球外少年少女
前編1月28日、後編2月11日公開
監督 磯光雄
興行収入 1900万(2作合計)
評価 8〜8.5
Netflixと同時公開した6話構成の作品で映画かと言われるとちょっと違う気もしますが、劇場公開されたので入れました。
監督の磯光雄さんは2007年にNHKで放送したアニメ『電脳コイル』を作った人ですね。『電脳コイル』は未だにファンの多い作品なので、『地球外少年少女』が15年振りの監督作品だと知り驚きました。
前後編で3話ずつ公開されたこの作品ですが、意外な展開というのはそんなありませんでしたしクライマックスも少し強引さがあった気がします。
しかし宇宙ステーションに閉じ込められたキャラクター達が少しずつ成長していく過程とか、1話1話の繋ぎ方は結構良かったと思いますね。
第6位
グッバイ、ドン・グリーズ!
2月18日公開
監督 いしづかあつこ
興行収入 不明
評価 8.5
10年代を代表するアニメ『宇宙よりも遠い場所』を作ったいしづかあつこ監督による新作アニメですね。
いしづかあつこさんもまだ41歳という若さでして、このタイミングで新作のオリアニを作れるってマジで期待されてるんだなあと。
ただ女の子四人の青春を描いたよりもいとは違い、あまり美少年でもない男の子達の青春モノという事で…まあ興行収入的にはかなり大敗北だったようで。
しかしクライマックスの電話ボックスのシーンはマジで凄くて、あれで観た甲斐があったと思えるくらいには見事でしたね。それにタイトルからすでに意味のある感じにしていたり、やはりいしづかさんは才能のある方だなあと感じるんですよ。
ただ…経験不足なのかもしれませんが、中盤はちょっと眠かったですね。キャラを女の子にしてTVアニメにしたらやはり名作になったとは思うんですが、どの層に向けて作ったのかが不明確だったのでキャラクター達の人間ドラマ的な部分がどうしても感情移入し難かった。
それでも才能の片鱗を感じたこの作品、いしづかさんの次回作に繋がると思います。そしてその時にとんでもなく面白い作品を生んでくれると期待しております!
第5位
RE:cycle of the PENGUINDRUM
前編4月29日、後編7月22日公開
監督 幾原邦彦
興行収入 不明
評価 9.0
2011年に放送されたアニメ『廻るピングドラム』の総集編のような映画です。“のような”というのは多少新しい映像もあったからなんですけども。
なんで総集編が5位に?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、正直僕はこれを観て良かったと感じていまして。
そもそも『廻るピングドラム』とはなんだったのかという話なんですよ。当時観てましたが、正直理解できなかった(笑)あれを若い頃に理解するのはかなり大変だと思うんすよ。
ですが今回映画サイズに編集された『廻るピングドラム』を観た事で、「あ、こういう話なのか!」と理解する事ができました。1年前に幾原邦彦監督の代表作『少女革命ウテナ』を観て衝撃を受けたというのもあるんですが、『廻るピングドラム』というのは、ある意味監督自らウテナのアンチテーゼ的な作品を作ったわけですよね。
ウテナが「物語に呪われたキャラクターを助け出そうとする話」としたら、ピングドラムは「現実に呪われたキャラクターが物語によって救われる話」。完全に逆の事をやってるんですよね。
それが総集編を観たことで初めて理解できて、あぁこれ観て良かったなあと。映画でしか出来ない事をするのが映画だと僕は思うので、そういう意味でこの作品は“映画”でしたね。
第4位
僕を愛したすべての君へ
10月7日公開
監督 松本淳
興行収入 2億円
評価 9.0
正直言いまして、観る前は期待値ゼロでした(笑)
監督の松本淳さんという方も、正直存じ上げなくて。で予告がまた面白くなさそうなんですよ(笑)こういう系の映画の失敗作って山のようにあるので、まあ今回もかなと思って行くかどうか迷ってたんですよ。
観に行って正解でした。
まずこの映画は同時公開された『君を愛したすべての僕へ』と対になっている作品で、パラレルワールドを題材にしています。売り文句が「観る順番で結末が変わる」というものなんですが…個人的な意見ではこれは少し違うというか、ミスリードなんじゃないかと。
主人公の暦が死に際の老人の姿で登場するところからお話が始まり、過去の回想のような形で進行します。暦の両親は子供の頃に離婚し、母親に着いていって母の実家に住むことになる。
同居する事になったおじいちゃんとある日些細な事で喧嘩をしてしまい、「おじいちゃんとはもう口聞かない!」と言ってしまった翌日におじいちゃんが死去。暦は公開し、愛犬を散歩している時に「おじいちゃんと会いたい…」と強く願う。
その時、転んだ拍子に世界が変わり、そこでは死んだはずのおじいちゃんが生きてると。喜ぶ暦ですが、その世界ではなんと愛犬が死んでいたーー。
みたいな感じで、主人公は幾度となくパラレルシフトという平行世界への移動を繰り返し、何かを得たり失ったりしていく。
この作品が面白かったのは、その様子を暦の子供時代から死ぬ間際まで、人生全部を見せる事で表現した点です。アニメでこういう見せ方をする作品ってあまりなくって、実写だと例えば『ベンジャミン・バトン』とか『フォレスト・ガンプ』とか、そこらへんに近い作品だったんです。
ストーリー的には正直面白くはないんですが(笑)この映画の面白さってパラレルワールドというテーマを効率的に見せた事なんですよ。
パラレルワールドというテーマを際立たせる為に敢えてストーリー性を削ったというか、ストーリーを捨てる事で面白くなる事もあるんだなと感心しましたね。
そして先程書いた売り文句のミスリードなんですが…僕は『僕が愛したすべての君へ』を観た後にもう一つの作品『君を愛したひとりの僕へ』を観たんですね。そこで感じたのが
これ、順番が逆だったらどんな感想を持ったんだろう?
という感想だったんです。
つまり作品を2つにした理由は観た順番で感想が変わるというより、逆の順番で観た世界線を想像させる事で観客にパラレルワールドを考えさせる事だったと思うんですよね。でもそんな事を宣伝すると少し難しいから、より簡単な宣伝文句になったんじゃないかと。
いや、非常に実験的で面白かったですね。こういうのもやはり映画でないと無理ですし、映画でやる価値があったと思います。
ベスト3発表の前に、11位以下の作品の評価と簡単な感想を書きます。
辛口で申し訳ありませんが、一応劇場まで観に行ってちゃんとお金は落としましたので、落とした分くらいの文句は言わせてください(笑)
映画館で観るのって本当に良くて、何が良いって観るまでその映画が当たりなのか外れなのか全然わからない(笑)わからないからこそ時々立ち上がれないほど衝撃的な作品に出会える事もあって、やめられませんね。
それではベスト3の発表に参りましょう。
第3位
すずめの戸締まり
11月11日公開(公開中)
監督 新海誠
興行収入 107億円(今日現在)
評価 9〜9.5
今年最も期待値の高かった作品です。
監督はアニメファン以外にも有名になった新海誠さん。ポスト宮崎駿と言える存在であり、オリジナルアニメでありながら『君の名は。』以降3作品連続で100億円以上の興行収入を叩き出している、まさに現代の国民的作家と言えるでしょう。
この作品に関しては皆様観ていらっしゃると思うのであまり語る必要もなさそうですが、一つ思うのは新海誠さんって今が一番バランス取れてるんじゃないかって事ですね。
デビュー作の『ほしのこえ』からブレイク前夜の『言の葉の庭』まで、新海誠さんは作家性の強さでアニメファンから支持を集めていたわけですが、その頃って一般受けするようなストーリーはなかなか作らなかった。
『君の名は。』は様々な層に受ける作品に仕上げた一方で、作家性はあまり感じられなくなってしまった。変態的ではありましたが(笑)
それが『天気の子』でまた作家性を出すようになって、今回の『すずめの戸締まり』は『天気の子』の裏の話みたいに仕上げていてテーマを凄く出してましたし、東日本大震災をテーマに取り扱いながらちゃんといろんな人を楽しませる作品にしていて本当に凄いなと。
正直、観る前までは少し不安だったんですよね。『天気の子』で新海誠さんが長年テーマにしていた世界と女の子どちらを取るかという、いわゆるセカイ系的な問題に女の子を助けて壊れた世界で幸せに生きるというこれ以上ない正解を出したわけじゃないですか(笑)
にも関わらずまた同じような世界観で映画を作ったらマンネリになるんじゃ…と思ってたんですが、さっき書いたように前作の裏のような話。つまり壊れた世界に取り残された少女はどうやって救われるのかという話を東日本大震災と絡めて描いていたので、やっぱりこれは一つの進展だと思うんですよね。
手に入れた地位に驕ることなく常に前進し続ける新海監督、とてもかっこいいと思います!
第2位
劇場版 からかい上手の高木さん
6月10日公開
監督 赤城博昭
興行収入 4.1億円
評価 9〜9.5
これは『すずめの戸締まり』とは真逆で、観る前の期待値が低かった作品です。
監督は高木さんシリーズ3シリーズすべてを手掛けた赤城博昭さん。TVアニメ版はショートショートの連作みたいなもので、僕はこの作品のファンではあるのですが、映画化すると聞いた時「大丈夫かな…」と。
まず1時間以上の尺でどういうふうに面白くするのか想像もつかなかったですし、高木さんの面白さって高木さんと西方の甘酸っぱい恋模様なので、それを映画館で大勢のオタクと観るかと思うと…少し躊躇しましたよね(笑)
しかしこの映画、観て大正解でした。
何が凄かったかは↑の記事に書きまくったので読んでいただきたいのですが、久々に原作付きの作品をアニメ監督が作る面白さというものを実感しましたね。
古くは『ルパン三世 カリオストロの城』とか、『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』とか『きまぐれオレンジ☆ロード あの日にかえりたい』だとか、原作付きの作品をアニメ監督が自己流にアレンジする事ってあるじゃないですか。
ただアニメ監督が原作をちゃんと理解していないと得てして駄作になってしまいがちなんですが、『劇場版 からかい上手の高木さん』は監督が原作をちゃんと理解しながら、その上で映画サイズのストーリーに仕立ててたなと感じましたね〜。更にちゃんと終わらせてましたからね。凄いですよ。
あまりに良すぎて9月に聖地巡礼行っちゃいました(笑)本当にオススメなので是非観てみてください!
そして、今年一番面白かったのはこの作品です!
第1位
THE FIRST SLAM DUNK
12月3日公開(公開中)
監督 井上雄彦
興行収入 50億円(今日現在)
評価 9.5
文句なく今年一番面白いアニメ映画です。
…と言ってもやはりこの作品も観る前の期待値はあまり高くありませんでした。公開直前の声優陣入れ替え発表による炎上であったり、予告から感じるダメな3D感。そもそも3Dでやるのか…といった不安要素がたくさんありまして。
でもこれ、実際に観てみるとよくわかるのですが。
この作品は3Dでないとダメです!
まず監督が原作者の井上雄彦さんなんですが、映画を観た後、彼が本当に作りたかったものってこれだったんだなと。
元々井上さんは試合の中でドラマ性を出すというのがとても上手い作家さんでして、例えば『リアル』の14巻でしたっけ、プロレスの話なんかはマジで凄いんですよ。
『THE FIRST SLAM DUNK』では原作のクライマックスにあたる山王戦で丸々一本作ってるのですが、まず3Dにする事で試合の臨場感を極限まで高めている。
次に驚いたのが主役の変更。この映画の主人公って桜木花道じゃないんですよ(笑)でも多分今の井上先生の視点では、『スラムダンク』の主人公は桜木花道じゃないんでしょうね。
だから声優も変更したし、歌も昔の曲を使わなかった。前のイメージを消したかったんですよ。井上さんは作品で魅せる為に、敢えて前のイメージをすべて無くしたかったんでしょうね。それが凄くわかるような作品になっていて、しかも凄く面白いんですよね。
映画の面白さだけでなく、バスケの面白さもちゃんと伝わってくるんですよ(笑)これはやはり3Dにする事でプレーの1つ1つを俯瞰で描いている点、そしておそらく2Dの絵を3Dと融合させているので、3Dの違和感がないんですよね。これは本当に凄かった。
井上雄彦という漫画家の作家性と、3D映画の可能性、これを2つ同時にガツンと見せられた感覚に陥り、終わった後しばらく立ち上がる事ができませんでした。余韻が半端なかったですよ。
これを読んでいる皆様。年明けてもしばらく上映していると思います。原作ファンも読んだ事のない方も、是非観に行ってください。これは観る価値が絶対にあります。井上雄彦という天才が作った『スラムダンク』という物語を、是非堪能してきてください!
という事で今年のアニメ映画ランキングでした。今年は半分以上「観て良かったな」と思える作品と出会えたので、豊作といえる年でしたね〜。来年も宮崎駿の新作がありますし、新たな出会いがある事を期待しています。
それでは皆様、今年も一年ありがとうございました。今年は全然書かなかったんですが(笑)来年はいっぱい書きたいと思っております。
それでは来年もよろしくお願いいたします!