インサイドキックと股関節の痛み〜「内転筋」とグロインペイン症候群〜
鼠径部周囲の疼痛(Groin Pain:GP:グロインペイン)で質的疾患がない症状を鼠径部痛症候群(Groin Pain Syndrome:GPS:グロインペイン症候群)と記されている。
サッカー、ラグビー、アメリカンフットボール、ホッケー、陸上長距離、野球、バスケットボールなどのスポーツで好発すると報告されている。
特にサッカーではプロ、アマチュア限らず相当の人数がこの股関節の痛みを経験している。
仁賀らの報告(2006)によると、鼠径部痛を発症した成人のスポーツ選手約70%がサッカー競技行っていたもので、ラグビー8%、長距離6%、野球4%などと確認されている。
サッカーで試合中に最も多く使用され、熟練するほど多くなり、勝利に繋がるキックである「インサイドキック」。
重要性と内容に関しては下記記事を参考にしてください。
このインサイドキックのキーとなる「内転筋」と呼ばれる大腿部内側に広く大きくついている筋肉で、内転筋筋群と呼ばれいくつかの筋肉で構成されている。
・大内転筋
・小内転筋
・長内転筋
・短内転筋
・恥骨筋
・薄筋
内転筋群
インサイドキック
股関節の痛み(グロインペイン症候群)
この3つが重要でさらに関係性があるという報告が多数見られる。
股関節内転筋群の筋肉の硬さが股関節の痛み(グロインペイン症候群)に繋がっている可能性が非常に高い!
実際に痛みを抱えるサッカー選手、昔痛かったけど今は時々痛みが出るサッカー選手など股関節症状に悩んでいる選手はこの部分が硬く・太く・筋張っている『筋拘縮』がひどくなっている筋肉の状態です。
【筋拘縮(筋肉が硬く縮こまり血管が圧迫されることで起きる血流障害)】
「筋肉を触って確認すること」がとても重要になるので、ご自身でぜひ触って確認して見てください!
わからない場合は専門家に頼ることも必要です。
触れる際のポイントは下記記事を参考にしてください!
股関節の可動域を確認するという方法もあります。
すでに痛みが出ている方は、痛みで可動域範囲が狭くなっている現状があると思いますのでわかりやすいと思います。
問題は普段は痛みがないのに疲れてきたり、ボールを蹴りすぎた後に症状が出る、長時間試合に出場して走る距離が伸びた時に痛みが出てくる…
そんな方には股関節周囲の可動域に大きな変化が見られない場合もあります。
ですがある股関節の動きの組み合わせの動きに制限がある傾向がある報告があります。
見るべき股関節可動域は…
『蹴り足側股関節伸展位での外転角度』
この運動の十分な可動域の確保は、股関節内転筋群の1つである長内転筋の活動に関与する可能性がある。
Back swingのMax Hip Extension時に長内転筋の筋活動が高値を示し、ball impact時には活動は低下することで滑らかなキック動作を行う。
groin pain 既往歴者は十分な股関節の可動域(股関節伸展位での外転)が確保されず、インサイドキック動作の終盤まで長内転筋の過活動が誘因される可能性が高く、groin pain発生および再発のリスクに繋がる可能性が考えられる。
可動域のみでなくインサイドキック動作に着目してみるポイントもあります。
インサイドキックの熟練者と未熟者のフォーム比較では、踏み込みや足首、股関節などの下肢を中心の項目が多いのに対して、「鼠径部に負担をかけないキックフォー ムの要素」では骨盤から上の上半身の影響も含まれているのが重要な要素だと思われます。
その中で特筆すべき…
『Cross Motion』 と呼ばれる体の動き
インサイドキックは試合中のプレーとしては短い距離のパスで使用されることが多く、キック動作としては脚だけ股関節だけの動きで行ってしまう傾向が高い。
キック頻度が一番多いというのもあるが、目的によってもフォームが縮こまってしまい『Cross Motion』による効率的なキックができなくなり股関節への負荷が高くなる可能性がある。
反対側の上肢が先に動作をリードすることで、効果的に肋骨含めた胸郭の動きが効果的に行われ、横隔膜などの腹部から腰部の重要な筋群(多裂筋、腹横筋、内腹斜筋の一部・骨盤底筋群)が機能的に働く。
それにより、骨盤の機能的な動きを産み出すことで股関節が効率良く動くことができる。
この腹部、腰部、骨盤の機能的な働きはリバースアクション(逆作用)と呼ばれる体の仕組みに関わる。
一般(未熟練者、groin pain 発症者、groin pain 既往歴者)的には身体の重い部分(体幹)を固定して軽い部分(下肢)を動作する方向に力が伝達させるが…
トップアスリート(熟練者)は逆に軽い部分(下肢)が固定されて重い部分(体幹)を動作する方向に力が伝達させるような体の使い方をしている。
上述した長内転筋の筋活動における理想状態である
「Back swingのMax Hip Extension時に長内転筋の筋活動が高値を示し、ball impact時には活動は低下することで滑らかなキック動作」
これもリバースアクションの応用によって発揮される可能性が高い。
さらに上半身(肩関節と肩甲骨を含めた肩甲帯)とシュートの関係では…
どちらも最上級のレベルの體と身体操作を兼ね備えているデ・ブライネ選手の強力なキックにも合点がいく。
キック動作を見る時はボールのインパクトだけでなく、上半身も含めた全体の動きを見て確認してほしい。
まだまだ「進化」できる選手!
【インサイドキックにおける股関節の痛みの重要ポイント】
股関節内転筋群
蹴り足側股関節伸展位での外転角度
上半身の動き(肩関節と肩甲骨含めた肩甲帯)
MTR Lab™️ Madrid
チューニングスペシャリスト
プレミアムセラピスト
仁木洸平
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