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オートファジーで手に入れる究極の健康長寿 ⑤(続)「スイッチ」抜粋 ジェームズ W・クレメント著


沖縄料理の注目すべきは、野菜(特にサツマイモと大豆)の摂取量が多く、たんぱく質の供給源としての肉や乳製品が少ないのだ。

 
DHEAは副腎でつくられ、血中に豊富に存在し、女性ホルモンや男性ホルモンなどをつくる材料(前駆体)である。DHEAは加齢とともに減少するので、身体の老化速度を示す指標になる。沖縄の高齢者は、同年代の米国人より体内で産生されるエストロゲンとテストステロンのレベルも高い。その理由は、健康的な食生活と身体を動かす機会が多いためと考えられている。
 
健康と長寿の秘訣が食事にあるのなら、その中でも特に重要な鍵を握るものは何だろうか。答えは、総摂取カロリーの少なさだ。カロリー制限は、酵母から哺乳類に至るまで、老化を遅らせ、寿命を伸ばす最も強力な方法であることが実験で明らかになっている。

特に哺乳類では、癌を防ぐための最も強力で再現性のある手法であることも分かっている。栄養失調にならない程度にカロリー摂取量を減らすと、ラットの寿命がほぼ2倍になることを実証した研究は、老化を遅らせることの可能性を示し、カロリー制限研究の基礎を確立した。

 
欧米文化の影響を受ける前の沖縄は、カロリー制限のお手本であった。当時の沖縄の人々の1日のカロリー摂取量は約1780キロカロリー。現在、体重維持のために推奨されている量よりも11~15%少なかった。
 
カロリー制限とは、栄養失調や必須栄養素の欠乏を伴わずにカロリーの摂取を減らすことであり、ラパマイシンのような薬剤と同様の長寿効果を生み出す。まだ十分にそのメカニズムは解明されていないが、寿命延長効果は、インシュリンの働きを抑制しオートファジーを活性化させることでもたらされる。という仮説が広く受け入られている。
 
2017年にはアカゲザルの長期間のカロリー制限が健康に大きく貢献したとネイチャー誌に発表された。アカゲザルは人間に類似した老化パターンを持つ霊長類で「アカゲザルのカロリー制限のメカニズムは人間にも当てはまる可能性が高い」ことが示唆された。

人間の中年後期に当たる16歳の時に30%のカロリー制限を始めたアカゲザルが現在40歳を優に超え(人間の130歳に相当)、アカゲザルの最長年齢記録に達している。

 
世の中には、長寿や健康を実現するために、長年にわたって様々な形で、極端なカロリー制限を行っている人々がいる。米国立老化研究所の研究によれば、これらの人々の心血管疾患や糖尿病などの危険因子は著しく低い。

しかし、恩恵には代償を伴うことがある。長年にわたって極端なカロリー制限を行う人には、性欲の減退や寒冷環境下での体温維持能力の低下など多くの影響が観察されているが、それらが長期的には恩恵なのかリスクなのかはわからない、とこの研究では指摘している。

 
戦前の沖縄人と同等のカロリー制限なら、安全に実践できて、かつ十分な効果も期待できるということだ。カロリー制限を極端に行う必要はない。一定程度を超えると効果が薄れる「収穫逓減の法則」を念頭に置いて実践すべきだ。
 
カロリー制限をすると、様々な健康上のリスクが減少する。糖尿病、心疾患、脳卒中などの加齢関連疾患の危険因子が低かった(血圧とLDLコレステロール値が低い)。

一部の炎症因子や甲状腺ホルモン(甲状腺との関連には後述)の減少も認められた。これらの値が低いということは、長寿や加齢関連疾患の発症リスクの低下をもたらすという研究報告もある。また、カロリー制限群の人たちに、生活の質、気分、性機能、睡眠への悪影響は認められなかった。

 
また、カロリー制限により、骨密度、徐脂肪体重、有酸素能力(身体が運動中に酸素を使う能力)にわずかな低下が見られた。しかしそれは、体重減少に伴う影響であり、予想の範囲内だった。

他の研究では、カロリー制限と運動を組み合わせると、骨密度や筋肉量、有酸素能力の低下を防げることが分かっている。つまり、運動はカロリー制限によって生じうるマイナス効果を消すのに役立つ。

また、記憶能力にプラスの効果が見られた研究もあり、こうした結果は、「認知機能障害の予防・治療に新たな可能性を開く」と考察している。

 
摂取カロリーが減った時、身体の中では何が起きているのか。
カロリー制限が成長ホルモン、更にはインシュリンとIGF-1のレベルに及ぼす影響は、「成長」スイッチ(mTOR)をオフに、オートファジーをオンにするために重要だ。

成長ホルモンが減ると、細胞内の不要物を除去するオートファジーが活性化する。カロリー制限と言う形で身体に軽い負荷がかかっても、オートファージ―が活性化し、新旧タンパク質の入れ替え(ターンオーバー)や細胞の修復が促される。

つまり、カロリー制限によって、身体は自分自身を修復することを強いられる。キッチンに新しい調理家電を導入する時は、古い機器を撤去しなければならない。これと同じプロセスが体内でも起きている。これがオートファージ―の本質である。

 
甲状腺ホルモンの活動が低下すると、身体のエネルギー消費量が「成長・増殖」のモードから保護・維持(オートファジー)に移行し、結果として健康と長寿が促されるため、と考えられている。甲状腺ホルモン値が低いと酸化ストレスが減るという利点もある。

重要なのは、カロリー制限によって甲状腺機能が正常範囲内で低下することであり、異常値になる訳ではないことだ。正常範囲内にある限り、甲状腺機能の恩恵を受けながら、寿命を伸ばすことが可能になる。

また、カロリー制限と運動を組み合わせると、片方を実施したときよりも、代謝(主に血糖値の調節とインシュリン感受性)を高めることがわかった。これは体重減少効果が同じであっても当てはまる。

 
コラム
1日の食事から簡単に500キロカロリーを減らす方法
 
1)パンを食べない。サンドイッチの代わりにサラダを食べる
2)甘い清涼飲料水の代わりに水を飲む。
3)コーヒーはブラックで飲む。
4)自炊を増やす。デリバリーや外食、惣菜品などが多いと摂取カロリーが増える。(加工食品もカロリーが多い)
5)ゆっくり食べる食べる速度を遅くすると1食当たりの摂取カロリーを最大300キロカロリー減らすことが可能。
6)朝食前に運動する。朝食前に運動すると、夕方に同じ運動をした場合に比べて日中の代謝量が約280キロカロリー多くなる。更に「夜7時以降は何も食べない」。
7)食事中は携帯電話を見ない。スマホを見ていると、食事したことの記憶が薄くなり、満腹感もなく、午後に軽食を口にしやすくなる。その結果、約200キロカロリーを多く消費するようになる。
 
 
修道士のように長く生きる
 
ギリシャ北東部にある山間の半島、アトス山には約20のギリシャ正教の修道院があり、そこには約2000人の修道士が暮らしている。彼らの1日の大半は、掃除、料理、菜園の手入れなどの雑用に費やされる。彼らは1904年以来、定期的な検診を受けてきた。ほぼ全員が健康体だ。
 
修道士は地中海式の食事を1日2度とる。どちらの食事も10分間で終わる。朝食は堅いパンと紅茶のみ。夕食には魚とパン、豆、自家栽培の果物や野菜をとり、赤ワインを飲む。(修道士はチーズと卵を食べる。畜産と養鶏は禁止されているので、乳製品や卵は周辺の地域から提供される)。

魚は、ネズミを捕るために重宝されている猫たちの餌にもなる(メス猫はアトス山に入ることを許された唯一の「女性」の生き物である。畜産と養鶏が禁止されているのは女人禁制の掟があるためだ)。

 
週に3日は菜食という形の断食をする。ギリシャ正教の断食では、肉、ある種の魚、乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルト)、油、ワインを控える。たまにある祝祭日には、ケーキやアイスクリームなどの甘いものを少しだけ楽しむ。ギリシャ正教の聖典では、1年間に180日から200日の断食が推奨されている。
 
クレタ大学の研究者は「ギリシャ正教の断食には、野菜をある種の魚介類とともに定期的にとるという特徴がある」と述べている。断食をした人は、しなかった人に比べて総コレステロール値が12%低く、LDL値も16%下回った。LDL/HDL比は断食した人の方が良かった。

間欠的断食は、時間制限ダイエットとも呼ばれ、何千年もの長い歴史がある(宗教の多くが断食を慣習に取り入れているのには理由がある)断食はカロリー制限になるため、断食とカロリー制限には共通点がある。

医学の父と称されるヒポクラテスは著作の中で、病気もてんかんも飲食を完全に止めることで治せると主張した。哲学者プルタルコスも「健康のしらべ」と題される論考の中で「薬の代わりに1日絶食しなさい」と書いている。

 
断食により、体脂肪の減少、徐脂肪体重の維持、血糖コントロールの改善などが観察されたが、皮肉にもこれらの反応を引き起こすメカニズムにはオートファジーだけでなくストレスも関わっている。
 
断食中に軽度のストレスを受けた細胞は、このストレスに耐える能力、更に病気に抵抗する能力を高めようとする。他の研究もこれを裏付けている。断食を正しく行うと、血圧の低下、インシュリン感受性の改善、腎機能や脳機能の向上、免疫機構の再建、癌などの病気に対する抵抗力がもたらされる。

ただし断食の力を最大限に引き出すには、代謝を保ちながらオートファジーを活性化させる方法が必要だ。人間の場合、一般的には、12時間から24時間の断食によって血糖値が20%以上低下し、肝臓のグリコーゲンが枯渇するため、エネルギー源として脂肪が使われるようになる。

【朝起きて何も食物を入れないということで、自分の脂肪を燃焼させる用意が出来る。食べてしまったら脂肪はそのまま貯蓄され、摂取した食物がエネルギーになる。これでは痩せない。

有酸素運動の場合も、20分してから「痩せるモード」になるというのも同じ原理。筋肉や肝臓に蓄えられたグリコーゲンや血中のグルコースを使うのが順序であり、次に脂肪を使うようになっている。この順番を間違うと痩せるのは難しくなる】。

 
断食には様々な手法がある。最新の研究によると、最大の効果が得られるスイートスポットは、断食開始から16時間前後と考えられている。

これを実践するのはそれほど難しくない。夕方食事を7時にして、翌朝、朝食を抜くだけでいい。基本は1日の食事の大半を、正午前後から夕方くらいまでに食べ終えるべきという研究結果がある。

 
1日3度の食事と間食は絶対的に健康面で理想ではない。夕食後は何も食べず、週に数回朝食を抜き、何日かは摂取カロリーを減らせば、身体はより健康で強靭になり、病気に罹りにくくなる。少なくとも、毎日の食事を昼間の時間帯に摂った方が良い。
 
食事に関する重要な戦略として、タンパク質も摂り過ぎないように注意しなければならない。タンパク質の摂取制限は軽視されることが多い。

タンパク質のターンオーバー(新旧の入れ替え)の重要性については既に説明したが、タンパク質制限はこれと深く関係している。カロリー制限は減量に有効だが、それが大きな健康効果を生み出すのは、カロリー制限によってタンパク質の摂取量が減るからだ。

タンパク質の摂取を減らせば、カロリー制限をすることなく、健康的に年齢を重ねられることだ。タンパク質を減らすだけなので、食事を「制限」していると感じることもないため、この方法は「タンパク質循環」(プロテイン・サイクリング)と呼ばれている。

 
【「最低16時間を食事と食事の間に空けなさい」は日本の代替医療=東洋医学の教えで、私はそれに従っているが、ここでこの本から科学的な研究により裏付けされたと実感している。ヨガをしている人はアーユルベーダ医学であるので2食を推奨されていると思う。

また、地中海沿岸国では1日の一番豪華な食事は昼である(あった)。明るいうちに食事を終わらせ、ほぼ1食がまともな食事。朝はコーヒー程度。金持ちになると夜も豪華になり糖尿病を抱える人も増える。

我々の生活は宣伝戦の中にある。情報戦略に長けた企業が勝つ。食品会社は19世紀から20世紀にかけては国ごとの小さな食料を製造し、その地域だけで販売していたので世界的な名だたる企業などなく、ほとんどの人は知らなかった。

冷蔵庫が普及し、保存剤や添加物など化学の発達により、賞味期限も伸びた結果大量生産が可能になり、国ごとの垣根も取っ払って、グローバリズムの世界に突入。今ではネッスル(ネスレ)だけでなくダノンも知れ渡り、ナビスコだけでなくジョーンズのベーコンやソーセージも知れ渡っている。食品会社や菓子メーカーは今では世界的な企業に発展した。

高齢になってもタンパク質を摂るべきだ、人間はタンパク質で出来ているとかの宣伝を鵜呑みにして?或いはタンパク質は美味しいのでいい口実にして食べているのが多くの人間。人間の数ほど動物は本来の自然界にはいない。

「工場」で作られた肉を、劣悪な環境で飼育された動物の肉を、タンパク質は良いものだという宣伝文句により買っているのが現状。自分の、家族の近い将来の健康に関しては無知あるいは忘れている。有名な言葉「食物が今あるあなたを作っている」。
 
最後にタンパク質を減らすと痩せますね。料理のレシピを見ると料理完成時の摂取カロリーが記載されている。タンパク質の料理法にもよるが500キロカロリーはありますね。そこへ行くと穀菜食中心だと500以下で優に納まり、場合により満腹。でも満腹にしてはいけないんですね。ハワイの日系の研究家「シンタニ・ダイエット」は有名です。最後にダイエットと言う言葉ではなく、食事法とか食養の方が合っていると思う。ダイエットでは成就したら終わり、のイメージであるが、後者だと成就しても残りの人生はずっと続けるのでリバウンドという言葉はそこにはない】。
 
タンパク質の摂り過ぎで生じるリスク
 
タンパク質は身体の成長と修復に欠かせない。肉や卵、魚、豆類、乳製品などのタンパク質が豊富な食品は、胃でアミノ酸に分解され、小腸で吸収される。次に肝臓でアミノ酸が選別され、残りは尿として排出される。

成人では特に活動的でない人の場合【アメリカ人のケースで話している】1日に体重1キログラムにつき0.75グラムのタンパク質の摂取が推奨されている。男性は55g、女性は45gになる。(肉、魚、豆腐、ナッツなどを手のひらで計って2杯分の量)。

 
ここでは摂取不足の人より、むしろタンパク質過剰摂取の方が厄介になるのである。トップクラスの科学者の研究によると、米国人の大半は人間が必要とするたんぱく質摂取量の約2倍を消費しているという。最近では、「パレオダイエット」や「原始人式(ケイブマン)ダイエット」など、タンパク質中心の食事がある種のブームになっていることも大きい。
 
原始人の食生活を模倣するダイエットでは、主に精製された糖質や砂糖の摂取を制限することで、健康上のメリットが得られる。これらの食事法には負の側面もある。

低糖質の食事(パレオ食)は動物性たんぱく質の食べ過ぎにつながる傾向があり、様々なデメリットを生じさせる。高タンパク質の食事は、次のような意外な悪影響を起こしかねない。

 
*腎臓へのダメージ-腎臓はアミノ酸に含まれる過剰な窒素を取り除く役割があり、特に腎疾患の持病がある人、または腎疾患の影響を受けやすい人にとって重大な問題になる。
 
*体重の増加-短期的には体重は減るが、結局過剰なタンパク質は脂肪として身体に蓄えられ、余分なアミノ酸は尿として排泄される。
 
*心臓病の発症リスクの増大-高タンパク質の食事には心血管疾患の発症リスクを高める飽和脂肪酸とコレステロールが多い。
 
*ガン発症リスクの増大-高タンパク・ダイエットの多くは、赤身肉の摂取を推奨している。赤身肉や加工肉の摂取が多いと、癌(特に乳癌、前立腺癌、大腸癌)の発症リスクが高まることが、多くの研究によって示されている。タンパク質の摂取によって、成長ホルモンIGF-1が増える。これが原因でなる病気は癌や糖尿病で、リスクは高くなる。
 
*代謝障害の発症リスクの増加-糖質の摂り過ぎは耐糖能異常やインシュリン抵抗性を引き起こし、2型糖尿病の発症リスクが高まるという話はよく知られているが、タンパク質についてはどうだろうか。

研究の結果、タンパク質の過剰摂取によっても、これらの疾患のリスクが劇的に高まることが分かっている。赤身肉、ソーセージやハム、ベーコンを食べれば食べるほど心臓病、脳卒中や2型糖尿病の発症は高くなるという研究がある。

 
タンパク質は、糖質と同じくらいインシュリン分泌を促す―このことは、いくら強調してもし過ぎることはない。糖質だけがインシュリン分泌を促す食べ物として注目されがちだが、タンパク質にも同じ作用があることを忘れてはならない。インシュリンには、分解されたタンパク質から得たアミノ酸を筋肉などの組織に運ぶ仕事がある。
 
健康を促すオートファジーは、これらのタンパク質の悪い働きをどのように正常化しているのだろうか。

タンパク質(特に動物性タンパク質)の摂取量を減らした場合、インシュリンの分泌は抑えられ、それによって、グルカゴンの分泌が増えてオートファジーのスイッチが入る。そのため、タンパク質循環やタンパク質の減量を定期的に繰り返すことが断食に似た効果をもたらすと考えられる。

 
タンパク質循環に若さを保つ効果があるのは、身体にタンパク質をつくる能力がないからだ。

タンパク質の供給が減ると、身体はあらゆる手段を使って既存のタンパク質を利用しようとする。狩猟採集時代、常に食物が手に入る状況ではなかったために、人類の身体はそうした状況でも生き延びられるように進化してきた。

 
タンパク質循環は、オートファジーを活性化させるだけでなく、カロリー制限や間欠的断食と同様、糖尿病や、癌、心臓病などの疾患の発症リスクを抑える効果がある。

これらの生活習慣病は文明が生み出したものであり、原因が食べ過ぎであることを忘れてはならない。

 
タンパク質循環は、新陳代謝を促し、健康長寿の最強のツールになりかも知れない。

人に寄って、健康上の努力目標も違えば、その人が抱えている危険因子、ライフスタイルも異なるので当然のことだ。大切なのは、1年を通じて続けられる基礎的な枠組みをつくる事であり、自分に合ったやり方で実践が出来、目標の達成に効果的で、習慣化しやすいことだ。

 
牛乳は控える
研究によって明らかにされている乳製品が身体に与える影響(オートファジーを抑制する作用)は、とても説得力がある。

私は個人の意見として、大人は、牛のミルクから作られた乳製品を日常的に大量摂取すべきではないと警告する。人類の進化の過程で、ミルクから作った食べ物は比較的新しいことを示している。

 
成長期や発育期に牛乳を飲むのと、大人になってから乳製品を沢山とるのとでは意味合いが違う。

牛乳は肥満や糖尿病、アレルギー、胃腸障害やその他の慢性疾患の増加と関連しているかもしれない。症例対象研究でも実験室での研究でも、IGF-1の増加が前立腺癌細胞の増殖を促すことが明らかになっている。

 
乳製品には、低温殺菌という問題もある。この加熱処理によって、牛乳から有害な細菌を取り除けるが、有益な細菌(プロバイオテックス)も死滅し、牛乳に含まれるタンパク質も本来の状態から変化する。

低温殺菌によって、牛乳に含まれる乳糖(ラクトース)は体内で素早く吸収されるベータ乳糖に変換されるので、大量に飲むと血糖値の急上昇(血糖値スパイク)を起こしやすくなる。

 
多くの人は牛乳に含まれるホエイプロテインとカゼインプロテインによって消化不良を引き起こす。

ホエイプロテインを摂取すると、インシュリン値が上昇する。(そのため、インシュリン抵抗性や血糖値上昇、更には炎症が生じることがある)。カゼインプロテインを摂取するとIGF-1が分泌される(その結果、mTORが活性化され、オートファジーが抑制される)。カゼインは免疫反応を誘発することもあり、その場合、体内の炎症レベルも上昇する。

 
もし、私が、「最も問題のある食生活のパターンは何か」と尋ねられたら、「乳製品と動物性タンパク質の過剰摂取」を挙げる。

砂糖や、脂質、塩分は加工肉や乳製品にたくさん入っている。また、乳製品や動物性タンパク質に、オートファジーを抑制させる3種類のアミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン)が多く含まれていることはあまり知られていない。

これらはその分子構造から「分岐鎖アミノ酸」(BCAA)と呼ばれている。動物由来のBCAAの摂取量を減らすと代謝が改善することは立証されている。

 
mTORを活性化し、細胞の分裂と増殖を促すロイシンは、正常な細胞だけでなく乳癌細胞の増殖も促進する。ロイシンの濃度が低下すると、これらの働きは抑制される。つまり、ロイシンの摂取量を極力減らせば、細胞の増殖が抑えられると同時に、癌の進行を食い止める効果がある。食事で癌に対抗することは可能だ。
 
乳癌細胞の大半は(75%)はエストロゲン受容体を持っており、それらの細胞は成長のためにエストロゲンやプロゲステロンを必要とする。

一般的に、筋肉をつけるためにプロテイン飲料やプロテインバーを大量に摂取すると、癌の発症リスクが高まるのは、BCAAが含まれているためだ。もちろん、BCAAは体内で重要な役割を果たし、成長と修復のために欠かせない。

だから、BCAAは植物由来のものを程よく摂るように心がけるべきだ。また、オートファジーを活性化させようとしている時期には、BCAAの摂取は控えた方がいい。

⑤に続く
 
 
 


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