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NHK短歌「・・・浮気している夫を泳がす」

  今朝のNHK短歌 の選者は、俵万智さん(1962年生まれ)、2023年に紫綬褒章を受けている世に認められた歌人だ。
 
 今日のテーマは「日記」、いつものように入選9首を紹介し、最後に一席から三席を選ぶのだが、私的には最後の一句が強く印象に残った。
 
わたくしの 日記は生け簀 とりあえず
浮気している 夫(つま)を泳がす     (菊池康子)
 
 夫が浮気していることは知っているし、私の日記を盗み見していることも知っているけれど、気が付いていないふりをして、様子を見ている。
 一口に浮気といっても幅が広い。密かに憧れている程度から、一緒に食事に行く、更にはその先もあるだろう。又、初めてのことなのか、時々あるのか、引っ切りなしなのか。いずれにしてもこの場合は、泳がせておいても多分自然に収まるだろう、先々を思うと今は黙っておいて、将来の武器として取っておいた方が得だと考えているらしい。
 何とも賢いというか戦略家というか、恐ろしい妻だ。因みに一緒に番組を見ていた監視人殿はこの歌には全く関心を示さない様子だった。本当に関心がないのか、あるいは・・・・よくわからないが、こちらからも何も訊けなかった。
 
 一席から三席は・・・・
 第一席
読み返す たび思い出す 日記には
残さなかった ことの数々        (冨尾大地)
 
 当方は長年日記を書いて来た。特に3年前にnoteを始めてからは、毎日何らかを書いている。偶に読み返すと、日記には書かなかったこと、かけなかったことを思い出すことも多い。
 
 第二席
日記買う 来年もまた 愛(かな)しみを
預けて下ろす 通帳のごと       (大野康子)
 
 第三席
おとついの ページのうらの ボコぼこを
今日の私が やさしくなでる      (川田ゆかる)
 
 以下、入選作です。
日記には 「アホ」の一言 しかなくて
七年前の この怒り何         (藤森円)
 
 七年前の自分に向かってアホと言っているようにもとれる
 
 
プラゴミは 毎日毎日 かさを増す
立体的な 日記のように        (公木正)
 
 
何かから 私を守る ためだろう、
罫線に 針葉樹茂りぬ         (深川泳)
 
ごめん、って 日記に何度 書いたって
伝わらないって 知ってて、ごめん   (遠藤健人)
 
昼にもう 日記を書いた 日があって
読み返すたび 新鮮な昼        (佐藤研哉)

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