見出し画像

レマルク「凱旋門」

 昨年姫路から東京に戻り暇になったので久々に読書に励んでいる。
今までの読書は読みっぱなしで、
強く印象に残った本以外は、殆ど忘れているので、
昨年から読書記録をつけている。
エクセルに書名、著者、(独断の)5段階評価と一行コメントを記録し、
なるべく覚えておこうと、努力している。

 読む本は新たに購入することが多いが、以前に読んだ本の再読もある。
今回、レマルク「凱旋門」を再読(3回目)した。
前から心に強く響いてはいるのだが、細かい描写が長く続く長編で、
過去2回は読み切った気がせず、なんとなく欲求不満だった。

 2次大戦直前のドイツでドイツ人医師(40歳)ラヴィックが
ユダヤ人をかくまった咎でナチスに迫害され、
フランスに逃げて不法滞在している。
旅券もビザも、身分を表す書類は何もなく、不安定極まりなく、
フランス警察に捕まれば、直ちに国外追放になる。
手術の腕が際立っており、フランス人医師の代替手術を行って
日々の糧を得ている。

 先の希望も展望もないなか、若い失意の女と恋愛し、
ひょんなことから国外追放され3月後に戻るが、女は別の男と・・・
色々紆余曲折はあり、最後は悲劇で終わる。
戦争の狭間で人生を諦めている男が女を愛する心模様が
克明に描かれており、深く感じ入る。

 友人のホテルドアマンとの会話では人間の弱さを深くえぐる、
何かにつけてとりあえずカルヴァドス(リンゴ酒)を一杯飲む、
夜のルーブル博物館をさまよいながら色々思う、
細かい描写の連続で読むのに努力を要するが、であるが故に心に響く。

 間違いなく、私の読書人生で出色の一冊だ。
我家の「凱旋門」は山西栄一訳 昭和35年発行、
河出書房の世界文学全集別巻7 定価 290円、
アマゾンで検索しても、この全集しかない。

いいなと思ったら応援しよう!