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NHK俳句、兼題は凩(こがらし)

  先日の日曜日、NHK俳句の兼題は「凩(こがらし)」。この2,3日急に冷え込み、凩が吹きすさんで冬に突入、計ったようにピッタリの兼題だった。
 選者は木暮陶句郎さん、名前から分かるように、著名な俳人であり、陶芸家、まさに2足の草鞋を履く人、本名は木暮宏明とのこと。
 
 
 入選句発表の前に、「凩」が季語の名句が紹介され、木暮さんが解説する。
 
凩や 海に夕日を 吹き落とす        夏目漱石
 凩が海に夕日を吹き落とすほどの力がある
 
木がらしや 目刺しにのこる 海のいろ    芥川龍之介
 食卓に目刺しがのっている、そこに海の色が残っている。この目刺しも凩を浴びて乾いて目刺しになったんだ、海の色が印象深く心にのこる。
 
 二つの句は凩と海の題材が似通っている。芥川龍之介は師匠夏目漱石を尊敬しつつ、自分なりの新しい世界を作ろうとおもった。2人のぶつかり具合がいい・・・・とのこと。
 芥川の句と言えば、「青蛙 おのれもペンキ ぬりたてか」が知られている。芥川独特の自虐的な面が見られるが、私には、目刺しが青蛙と同様に自分と対比ししているように思える。奇しくも青色が共通しているのが面白い。
 
 
 全国から応募された特選句が紹介され、木暮さんが解説している。
 
第一席
恋人が 元彼になって 凩         澪那本気子
 吹きすさぶ凩のせつなさが伝わってくる、彼氏の想い出など全てをリセットする凩、全部部忘れさせてくれる凩・・・・とのこと。確かに、秋風が凩に代わり冬になるのだが、自分は次に進む、との余韻があるような気もする。
 
第二席
凩や ギと鳴る納屋の 蝶番        おおうらともこ
 蝶番に焦点を絞りつつ、「ぎー」ではなく「ギ」という音が秋から冬への切り替えの音、作者は冬が来たとその音を聞いて思う
 
第三席
凩や 地下室にある 鉄亜鈴         川井一郎
 地下室にある鉄亜鈴の「静」外の凩の「動」この対比が見事
 
 ほかに特選六句が紹介された。
 
凩一号 ラジオからは 落語         なかの花梨
 凩の音から落語の音へ聴覚の移動が感じられる。
免許無い 職歴無い 凩痛い         海亀九衛門
 卒業して一度も職に就いていない、せつない思いを凩に託している。
ファーストサーブ 凩を斬るように      樹海ソース
凩や 眉根を寄せて 火を貰う        長谷川水素
凩の夜 君はヘッドフォンの中        鈴木研児
木枯にざらつく 今朝のサドルかな      杜まお実
 
 
 毎回の事だが、自分の心のどこかに触れる俳句に出会うことは多いのだが、その道の人がどう解釈しているのかを聞くと、改めて自分がその句の何にひかれたのか分かることが多い。感覚が先行し、理屈が後追いになっているらしい。

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