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レマルク「凱旋門」
2020年(昨年)9月の日記です。
昨年姫路から東京に戻り暇になったので久々に読書に励んでいる。
今までの読書は読みっぱなしで、
心に強く残った本以外は、殆ど忘れているので、
昨年から読書記録をつけている。
エクセルに書名、著者、(独断の)5段階評価と一行コメントを記録し、
なるべく覚えておこうと、努力している。
読む本は新たに購入するか、以前に読んだ本の再読もある。
今回、レマルク「凱旋門」を再読(3回目)した。
心に強く響いてはいるのだが、細かい描写が長く続く長編で、
過去2回は読み切った気がせず、なんとなく欲求不満だった。
2次大戦直前のドイツでドイツ人医師(40歳)ラヴィックが
ユダヤ人をかくまった咎でナチスに迫害され、
フランスに逃げて不法滞在している。
旅券もビザも、身分を表す書類は何もなく、不安定極まりなく、
フランス警察に捕まれば、直ちに国外追放になる。
手術の腕が際立っており、フランス人医師の代替手術を行って
日々の糧を得ている。
先の希望も展望もないなか、若い失意の女と恋愛し、
ひょんなことから国外追放され3月後に戻るが、女は別の男と・・・
色々紆余曲折はあり、最後は悲劇で終わる。
戦争の狭間で人生を諦めている男が女を愛する心模様が
克明に描かれており、深く感じ入る。
友人のホテルドアマンとの会話では人間の弱さを深くえぐる、
何かにつけてとりあえずカルヴァドス(リンゴ酒)を一杯飲む、
夜のルーブル博物館をさまよいながら色々思う、
細かい描写の連続で読むのに努力を要するが、であるが故に心に響く。
間違いなく、私の読書人生で出色の一冊だ。
我家の「凱旋門」は山西栄一訳 昭和35年発行、
河出書房の世界文学全集別巻7 定価 290円、
アマゾンで検索しても、この全集しかない。
追:レマルクは、「西部戦線異状なし」、「凱旋門」、「リスボンの夜」
の3部作が著名、いずれも戦争に翻弄される人間を描いている。