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新潟時代3.方針

 N社は10年前に大手鉄鋼会社から独立した100%子会社だから、独立した時に親会社からそのままN社に出向した社員が主力で、幹部社員は全て出向社員だ。彼等の給与は親会社が補填して、出向により給与が下がらないように配慮されている。一方、独立後、新たに会社に入社した社員は本来のN社の給与だから、通常の新潟地方の会社並みだ。結果、出向社員とプロパー社員では大きな給与格差が生じている。プロパー社員、特に仕事の出来るプロパー社員にとっては大きな不満であり、しばしば社員間の軋轢の一因になるが、如何ともしがたい。
 
 会社の組織は事業毎に細かく5事業部に分かれており、如何にも大袈裟だ。主力の製造業3事業部については事業部間に壁があり、技術や作業員の交流がしにくい。社内で色々議論したが、思い切って全て一つにまとめ、製造部と営業部とした。製造部長は社長の私が直々に兼務、営業部長は会社のNO2たる常務が兼務することにした。事業部長がいないから、社長自らが直接技術と営業の社員と話をして、工場を歩いて現場のキーマンと自然に話が出来る。日々の経営判断は社長と常務が相談して直ぐに決められる。
 
 社長――A事業部長   ―→   社長――製造部長(社長)
     B事業部長            営業部長(常務)
     C事業部長
     D事業部長
     E事業部長
 
 次は各事業を具体的にどうするか、作戦を立てねばならない。限られた経営資源(資金と人材)をどの事業に投入してするか、他に縮小すべき事業もあれば、成り行きに任せる事業も有るはずだ。その選択と集中で会社の将来が決まる。今後のマーケットの見通しについて常務と相談し、当社の技術力がどの分野で他社をリードできるか、技術陣と議論し、当面の経営方針を決めた。
 
 2001年策定の事業方針
●人と金を投じて拡大する事業
 ①    携帯電話振動子
 当時の携帯電話は受信時に、超小型モーターが偏芯の錘を高速で回               転させることで、振動させていた。N社はその偏芯の錘つまり振動子を製造しており、品質が評価され、マーケットの急拡大が望める。

当時の携帯電話は派手に振動した

 ②    コーティング
 お客様から、切削工具・金型を預かり、表面に特殊金属をコーティングしてお返しする。これにより工具類の寿命をお幅にのばしている。この分野は、コーティング技術の開発次第であり、N社は充分にポテンシャルがあると考えられる。

切削工具は表面コーティングで寿命が大幅に伸びる

●撤退する事業
 溶融シリカ
 半導体の封止剤の製造を行っていたが、国内のマーケットはほぼ中国製で占められており、価格で太刀打ちできない。
●現状維持事業
 冷間鍛造、粉末焼結は自動車部品が主体で、利益は少ないが安定した売り上げが確保されているし、一定の技術競争力もある。
●成り行き事業
  エンジニアリング事業・サービス事業
  在籍している人がいる限り、事業は続けるが、将来は自然撤退

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