上場企業13.販売店の被災
東日本大震災で当社の水道管を扱う、大船渡の販売店が被災した。
当社は全国に大小の販売店網をかまえているが、そのうちの1社が、岩手県の大船渡市にある。大船渡市は海岸沿いの町で、今回の地震と津波でほぼ全滅した。販売店も、社長の自宅も市の中心部にあるから、テレビで繰り返し放映された映像によっても明らかなように、全て津波に流され、跡形もない。
安否情報によると、避難者名簿に社長と奥様の名前があるから、無事らしいが、当社東北支店(仙台)の社員も、避難所に行けずお会いできていない。小さな会社だが、地道な経営をなされて、当社の販売店として、地元での信用は厚かった。
で、突然お金の話で恐縮だが、当社から販売店への売り上げは、手形で回収しており、来週25日期限の手形がある。これが不渡りになると、普通、販売店は倒産してしまう。その後も手形の期限が4ヶ月続く。販売店は地元の工事業者に販売しており、そちらも被災していれば、代金の回収が出来ない。支払いだけが重なれば、よほどの預金でもない限り、何時か破綻する。
昨日先方の主取引銀行の東京支店にこちらから資金担当者が出向き、事情を説明して協力を求めた。その銀行の大船渡支店も消えてなくなっているとの事だが、こういったケースは初めてとのことで、兎も角調べて出来る限り協力する、又、自然災害では手形が落ちなくても直ぐに倒産にはならない(法的な措置もあるらしい)とのこと。
その後、社長の所在が分かり、当社担当者がご本人にお会い出来た。当初、茫然自失だった社長を励まし、手形期限を延長し、債権の回収と新たな借入れのお手伝いをした。銀行と(当社も含めて)債権者の利害は一致している。結果、破綻を回避して、短期間(2か月)で業務を再開出来た。日頃から地道な経営をして地域に貢献してきた会社だからこその結果でもあることは言うまでもない。
5月の某日、復興間もない販売店を訪問した。一帯は大船渡の岸壁に続き、他に営業している会社ない。社長は、昨日銀行から新たな借入金が振り込まれましたと、ほっとした顔で、これからも宜しくお願いしますとのこと。他社に先駆けての業務開始が功を奏し、細かい工事の依頼や部品の調達に訪れるトラックが引っ切り無しで、水道の復旧に貢献している。邪魔にならないよう、早々に退散したが、メーカー社長の私が販売店を訪問したという事実が重要なのだ。