欲望短歌
先日の日曜日のNHK短歌の選者は枡野浩一氏、異色の歌人だ。
枡野浩一氏は、1968年生まれだから、今56歳、歌人、詩人、小説家、エッセイスト、芸人・・・・何が何だかよくわからない。
1997年に歌人としてデビューし、口語短歌が主な作風、「かんたん短歌」と命名され、「マスノ短歌」などとも呼ばれている。それでも高校国語教科書(明治書院・大修館書店)に短歌掲載中だから、間違いなく世に認められている。結社や同人に属していないため、歌人としては異端視されることが多い(当人もかつては「特殊歌人」の肩書きを使用していた)。当人が「世界一売れている現役男性歌人」と称するように多くの支持層を持つ。特に若者に支持されている。
短歌以外にも現代詩、作詞、漫画評、演劇評、エッセイスト、小説などさまざまなジャンルで作品を発表している。阿佐ヶ谷「枡野書店」店主。元妻、南と離婚に至るまでやその後などは、著書『あるきかたがただしくない』『結婚失格』などに、詳しく書かれている。
番組の冒頭で、彼の歌が紹介されている。
川柳と俳句と短歌の区別など
つかない人がモテる人です
如何にも枡野氏の短歌らしい、彼自身が、川柳と俳句と短歌の区別をしていないのだろう。もっとも、彼がモテるかどうかは知らないが・・・・
番組のテーマは、大好き/大嫌い、全国から応募された作品から10作を選んで紹介し、最後にベスト3を発表している。その中で2席に選ばれたのが、次の歌だ。
非を認め 謝罪すること 大嫌い
傲慢なまま 生きて行きたい 森本晋
以下、枡野氏の感想では・・・・
普通短歌を作る時気を使いすぎて、「生きて行きたい」ではなく「生きちゃいそうだ」になる。生きちゃいそうだけれど、生きていないよ、と言い訳がましい。人間は、誰にも好かれようとすると、誰にも好かれない
「生きて行きたい」と書くと、反発する人もいるだろう。実は自分もそう思っているが、思っていても言わない方がいいんじゃないですか、森本さん、これから騒動起こしたら大変ですよ、等と言われそうです。しかし、そんなことは気にせずに、自分が勇気をだせているかどうかを、気にして欲しい。
そう言われると、自分を振り返ってドキッとする。確かに、毎日言い訳している、それも自分自身に言い訳して過ごしている。もう少し素直に勇気をだした方が人間らしく好ましいかもしれない・・・・と直ぐに人の目を気にするのが、そもそもだめか!
ちなみに、入選作の一席、三席の歌は、以下の通り。
蜻蛉(せいれい)に 差し出す指が 一本であるように
きみだけが すきだった 大津穂波
あらアンズ もう時機アンズ 迷い無く
値段も見ずに 手に取るアンズ 野村貞江