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「異邦人」最大の謎「クリュシエンの塩」を追え!【ワンとニンゲンの文学ラジオ#2】

こんにちは。人間のニンゲンです。

「ワンとニンゲンの文学ラジオ」第2回、お聴きいただけましたでしょうか。まだの方は夕食を作るお供にぜひどうぞ。

第2回では大きな謎がありましたね。そう、「クリュシエンの塩」です。

”しばらくたって、何かしなければならないから、私は古新聞を手にとって、読んだ。クリュシエンの塩の広告を切り抜き、古い帳面にはりつけた。新聞のなかで面白いと思った事がらをそこに集めておくのだ。”

新潮文庫 A. カミュ 窪田啓作訳「異邦人」 P.28

わざわざ古新聞から切り抜くレベルの塩の広告ってなんなんだ。そもそもどんな塩なんだ。
高級なのか?天才的なクリエイティブなのか?伯方の塩となにが違うっていうんだ?
皆さん気になってまんじりともできないことでしょう。僕もです。

調べました。


見つけました。

まさかのフランス語版の記事しかありません。
インターネットのない時代では世界の大半の人が知り得なかったであろうこの情報。有り難みを感じながら引用します。

”クルーシェン塩は、おもしろくて独創的であると考えられた広告のおかげで、1920 年代から 1930 年代にかけてフランスでよく知られた医薬品でした。その文学的な痕跡は、1942 年に出版されたアルベール・カミュの小説『異邦人』 1や、イギリスの作家ドロシー・L・セイヤーズの1926 年の著作『ピーター卿の証人が多すぎる』の中に見ることができます。”

フランス語版Wikipediaより。Google翻訳。

やっぱり面白い広告だったんだ!
しかもカミュ以外の作品にも登場しまくってる。当時のヨーロッパではよっぽどメジャーだったんですね。

では一体どんな広告なのか。ご覧ください。

クリュシエンの塩の広告。

1930年代の広告。こんな5才児な現れ方されたらメイドさん気絶します。「1日3回、若さと健康」と書いてあります。
1936年頃の広告。おじいちゃんの目がギンッギンです。

こっわ。

どうやら目がイッてるおじいちゃんがイメージキャラクターみたいです。
こんなの新聞に載ってたらたしかに切り抜きたくなるかも。

”クルシェン塩の広告は、誇張されていると考えられる健康上の約束、たとえそれが便秘の影響に対抗するだけの製品であったにもかかわらず、ほぼ永遠の若さと幸福を約束するものでした。”

フランス語版Wikipediaより。Google翻訳。

クリュシエンの塩は当時は医薬品(健康食品?)だったようです。
性能的には便秘薬だったみたいですが、効果をめちゃめちゃ誇張して「超すごい若返り薬」みたいな広告をしてたらしい。

”私の父はクルッシェン塩で素晴らしい結果を達成しました。まさに「奇跡の塩」と呼ぶべきでしょう。彼は92歳ですが、とても元気です。”
”クルシェンはあなたを20日間で20歳若返らせます。”

同上。

それでこんな、目がギンギンでちょっとあぶないおじいちゃんの広告になってるんですね。

売ってます。

なぜかeBayのカナダのページで。
紙袋の中には瓶が入っていて、ちゃんと塩自体も詰まってるようです。

売値が95.44カナダドルなので、大体1万円ちょっとですね。
高いのか安いのかわからない。

「異邦人」の時代を感じたい人はぜひ買ってみてください。
もしかしたら広告のおじいちゃんみたいに超絶元気になれるかもしれませんよ。
そもそも口に入れていいものなのかはわかりません。


今回はここまで。
読んでくださる中には、「数十年来の謎が解けた!」という方もきっといらっしゃるのではないでしょうか。
改めてインターネットってやつはすごいです。

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