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脱・お絵描き初心者へのすゝめ

こんばんは、もしくはこんばんは。

いきなりですが、絵を描いてメシが喰いたい場合、一番大事なものはなんでしょう。
答えは魅力です。
その絵にお金を払うだけの魅力(価値)があると判断されることです。

では、その魅力以前に最低限必要なものとは何でしょう。
答えは画力です。
具体的に言うと、それがそれだと違和感なく見える物を描く能力です。

所謂「へたうま」のように違和感自体が魅力だという絵の場合は別ですが、一般的に「上手い」と言われる人たちの絵は違和感がほぼないです。
粗探しのように細かく見たら目の肥えた人にはみつかるかも知れませんが、そのレベルの違和感は誤差の範囲です。

この記事を読む人は、その違和感を消したい人だと思って話を進めます。

漫画絵、コミックイラストのような絵を見た人が一番違和感を感じるのはキャラクターです。
違和感が多いキャラクターの絵を人は「下手」と呼びます。

この違和感は長く描いていれば消せる人もたくさんいますが、ボクは10年描き続けても消えませんでした。
つまり、絵を描いて10年間「下手」と言われ、自覚もし続けていました。

ボクはプロ志望だったので下手というのは致命的でした。
長年漫画家アシスタントをしていたので絵に興味がない人を騙せるぐらいの小手先の技術は身につきましたが、漫画業界の編集さんからすれば「商用レベルではない」とされ、仕事は貰えませんでした。

そんな長年くすぶってたボクが、意識を変えただけで1年もかからず商業誌での連載を貰えるレベルのキャラクター絵が描けるようになりました。

今回はそのやり方を書いていきます。

先に例を出しておくと、↓コレが

↓こうなります。

もし1枚目の絵を「上手い」と思う人がいたら、もうちょっと目を肥やしましょう。商用レベルにない絵を下手だと判断できることもまた大事なことです。
2枚目の絵もイラスト業界では通用しないと思いますが、それでも漫画作画のお仕事は貰えたので、このぐらいにはすぐなれるよというお話です。


まず、この記事のようにお絵描き講座的なものは星の数程ありますが、ボクのように長年下手くそだった身からすれば、講座の大半が「中級者向け」です。

ここでは違和感まみれの下手くそは何年やってても「初心者」、あまり違和感を感じられないレベルから「中級者」と呼びます。

ボクも最近YouTubeでさいとうなおき先生を始め色んな動画を見て勉強してますが、技術を教えてくれるタイプの講座はある程度描ける人なら参考にできても初心者には難しい領域だと思います。
ヒドい言い方をすれば、下手なままあの技術を真似してもハッタリが効くだけで根底の画力は向上しにくいです。

なのでこの記事では、無数にあるお絵かき講座を参考にできる以前のレベルの人が、今いる立ち位置から一歩進めるようになることを目的に書きます。


前置きが長くなりましたが結論から言います。
必要なのは「デッサン力」です。

ここで読むのを辞められても仕方のない結論ですが、下手な人が違和感を極力なくす一番の近道はデッサン力を身につけることです。

と言っても美術の授業でやるような見た物を鉛筆で描き込むデッサンとは違い、漫画絵のデッサン力は最低限球体と円柱が意識できればそれでいいです。
ここで言うデッサン力とは「3次元のものを2次元に置き換えて描画する力」で、例えばボールを描く時、やってることは円を描くだけだとしても、それを球だと意識して描くことです。

恐らく下手な人の多くは線で描こうとしてるんだと思います。
というかボクがそうでした。
線で形を覚えようとするため、覚えた角度しか描けずしかも安定しない。
それでいい絵が描けるって人は現状に不満はないでしょうが、現状に不満しかなく今より上手くなりたいのであれば、一度線で描くという考えは捨て
、デッサン力を身につける断固たる決意をしてください。

パースがどうとか骨がどうとか筋肉がどうとか質感がどうとか、そーゆーのはもっと後の話で、まずは球は球、円柱は円柱、箱は箱であるという物の形を取れるようになることが先決です。

たまに「絵に大事なのはデッサンじゃない」と言う絵の上手い人がいますが、あれはデッサン力があることが前提だから言えるだけで、それを言う人も実際描く時は絶対に3次元を2次元に置き換える脳を使って描いてます。
記号を配置する脳だけで商用レベルのキャラクター絵が描けるほど甘くないです。

なのでデッサン力は「大事」以前に「必須」なものです。
長年デッサン力に意識を向けないまま描き続け違和感まみれの下手くそから抜け出せず、最低限のデッサン力を身につけた途端お仕事が貰えたボクが言うから間違いないです。


ではどうすればいいか。
いきなり人間を描くのは難しいので、アンパンマンから描けるようになりましょう。

アンパンマンは絵描き歌通りに描くと幼児ですらアンパンマンだとわかる絵が描けるほど秀逸なデザインで、丸という記号の集合体です。
ですがそれはあくまで正面から見た場合で、少しでも角度を付けるには記号だけでは難しくなります。

このように少しナナメから見た絵が描ける人は既にデッサンを意識しています。その調子で頑張りましょう。
描けないよという人は、アンパンマンを構成するパーツは「丸」ではなく「」だと意識します。

このように青い線を引くと、ただの丸い線でもそれは線でなく立体物だと意識できると思います。
立体物のアウトラインを描く、それができれば人間でも動物でもモンスターでも何でも360度どの角度からでも描けるようになります。

目や口に青線は無いの?と思った人もいるかも知れませんが、所謂「輪郭」と呼ばれるおデコ、頬、アゴ、そして鼻の高さ、これらがデッサンを意識されていれば、目や口、鼻などを描画するパーツは今まで通り記号でも大丈夫です。



アンパンマンを色んな角度で描けるようになったら、次はいよいよキャラクターの絵に行きます。
基本的にはこの応用ですが多くのキャラクターの顔はアンパンマンよりもっと複雑な形状です。
なのでお手本を使います。

まず自分が描きたい絵に近いフィギュアを用意します。
持ってなければゲーセンで取ってくるなり、その辺で買ってくるなりして下さい。
リアルな人間に近い絵が描きたければ家族でも友人でもモデルを用意して下さい。
写真より現物を見た方がいいです。

ボクの場合はポーズ人形を使いますが、キャラクターフィギュアの場合前髪パーツが邪魔なので外して下さい。外すのが嫌なら外してもいい絵の資料用のフィギュアかスキンヘッドキャラを用意して下さい。
また女の子の素体を使ってますが、男でもなんでも、描きたい絵のスタンダードに近いものを用意して下さい。

用意したフィギュアをよく観察し、目の周りは凹んでいる、頬は膨らんでいるなど、頭部の立体を構成している情報をインプットしてください。

そして仕入れた情報を元に、描いた輪郭がこちら。

フィギュアの写真と全然違うやんけ!と思うでしょうが、写真のフィギュアはボクが描きたい絵のバランスよりも面長なのと凹みが大きすぎなので、ある程度調整して自分好みで描きました。
見たモノを見たまま描く練習ではなく、フィギュアから得た情報をもとに自分の画力を上達させることが今回の目的なので、できるなら見て覚えて、見ないで描くと良いです。

アウトラインだけで立体を意識するのは慣れないと難しいので、最初のうちはアンパンマンでやったように、立体を意識できるサポート線を入れると形を取りやすいです。

凹んだ部分と膨らんだ部分のある球体に、尖った出っ張り(鼻やアゴ)が加わり、線で描くという考えを持たずに、立体物を二次元に置き換えたアウトラインを作る。
影を入れて凹凸を面で表現してもいいです。
とにかく立体物を描く脳になるまで何度も描いてください。

そうして描けた頭部をアタリとして、好きに目や口、耳や髪を描き入れればキャラクターの顔ができあがります。

それを色んな角度で何枚かしっかり描けば身につき、そうして描けるようになった感覚は一生モノで、男の骨格にするにしろ幼女にするにしろ肥満体型の肉付きにするにしろモンスターにするにしろ応用が利かせられ何でも描けるようになります。


で、ここまでが「練習」。
本番は、それができるようになった状態で、今までのように線で描いてみてください。
するとただの線で描こうとしてみても、一度身についたデッサン脳はナチュラルに作動し今までよりも安定して形が取れるようになります。
ならなかったらそれは練習がまだ身についてないので、できるようになるまで続けましょう。
そうやって描いた絵は美術のようなデッサンでなく、デッサン脳を使って線で描いた漫画の絵になります。

顔は描けたけど身体が…という人もいるかと思いますが、一度立体物で描くことが身についた人にはさほど難しくないです。
首から下のパーツ、胴体や手足は主に凹んだり膨らんだりした円柱です。
凹んだり膨らんだりした球体である頭部が描けるならば、腕や脚も同じことです。

しかし頭部と違って各部それぞれ色んな動きをするので、ただ立体脳にしただけですぐに描けるワケでもないのが身体なので、可動するフィギュアやモデル、自分で描きたいポーズをとった写真を使うなど、参考にするものは必要です。
ボクは未だに先ほどのポーズ人形が無ければ複雑なポーズは描けません。

また、ここにきて世に星の数ほどあるお絵描き講座の、特にキャラクターや人物の描き方講座のありがたみが火をふきます。
本格的に骨や筋肉の仕組み説明しているものも多いのですがそれは時期尚早で、まずは関節がどう曲がるか、肉はどうついてるかぐらいの最低限の知識と、違和感のない重心を持ったポーズから身につけます。

講座は知識を得られるものですが、その得た知識を絵に起こす力が無いと意味がありません。
しかし逆に言えば球体や円柱を凹んだり膨らませたりと変形させる絵が描けることができれば、講座で得られる知識を最大限発揮させて描くことができるようになります。

ボクのように10年間絵が下手なままだった人は、その10年で色んな講座を読みまくり、知識だけは多く得てると思います。
そういった人はデッサン脳を身につけるだけで、今まで得た知識をいきなりフルで活用できるようになったりもします。


長くなりましたが、この方法が絵の初心者を脱出する一番の近道だと思います。
才能や絵心があると呼ばれる人はこの記事の内容を意識せずできるような人で、できないボクたちは意識してやればいいだけの話です。
ボクはその「意識する」という簡単なことができないまま10年という無駄な歳月を過ごしたので、これを読んだ人はそうならないよう願います。
才能がない、絵心がないと自虐してる人は、意識するだけで才能持ちの領域に一歩近づけます。

その一歩進んだ更に先へ行くためには、先述のようなお絵描き講座が沢山あります。
現役の人気のプロ絵師たちがその技術を惜しみなく教えてくれる講座が鬼ほどあります。
この記事で書いたことができるようになれば、それらの講座で得られる技術が今までの何倍もの効果として吸収できていきます。

この記事がそんな楽しいお絵描きライフを送る手助けになれば幸いです。

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