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まとめ, リフレクション [2020.8.4]

最終回です。各回をふりかえりつつまとめをします。以下に、各回の「●考えてみましょう」(調べてみましょう、探してみましょう 含む)の部分を抜き出しました。いまいちど振り返ってみましょう。読み飛ばさずにしっかりと「考えてみた」人は、理解が深まり、理論が身についたことと思います。
授業のねらいや到達目標は、初回の講義ノート(シラバスから転載)に書いてありますので見直してみましょう。理解がすすんだかどうか自分のレベルを確認してください。

リフレクションについて

今回の講義のタイトルになっているリフレクション(reflection)について、少し説明します。教育学の理論で、日本語にすると内省、省察です。
自分の学びを振り返ることで、理解度や到達度を自分自身が把握して次の学びに続けていく、というのがリフレクションの主旨です。classroomにミニレポートの課題を出しますので、この講義での「自分自身の学び」を振り返ってください。

各回の「考えてみましょう」 まとめ

第1回: 美大で認知科学を学ぶ理由

●考えてみましょう
1.いままで利用したウェブサイトやスマホのアプリの中で、よかったものはなんでしょう?それを使い続けている理由はなんですか?ウェブやアプリ以外でも使いやすいツールや機器はありますか?
2.逆に、すぐに見るのをやめてしまったサイトや、削除してしまったアプリ、使わなくなった機器などにはどのようなものがありましたか?使わなくなった理由はなんでしょうか?それらは、どのように改善したらもっとよくなると思いますか?3.使いやすいウェブサイトやアプリに共通していることはありますか?それはどんなことでしょう?友人や家族も同じ意見でしょうか?

第2回: 1. メディアラボ

●調べてみましょう
興味を持った研究者や研究分野、トピックス等について検索してみましょう。

第3回: 2. マッキントッシュ,
3. ヒューマンインターフェイス ガイドライン

●考えてみましょう
ヒューマンインタフェースガイドラインは重要だという話をしてきましたが、まれに、これまでにない革新的な機能や操作性を実現するために「ガイドラインをあえて守らない」アプリが登場することがあります。それらが市場に広く受け入れられる場合もあり何が正しいのか答えはありませんが、だからといってガイドラインを無視して好き勝手やっていいということでもありません。
以下は、TikTokやSnapchatを例にした記事です。みなさんはどう考えますか?また、もし自分が競合アプリのデザイナーだったらどのようなUIデザインを考えるでしょうか?(正解はありません)

第4回: モバイルNUIパラダイムの登場

4. ユーザーインタフェースの進化
5. モバイルNUIパラダイムの登場
6. 過去・現在のコンピューティングパラダイム

●考えてみましょう
もし、あなたがNUIの「次」のインタフェース(OUI的なもの)について、開発プロジェクトのメンバーに任命されたら、どんなことをデザインしたいですか? また、それには、テクノロジーの要素以外に、どんなリサーチや研究が必要になるでしょうか?

第5回: 入出力のインタフェース

7. 入出力のインタフェース(1):タッチUI
8. 入出力のインタフェース(2):ジェスチャーUI,音声UI,ロボットUI ほか

●考えてみましょう
好むと好まざるとに関わらず、履修しているみなさんの中には、将来仕事でこれらのUIデザインを任される人が確実にいると想像します(特に情報デザインコースのみなさんは可能性が高めです)。卒業制作でVRを使う人も出てきました。
このUIはこれでいいの?私ならこうデザインするけど、と考えながら、それぞれのユーザー・インタフェースを眺めてみてください。あなたなら、どのように「デザイン」しますか?

第6回: 認知的インタフェースの科学とその周辺

9. 記号
10. 道具、機械、そしてコンピュータ
11. インタフェースとコンピュータと

●考えてみましょう
あなたが使っているアプリや機器、ツールについて「第一接面」と「第二接面」がなにか(どこか)?を考えてみましょう。その第一接面のインタフェースデザインは、第二接面のことを考慮したデザインになっているでしょうか? なっていないとしたらそれはなぜでしょう? また、あなたならそのデザインをどのように修正しますか?

第7回: 感性と感情の認知科学

12. 人間の内側では何が起こっているか (p050-056)
13. 人間の情報処理 (p057-065)

●考えてみましょう
短期記憶、長期記憶の概念を使って、日常生活の中の「ものを覚える」ことや「憶えている」こと、「思い出す」ことを説明してみましょう。
最近、「覚えようとしたこと」「憶えたこと」は何ですか。それはどのような経験でしたか?(どうやって覚えましたか)。また、思い出そうとしても「思い出せなかった」経験はありますか? それをあとで急に「思い出した」ことはないでしょうか?
それらは、短期記憶や長期記憶、忘却や干渉などの言葉(概念)を使うと、どのように説明できるでしょうか?

第8回: 感じることはわかること(1)

14. 目を奪われる注意と知覚のプロセス (p092-096)
15. 「そうさせられてしまう」アフォーダンスとシグニファイア (p097-104)

●考えてみましょう
デザインや課題制作のために、みなさんが意識して(あるいは無意識に)使っている「示差性」には、どんなものがあるでしょうか? 教科書にある点滅や色などの例(p094-095)のほかにどんな要素があるでしょう? これまでの課題制作や作品の中で示差性をうまく使ったものはありますか?
●探してみましょう
みなさんの身の回りにある「シグニファイア」にはどんなものがあるでしょう? 例にあがっているトイレのサイン(p104)のほかには何が思いつくでしょう?
また、デザイナーは、その「シグニファイア」を、どのような意図でデザインしたと思いますか?
もしも、先ほどのマンションのような仕組みのドアが公共空間に設置され、多くのはじめて利用する人たちがドアを開閉するとしたら、あなたはドアの使いやすさを改善するためにどのようなシグニファイア(手がかり)をデザインしますか?

第9回: 感じることはわかること(2)

16. スキーマとメンタルモデル (p105-112)
17. 情報量のコントロール (p113-119)
18. 「わかりやすさ」を作る (p120-126)

●考えてみましょう
1.ハンバーガーショップを例にしてファーストフード店のレストラン・スクリプトを考え、「ハンバーガーショップ・スクリプト」を書いてみましょう。表3-01のレストラン・スクリプトとどこが同じで、どこが異なりますか?
2.ふだんとは違うバス路線を利用したときに、バスの乗り方や運賃の支払い方法で迷ったことはありませんか? その時に戸惑ったのはなぜでしょう? スキーマやスクリプトという言葉を使って説明してください。
●考えてみましょう
ふだん利用しているもの、あるいはいま部屋の中を見渡して周囲にあるもの、スマホの中のアプリなどの中に使いにくい、わかりにくいと感じているものはないでしょうか? (ひとつぐらいあると思いますが)
それらを使ってみて、使いにくい、わかりにくいところはどこですか? もっと使いやすくわかりやすく改善することはできるでしょうか。
もし改善する場合、あなたなら具体的にどのようにリ・デザインするでしょうか? また、そのために今回学んだスキーマ、スクリプト、メンタルモデル、対応づけ、チャンク、シグニフィア、教育などのどれを応用したらよいでしょうか?

第10回: 経験と物語が支える魅力(1)

19. 価値・経験・人間らしさ (p128-132)
20. 経験価値のデザイン (p133-137)

●考えてみましょう
1)みなさんの身近にある製品のデザインを、3つのレベルを意識しながら見てみましょう。その製品は、主にどのレベル(本能・行動・内省)を意識してデザインされていると思いますか?
2)あなたがいま使っているスマートフォンを選んだ理由はなんでしょう?その理由は3つのレベルのどれに相当するでしょうか? 色や形のカッコよさ(本能レベル)なのか、使いやすさ(行動レベル)なのか、それともブランドや文化的な価値(内省レベル)なのか、どのレベルの要素が強いですか?

第11回: 経験と物語が支える魅力(2)

21. 魅力を語るナラティブ・ストーリー (p138-149)
22. 自らの存在を確認する (p150-158)

●考えてみましょう
身の回りにあるものの中で、あなたが購入前から「このブランドにする」と決めていたものはどれでしょう? 購入の際に「ブランドを気にして」買ったものは何でしょう? 逆に「ブランドを気にせずに」買ったもの手に入れたものはなんでしょう?わざわざそのブランドを選んだのはなぜでしょう? それらと、気にしなかったブランドとの差(ちがい)はありますか?それはどんな要素でしょうか?
●考えてみましょう
自分が帰属していると自覚しているコミュニティーにはどんなものがありますか?(ひとつではなく複数あると思います) そのコミュニティーは自分自身のアイデンティティとどのように関わっているでしょうか。
また、そこにはコミュニティーの文化として、モノの所有、ツール、言葉(ジャーゴンなど)の使い方など、どのようなもの(慣習・規範・ルールなど)があるでしょうか?

講義全体のまとめ

5月から約3ヶ月にわたって認知科学について学んできました。前半は様々なUIデザインの事例について見ていきました。みなさんが毎日のように使っているスマートフォン、パソコンを始めとして様々な機器のUIの多くは「デザイナーがデザインしている」もので、使いやすさを実現するためにはガイドライン等のルールや仕組みが存在しています。単に利用者ではなく、デザインする側の視点で様々なUIを吟味する習慣が身につくと、ウェブサイトやアプリ、機器の見え方、捉え方が変わります。


後半は資料や教科書を参照しながら認知の理論を学びました。人間の認知的な特性を知ることで、わかりやすさや使いやすさを実現することができます。前半のUIデザインの事例と後半の認知の理論を結びつけて考えることがだいじです。
認知科学の扱う分野は広く今回の授業で全てを網羅したわけではありませんが、UIデザインを考える上で必要な基本的な理論については概観したつもりです。今後の課題制作や、インターン先での仕事、将来のUIデザイナーとしての仕事などに活かしてもらえればと思います。


授業としてはこれで終わりになりますが、授業で取り上げなかった教科書の第5章、第6章、第7章については自主研究期間にぜひ目を通してみてください。また、授業を通じて興味を持った項目は深堀りしてみましょう。この先が自分のための学び探求です。

急に始まった(お互いに)不慣れなオンライン授業で、ストレスに感じることも多々あったかと思います。3ヶ月をふりかえって次につなげていこうと思います。

付記:参考図書リスト

吉橋個人名義のブログ(note)にて認知科学の参考図書を紹介しています。大人向けにつくったものですが興味があればどうぞごらんください。(注:授業用ではない個人ブログのため、amazonのアフェリエイトリンクが貼ってあります。念のためお伝えしておきます。もちろんここから買う必要はありません。まず図書館でさがしましょう。)