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アフガニスタン。涙。怒。ため息。

私がシカゴにいる間に、アフガニスタンは大変なことになってしまった。いつもWalkingしながらBBCのPodcastでニュースを追う私だが、金曜に戻ってきて体重が増えていて血相変わってWalkingを再開したのが今週月曜のこと。この6日間で9時間分のニュースを消化した。

ちなみに首都カール(Kabul)は、英語発音ではァボォル。現地語発音ではどちらに近いのだろう。日本のカタカナ表記は現地語に近いことが多い。

アフガニスタン。私の最初の記憶は、ランボー3 怒りのアフガン、である。冗談ではない。冷戦中1988年の映画だから2001年の911から始まった20年にわたるアメリカによる軍事介入よりずっと以前、ということになる。

王国だったアフガニスタンが、1978年に共産党蜂起。1979年のソ連によるアフガニスタン侵攻。このアフガン紛争が10年間続く。1996年までにタリバンが政権を掌握。そして2001年の911からアメリカの軍事介入が始まる。「この20年間はなんだったのか」と皆騒いでいるが、20年なんていう話じゃない。1978年からあの国の紛争が途絶えたことはない。インド、パキスタン、アフガニスタンを流れるインダス川周辺に栄えたインダス文明。アフガニスタンは5万年もの歴史ある国なのだということをどれだけの人が知っているのだろう。

そんな遠い遠い国だったアフガニスタンが、私の心の隅にひっそりと住みつくようになったのはKhaled Hosseiniの小説を読んだから。映画にもなった"The Kite Runner"がもっとも有名だが、ストーリーはあまりスキではないし、小説としてのレベルもそれほどではないと思う。だが二作目の"A Thousand Splended Suns"は忘れられない一作だ。そして今のアフガニスタンのニュースを毎日聞きながら、私は三作目を読み始めた。

中東の歴史と混乱はあまりにも複雑でわかったようなことは書けないが、ニュースを聞いて、私の頭で整理したことは、

* アメリカが撤収すること自体は間違っていないが、撤収の仕方に問題がある。
* アメリカとNATOの介入以来20年間、経済的な支援はアフガニスタン政府要員の私腹を肥したに過ぎなかった。
* 今のタリバン幹部は911当時はまだ下っ端だった。そして20年前と比べて、彼らの政治的スキルやノウハウが向上している。
*  タリバンの復活により、女性の就学就労機会が危うくなる。「女性は働くべきでない、学ぶべきでない。我々は女性を守っている」というのがシャリア法に基づいた考え方で、これはタリバンの下っ端から上層部に至るまで徹底的に一致した思想。
* 世界中の視線がアフガニスタンに向いている今は、表向き「20年前のような支配はしない」と発表しているが、数ヶ月後にどういうことになるかを人々は恐れている。
* アフガニスタン大統領は身の危険を感じて、早々に国外脱出。副大統領がタリバンに占領されていない都市で、自分が正統な指導者だと主張。
* 20年間アメリカとNATOに協力してタリバンと闘ってきたアフガン人が今国外に出ずに残留すると、家族ともどもタリバンの制裁対象になること間違いなし。

アフガンの人々、一般市民のことを思うと、一体どうしてこんなことになってしまったんだろうと、とてつもなく悲しくなる。日本に住むアナタやアメリカに住む私には想像もつかない毎日を彼らは送っている。そんな生活がこの世に存在するのかというような毎日。そんな状況下でも、人は希望を捨てずに生きようとする。ささやかな小さな喜びを見出して生きる。

そして国の国民のリーダーたるべき連中が諸外国からの援助資金で私腹を肥しただけの20年間だなんて、全身が怒りで震えてくる。アメリカ軍が撤収するのは当然であるが、でも、金を出しっぱなしで正しく使われているかどうかを追わないのは無責任ではないか。撤収の結果を食らうのは一般市民。大統領はさっさと国外逃亡。

Podcastを聞いて、撤収の仕方に問題があるという意味がよくわかった。空港をタリバンに抑えられて、どうやって、国を出るべきアフガン市民を、米欧諸国民を安全に脱出させるというのだろう。アメリカ軍が撤収すると決まった時からメディアはタリバンが実権を握り返すのに数ヶ月かかると言っていた。そして今は「予想外の速さ」で首都Kabulを占拠されたと言っている。

トランプ政権時代の元National Security Advisor(国家安全保障問題担当大統領補佐官)のH.R. McMasterがBBCのインタビューで、「当時アフガニスタンから撤収する時の被害を考慮した結果、撤収は見送りにされた」と言っていた。「その決定をひっくり返しての撤収。撤収を決めたのなら、そのための準備を綿密にするべきだった。実権を失うとわかってるアフガニスタン政府ではなく、アメリカの軍事力を背景にタリバンと直接交渉して、この20年間アメリカ軍とともに闘ってきた国外逃亡を希望する市民たちを安全に連れ出す策を立てるべきだった。『できない』と言っているができないんじゃない、やる意思がないんだ。やる意思さえあればタリバンを今ここで壊滅させることだってできるのに。」元軍人らしい発言ではある。

「サイゴン陥落と同じではない」と強気発言のバイデン。「その通り。同じじゃない。もっともっと悲惨だ」「サイゴン陥落からアメリカは何も学んでいない」とメディアが叫んでいる。トランプ政権が始めたことではあるが、バイデン政権の汚点となるのは間違いない。責任を回避できるようなことじゃない。

撤収自体は間違いじゃない。撤収方法が間違っている。まるで、私のto-be-ex husbandと同じ。


ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。