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豊かな日本人~ 羽田空港での落とし物から思うこと

日本に2週間滞在し、昨日オークランドへ戻ってきた。
私はオークランドに住み始めて25年たつが、帰省するたびに、ますます日本のいいところに気づく。

今回は、オークランドから格安の乗り継ぎ便で日本へ行った。
そのため、いつものニュージーランドエアなら、11時間の航空時間で直接成田空港に到着するところが、今回はクアラルンプールで乗り換えなければならなかった。
マレーシア航空と日本航空の乗り継ぎだった。片道の全行程はおよそ21時間、機内泊である。

翌日、成田空港から羽田空港に移動し、私の実家のある北海道へ飛ばなければならなかった。

そんな疲れがあったためか、私は途中の羽田空港で忘れ物をした。スーツケースの重さをはかる小さな重量測定器。

失くしたことに気が付いたのは、5日後。実家の滞在を終え、荷物をまとめていた時だった。それほど高価な物ではないので、また買えばいいと思っていた。

しかし、どこで失くしたのだろうと記憶をたどってみた。多分、羽田空港だろう。

そこで私は、ダメ元で羽田空港の忘れ物センターに行ってみることにした。見つかるとは思っていなかったが。
とにかく私は物を無駄にするのが嫌いなので、見つけるための努力を惜しまない。

実際、40年前に札幌の地下鉄の車両に傘を忘れたことがあったが、それは500円程度の物だった。その時は、地下鉄の忘れ物集積センターまで出向き、そこにはたくさんの忘れ物が種分けされて、日付ごとに並べられていた。忘れ物の中で傘は一番多い。

その日忘れられた傘だけでも、数十本はあっただろう。その山になった傘の中に私の青いチェックの傘はあった。

そんな経験があったので、私は忘れ物はできるだけ探す努力をする。

羽田空港の忘れ物センターでは、状況を話し用紙に記載した。そのカウンタ―の若い女性は愛想は良くないがてきぱきと、パソコンで手続きをする。

「お客様のお忘れものは、このような物ですか。」
と、パソコンで写真を見せてくれた。

見つかった。

そして、数分もしないうちにすぐ後ろのついたてから別の女性が現れて、失くしたスーツケース計量器は私の手に。

さすが、日本。

日本のほとんどの人は、忘れ物を見つければ、届けてくれる。
それは、経済的なゆとりと心の余裕があるからだろう。
そして、そういう環境に育つ日本人は、何かを失くしたら誰かが届けてくれるかもしれないと思うだろう。

見ず知らずの人に対する信頼と安心感がある。

ニュージーランドも比較的治安は良いので、2回財布を忘れて2回とも戻ってきた。

そして20年くらい前、運転免許証を落としたときは警察から連絡があり、
「あなたの免許証をこの方が持っていますから、受け取りに行ってください。」というものだった。

私はその人のところまで車を走らせ、免許証を受け取った。
警察に連絡をしてくれる、親切で几帳面な人がいるんだ、ニュージーランドって、いい国だなと思った。

私は、免許証を拾ってくれた人にお礼を言い、免許証が入った定期入れを受け取った。
後で気づいたが、私は財布以外に少量のお金を入れておく癖があり、この免許証の入った定期入れにも10ドルを入れておいた。

しかし、その10ドル(1000円くらい)はなくなっていた。

私は、失くした免許証を10ドルで手に入れられるなら、安いものだと思ったし、この連絡をしてくれた女性にも感謝している。

けれども、もし日本だったら、多くの人はこの10ドルを抜き取らず、そのまま免許証を渡してくれたのではないかと思う。

こういった気持ちのゆとりと経済的な余裕を、日本の多くの人はもっている。
失われた30年といわれ、経済の低迷が続いているとはいえ、まだまだ多くの日本人は、心の豊かを失ってはいないと感じた。

私は海外暮らしが長いため、どうしても日本のいいところばかりが目につくようになっているのかもしれないが、日本はまだまだ住みやすく、人にやさしい。
帰国するたびに、その思いは強くなる。


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