少女よ神話になれ(なった)【モアナと伝説の海2 感想】
悲しいことに、今回は酷評レビューです。絶賛派の方は観ないほうが良いかもね。
ディズニーファンです。
まず前作の評価だが……まぁそこそこ面白かった。飛び抜けて優れた点は無いが、マイナスポイントも無い優等生的な良作といった所。
特にお気に入りなのが、随所に挟まれる神話的な要素かな。マウイが島を海から引き上げ、太陽を捕まえ、魚をばら撒いたというバックボーンは神話としてリアリティがあり、あの世界で信仰されるに値する説得力があった。
マウイのキャラそのものも非常に魅力的。神特有の傲慢さをコミカル描く解釈で、非常に愛着が湧いたな。ミニマウイとすぐケンカしだすの笑う。
続編である今作も楽しみにしていた一方、直近のディズニー作品は、作り手の思想ありきの物語ばかりで、エンタメとしての質が低い印象も強い。ウィッシュは世間の評価程嫌いじゃないが、ミラベル、ストレンジ・ワールドは………ね?
そんな、期待半分不安半分な心持ちで劇場に向かった。
───鑑賞後───
薄っす………
何というか………インスタ映え重視で味がしないオードブルみたいな映画だった。
まず、旅のゴールである島モトゥフェトゥの設定が浅い。「かつて人々を繋いでいた」だの「邪悪な神ナロが鎮めてしまった」だの、壮大な背景を匂わせている割に、具体的な物語が描かれない故興味が湧いてこない。海の民同士でどのような繋がりがあったのか、なんでナロは島を沈めたのかくらいは説明してくれよ。前作のテフィティとか、しっかりバックボーン描けていたのに……。
例えば、かつて人類はモトゥフェトゥに住んでいて、ナロとの戦争で故郷を失い、放浪の過程でモトゥヌイに辿り着いた……とかなら、モアナが旅をする動機も強まるじゃん。なんでそこ掘り下げないの?
でいざモトゥフェトゥに着いてみたら、航路的に便利な座標に位置しているくらいの旨味しか無いというね。もっとさぁ……資源が豊富な土地とか、色んな文明の名残りを感じさせるオブジェとか用意しといてくれよ。
今回の旅に同行するキャラ達も、魅力がなさすぎる。
まず農家の老人ケレ。最年長ということで、長年の人生経験でチームを支える参謀的なポジションかと思いきや、特に何の活躍もしないどころか、農家設定すら全く活かされないモブっぷり。野菜でカカモラと貿易したり、モンスターの注意を引くためのエサに使うなりせんかい。
挙句終盤、大波を越えるには船を軽くしなければと、大事に育ててきた野菜を全部捨て始めて笑った。お前のただでさえ少ないアイデンティティすら手放すじゃん。一応、カナヅチなのに海に飛び込んでマウイを助ける件があったが……キャラの掘り下げ不足で全く感動しなかった。
次に大工のロト。旅の基盤となる船の設計と構築が彼女の役割な訳だが………これもあまり活きていない。
無人島に打ち上げられた際の修理や、カイト型に改造するシーンは良かったが、どれも中盤以降。序盤はデザインが気に入らないからと、柱を切り倒そうとするだけで旅に一切貢献していない。
すぐ改造したがる性格を活かしたいなら、カカモラから何かしらの素材を貰うなり、貝の中に散らばっていた骨を集めるなりして、徐々に船を強化していけば良かったのに。そうすれば最終決戦が更に盛り上がった気がする。
最後に絵描きのモニ。本作のテーマ上、重要なポジションになると期待していたが……とんだ肩透かしだった。
話は変わるが、私は物語序盤の時点で、本作のテーマが「神話の創世」だと予想していた。
根拠がある。本作、物語冒頭から、モアナやマウイが「物語」というワードを強調していた事に気づいただろうか?
「俺の物語はここで終わりじゃない」
「私たちの物語はこれから!」
と。このように、フィクションのキャラクター自身が物語を意識している場合、そこにメタ的な意図が必ず存在する。彼らの旅が、後に劇中劇のような位置付けになると予感したのだ。
モアナの様な文明が発達していない時代設定で、後世に語り継がれる物語といったら、英雄譚か神話くらいだ。しかし英雄譚は1作目で描いてしまっている。となるともう神話をやるしかない。そういうロジックだ。
まぁモアナ自身が神になる展開は流石に予想出来なかったが、モトゥフェトゥを蘇らせ、断絶されていた海の民達から称えられるラストは正に神話だ。あながち間違った予想でも無かっただろう。
……絵描きのモニに話を戻そう。
彼が旅のパーティに選ばれた時、私はこう予想した。「モニは聖書を作る役割なんだろうな」と。モアナがこれから成し遂げるであろう偉業の数々=神話を絵に起こし、人々に伝えていくのだと考えたのだ。上述した「モアナ2=神話の創世説」に則ると、我ながら筋の通った考察だ。
上記を踏まえ、モニの活躍を振り返ってみよう。
お前一切活躍しなかったじゃねーか!
何のための絵描き設定だよ!?旅そのものにあまり貢献できない職業なのにわざわざ連れてきた意味は!?マウイのファンとかいう、あからさまなメタ視点用意してるから無駄に深読みしちゃっただろーが!神話云々の考察延々と書いていた私がバカみたいじゃないか時間返せ!
…………はい、彼の扱いに関してはマージでガッカリです。こんな有様になるなら、航海士か学者設定の方がまだマシだったわ。
……と散々メインパーティへの不満と改善案を書き殴ってきたが、そもそもモトゥヌイ族と旅する事自体ナンセンスだと思う。
だって他の民もモトゥフェトゥを探してたんでしょ?なら旅の道中で色んな民族と出会って、彼らを仲間に加えながらゴールを目指せば良かったじゃん。その方がモトゥフェトゥで人々が繋がる瞬間にカタルシスが生まれると思いません?ラストで集まって来た他所の民族とか、所詮モブでしか無いから何の感情も湧いてこないのよ。過去作のラーヤとか見習ってくれよ、仲間集めの旅として最適解だったじゃん。
あ、途中でパーティに参加した、カカモラのコトゥは除外ね。初登場時は一族の悲願を誰よりも願う一面が垣間見えて興味が湧いたが、それ以降最後まで空気だったし。吹き矢飛ばすだけとか芸がなさすぎでは?
何なら、主人公モアナの描き方も今回微妙だったよね。島を出る前、家族を置き去りにする事に葛藤するシーンは良かったが、旅に出てからイマイチで。
改めて振り返るけど、モトゥヌイから出発してマタンギに近道を教えてもらうまで、ぶっちゃけモアナ何もしてなくない?カカモラに巨大貝の討伐を頼まれたは良いけど、結局決め手はコトゥの吹き矢だし、マタンギは最初からモアナに協力する気満々だったから、成り行きで上手くいってるだけにしか見えない。
クライマックスで神に覚醒する件も良くわからん。マタンギから「思いもよらない所に近道があるかもね」的な事を言われていたとはいえ、「モトゥフェトゥに触ってみよう!」とはならんくね?ここもご都合主義臭い。
あとラスボスのナロさぁ………。モトゥフェトゥが復活した途端いなくなってたの何なん?モアナが覚醒したのを見てビビって逃げたのか?せっかくモアナの新能力を披露するチャンスなんだから、1戦くらい交えてから帰れや。んで倒されたと思いきや、「実は生きてましたー」で3作目に繋げれば良いじゃん。最初から続編ありきで作る事自体は否定しないが、今作で描いておかないといけない要素を次作に丸投げする姿勢は冷める。
総括、「薄っぺらい神話」です。面白くなりそうな要素は沢山あったのに、期待を大きく下回るモノしか出てこなかったのが残念。「ヘラクラス」とかもそうだけど、ディズニーって神話の調理下手なのかね?おとぎ話系は名作揃いなのに不思議。
まぁ音楽と映像美だけは良かったから、始めから中身を期待せずに見に行けば満足できると思います。
………それって実質アナ雪2では!?