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名作と駄作を交互に作るという罠【トラップ 感想】

先に言っておくと、今回絶賛です。全体評価が3.5(2024/10/27時点)なのが納得行かないレベルの良作だったので、みんな今すぐ劇場に走れ!


久しぶりの当たりシャマラン!




まず設定が面白い。「ライブ会場に殺人鬼が潜んでいるスリラー物」という前情報だけ入れていたが、まさかその殺人鬼視点で物語が進むとは。


クーパー=殺人鬼であることを、小さな違和感で徐々に明かしていく流れも掴みとして完璧。始めに娘思いの優しい父親という側面を強調して描き、その後警察を異常に警戒している様や、監禁映像を垣間見せることで、「あれ、もしかしてコイツが殺人鬼?」と、こちらの心をがっちり掴んでくる。



そして話の核となる脱出劇。これが中々面白い。


クーパーは、ベテラン殺人鬼としてのノウハウ(?)を存分に活かしながら、脱出の糸口を探っていく。スタッフから情報を引き出し、カードキーや無線を盗み、とっさのアクシデントはその場の出まかせで鮮やかに切り抜けていく。どれも大胆かつ手際よくこなすお陰で、ハイテンポなケイパー物として非常に見応えがあった。



警察を指揮しているプロファイラーことグラント博士も、作中の緊張感を高めるために一役買ってくれていた。


「ブッチャーは、火災報知器を鳴らして騒ぎを起こすだろう」


「関係者になりすましている可能性がある。男スタッフを全員調べ上げろ!」


といった具合に、クーパーの行動を先読みしてくる。脱出の手段がどんどん封じられるというピンチが、観客をハラハラさせるのだ。


このようにあえて展開の幅を狭めることで、先のストーリーを予測出来なくさせる手法は見事。そしてクーパーはしっかりとその窮地を乗り越えていくから、どんどん物語にのめり込んでしまう。



そして何より語りたいのが後半のストーリー。レディレイヴン視点に切り替わった瞬間の衝撃よ。「はぇ~ここから更に広がるのね!」と素直に感心。前半、手が届かないトップスターとして描かれていた彼女との距離感がグッ近づく感覚は、今までにない映画体験だった。物語の舞台がガラリと変わる構成は、ついこの間に公開された「ウォッチャーズ」を連想したな。シャマラン、娘に影響されたか?


クーパー宅での水面下に繰り広げれられる心理戦も、前半に引けを取らずしっかり面白い。クーパーから人質を盾に牽制される中、それに全く動じないレイヴンの強かさよ。誰にも頼らず、たった1人で人質を救い出す大胆な行動力に、彼女がスターたる由縁を感じた。




あとはクーパーが内面に抱えるトラウマ要素についても触れておきたい。


本作は、いわば「殺人鬼の悲劇はまだまだ続くよエンド」だ。全編通して、クーパーは母親の幻覚を見続けていた訳だが、物語が終了しても尚、その亡霊に縛られたままと解釈できる作りになっている。


これはシャマラン映画としては異例な気がする。というのも、過去作の主人公はどんなトラウマを抱えていようと、最後の最後は何かしらの形で乗り越えてきたから。このスリラー物としてはベタなオチ、シャマランが撮ったと考えるとここまで新鮮に感じるのかと、我ながら驚きました。





………語りだしたらキリがないな。ここからはシーン毎に好きなシーンを挙げさせて欲しい。



・カッター返す件

シャマラン映画特有の、何か起きそうで起きない焦らし展開の真骨頂だね。今回、人殺しを想起させるミスリードが随所に散りばめられているのが良かったね。結局殺らないんだけど、そこでしっかり物語を進めてくれるから全く退屈しなかった。



・レディレイヴンのライブ

ビジュアル、音楽、パフォーマンス、どれも普通に良い。ティーンが熱狂するのも納得のクオリティだった。後になって調べたけど、レイヴン役はシャマランの娘なのね。自分の子供を大スター役に抜擢するとか新ジャンルの親バカだな。あと夢見る少女みたいな、素人を舞台に上げるシステム、あれ実際にあるのかね?ファンの民度によっては上げられた子がボロクソに叩かれてそうで怖い。デジタルタトゥーになりそう。



・シャマラン登場

後ろ姿のままクーパーと話しているシーンで「あれ……この声はまさか!?」と思ってたら、次のカットでいつもの顔よ。無駄に二段階に分けたサプライズ出演に笑ってしまった。



・電気ショック受けても動けるクーパー

強すぎ、もしかしてお前も24重人格?



こんな所かな。




あー………あと強いてのマイナスポイントも2点だけ。



まず、警察の立ち回りがガバすぎる。クーパーのスペックが高いから仕方ないにしても、もうちょい頑張れよた思うシーンが多々あった。具体的に挙げると、クーパーが家から脱走してリムジン乗っ取る件と、その後何やかんやあっていつの間にかリムジンから逃げたしている件。あとは自転車触らせて脱走の機会与えちゃってる所。


ブッチャーって十数人殺してるんだよね?なら即射殺or完全拘束する勢いで行かんかい!




もう1つは、妻がトラップだったというオチ。流石にあれはクドかったかな。レイヴン主人公パートがピークだっただけに、「え、まだ続くの?」と若干飽きそうになってしまった。


冒頭で物販のスタッフが「いわばこのアリーナそのものがTRAPだ!」とか言ってたから、「多分クライマックスで真のタイトル回収されるんだろうなー」ってのが読めてたし。その期待を越えられなかったのは惜しい。




総括「信じてたぜシャマラン!」です。


前作「KNOCK」がクソつまんなかったのが嘘みたいだな。やっぱシャマランは最高の映画監督や。これからも私を楽しませてくれよな!


余談。前作の酷評レビューはこちらです。

今思えば相当甘口評価だった気がする。マジでつまんなかったから。

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