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withコロナ時代、料理雑誌の特集に起きた変化

withコロナ時代、私たちのライフスタイルや行動様式は大きく変わりました。そのなかで、私たちの「食」や「家庭料理」にはどのような変化が起きているでしょうか?

その変化を捉えるために、「料理雑誌」の特集に注目してみました。

料理雑誌の特集は世相を反映、もしくは先取りしています。

雑誌は編集長の影響が大きいので、編集長がとくに素敵な(と私が勝手に思っている)料理雑誌の特集の変化に注目することで、その変化をとらえてみようという試みです。

対象雑誌

前述の通り、私が「編集長が素敵だな~」と勝手に思っている雑誌を2つ取り上げてみます。

1. オレンジページ
日本の料理雑誌でトップクラスの発行部数を誇ります。

コンセプト:暮らしに「おいしい」と「ワクワク」を
読者層:40代~50代女性が6割
編集長:2019年8月17日号より秋山リエコ氏
1号あたりの平均発行部数※2019年1月~3月
…320,600部
年24回発行(月に2回発行)

2.dancyu
編集長が最高で、かつこの雑誌不況下で部数を伸ばしているスゴイ雑誌です。飲食店も掲載されているため「家庭料理」に限らない「食いしん坊のための雑誌」ですが、「食」の変化を見るに最適だろうと思い取り上げます。

コンセプト:「知る」は、おいしい
読者層  :食べることが大好きな食いしん坊の集団
編集長  :2017年4月より植野広⽣氏
1号あたりの平均発行部数※2019年1月~3月
…116,867部   
年12回発行(月に1回発行)

どのように変化を調べたか?

2017年までのバックナンバーを遡り、月ごとに各号の特集をまとめました。じ、地道…。(※オレンジページは月に2冊発行)

本当は10年分くらい遡ろうかと思いましたが、前述の通り雑誌は編集長の影響力が強く、編集長が違えば雑誌の方針も結構変わります。

とはいえオレンジページは現編集長就任以降の2019年以降ではサンプルが少なすぎるため、ひとまず2017年1月号~2021年1月号までをまとめました。

雑誌の制作期間はおよそ2か月といわれているので、コロナの影響は2020年の4月発売号くらいから反映されているのではないかな…と推測しています。
※違っていたら大変申し訳ないです!

このまとめから見出した変化を紹介していきます。

▶消えた鍋とお弁当特集

コロナ以降、オレンジページからは「鍋」と「お弁当」特集が消えました。

🍲
2018年から2020年まで、1月号は必ず「鍋」特集があったのですが、
2021年の特集にはありません。家族といえど鍋をつつく提案はあまり支持されないのでしょうか…?

🍱 お弁当
2017年~2019年まで、4月か9月のどちらか•必ず年に1回は「お弁当」特集が組まれていますが、2020年は無し。

ただ2020年3月号が「冷凍おかず&のっけ弁究極のラク弁!」だったので、コロナに関係なく2020年のお弁当特集は3月号の1回だけの予定だったのかもしれません。

お弁当は、在宅勤務の継続や行楽控え、運動会などのイベントの中止によってレシピのニーズも減少していると考えられます。2021年に果たしてお弁当特集が組まれるのか、注目しています。

▶消えた食材単独特集、増えた「言い切り」コピー

オレンジページでは、2017年~2019年は「特定の食材」の単独特集が年に4回程度組まれていました。

ふわとろ♪卵スペシャル(2017年3月)
キャベツで極うまおかず(2017年4月)
人が集まる日は、「鶏もも」が主役(2017年12月)
卵って、ごちそう級!(2019年3月)
ずるいじゃがいもレシピ(2019年9月)
なすに悶絶!(2019年6月)…など

それが、2020年は9月号の「栗原心平さんの豚おかず」の1回のみ。

2020年は食材を限定せず、広いテーマの特集が多かったように感じます。

6月号 :夏野菜をおいしく味わうspecial
10月号:ご飯がすすむ、すすむ 秋野菜は和ごはんがいいね!

これは推測なのですが、コロナ禍で自炊する頻度が増え、日々の献立やマンネリ化に悩む人が多いことが背景にあるのでは?

なすやたまごなど特定食材のレシピをたくさん知るよりも、とにかく毎日料理しなければいけない!飽きないために色々なレシピが知りたい!という生活者が多かったと思うのです。

そんな背景があって、献立のバリエーションを狭めないことがキーワードだった気がします。

一方で、力強いコピーが多く登場しているのも2020年の特徴だと思います。

例えばオレンジページ恒例の「パン&スイーツ特集」のコピー。

2017年:秋の一冊まるごとパン&スイーツスペシャル
2018年:秋のパン&スイーツ
2019年:パン&スイーツに夢中
2020年:今食べるべき!パン&スイーツ

2020年は過去3年にはなかった「今食べるべき!」という文言がついています。

他の号にも力強いコピーが。

2020年4月号:平日に夕飯を作る人を応援します
2020年8月号:レンジに頼ると決めた!

ちなみに、コロナ以前のコピーはこんな感じ。

2019年8月号 :夏のお助けラクチンごはん!
2019年11月号:簡単なのに、ごちそう級!フライパン煮込み

このニュアンスの違い、伝わりますかね…?

2020年は、「毎日料理を作らなきゃいけない」ストレスも強くて、「もう何も考えたくない!」「誰かにお任せしたい!」という気持ちが強くなっていた気がします。

そこで「応援します」とか「レンジに頼ると決めた!」ときっぱり断言されると、「もうオレンジページさんにお任せする!ついていくわ!」と委ねられる気がするんですよね。

「(自粛の度合いなど)正しさの基準が人それぞれ異なるなかで、自分で考えて行動しなければいけないストレス」がつきまとう環境では、”料理くらいは何も考えたくない!”という人も多いのではと思います。

コロナ以前から”献立”って料理に関するお悩みの中で常に上位でしたからね…自炊頻度が増えて、その悩みがますます加速する中で、オレンジページのこの力強いコピーはとても頼もしく感じます。

▶コロナ禍だからこそ登場したワード・消えたワード

コロナ禍だからこそ登場したワードと、消えたワードをまとめました。

<登場したワード>
オレンジページ
2020年11月号:食事でも暮らし方でも、ウイルスを寄せ付けない
2020年12月号:冬のおうち時間はもっと楽しくできる!
2021年1月号 :わが家史上最高のおうち正月に!

dancyu
2020年5月号:自由で、きまま ひとり呑み
2020年7月号:元気になる肉料理

<消えたワード>
dancyu
2018年1月号 :たのしい宴会
2018年12月号:おいしい鉄道
「外」を意識したワード
⇨美味東京、東京の味わい方、美味下町、町の鮨など

切なくなってきましたね。たのしい宴会したい!

ただdancyu2020年11月号は「真っ当な酒場」という特集を組んでおり、コロナ禍で盛り上がっている「応援消費」の気配を感じます。

▶揚げもの🍤が登場!

オレンジページでは2017年~2019年には一度も登場しなかった「揚げもの」が2020年9月号で特集化されました。その名も「平日も揚げもの食べたい!」

2020年は、前述の通り「料理めんどくさい!!」という人も多かったと思うのですが、おうち時間が増えて「普段よりちょっと手間のかかる料理にチャレンジする」気運も高まったと思います。

揚げものをラクにするアイデアが紹介されているのですが、それを差し引いても「平日に揚げもの」って、これまではなかなか考えられなかったと思うんですよね。

これまでのように自由に外食できない、在宅勤務のため平日も少し手間のかかる料理を作る時間がある…そんな状況だからこそ、「平日でもおうちで揚げたてアツアツの揚げものを楽しもうよ!」という提案ができるのようになったのではないか、と考えています。

平日の食事は「時短・簡単至上主義」が加速していた中で、新たな方向性が誕生したように思います。

▶これからの家庭料理はどうなるか?

料理雑誌を眺めてみたうえで、withコロナ時代のこれからの家庭料理について、個人的に予測を2つ立てました。

①大冒険はしない

ここ1年のオレンジページとdancyuの特集を見ると、「攻めたな~!」みたいなテーマがないんですよね。

コロナ前は「脱・夏バテおかずが即完成 栄養満点!特製うまみだれ(オレぺ・2018年9月号)」「羊好き(dancyu・2018年6月)」など、ムーブメント化を狙っているような特集があったのですが。

dancyuでは同じ「和食」テーマでも、方向性がまったく違います。

2019年2月号:新しい、和のごはん
2020年6月号:ちゃんと和食

2021年もしばらくは「新しさ」「斬新」よりも、「ほっとする」「落ち着く」というワードや料理が強いのではないかと思います。

ただ、海外旅行に行けないフラストレーションはあるので、外国の料理を家庭で作る機会は増えると考えています。

とはいえ「使いきれるかわからない、得体の知れない調味料・食材」ではなく、1回使い切り商品や・なじみのあるメーカーが作っている商品、もしくは「カオマンガイ」や「シュクルメリ」など身近な食材で作れる料理、が支持されるのではないかなあと。

②何でもない日を”ミニイベント化”

夏祭りや運動会など、季節行事が軒並み中止になっている中、何でもない日に「ミニイベントを作る」傾向が加速するのではないかと思います。

先ほどの「平日に揚げもの」はまさにそれに該当します。

ほかに、たとえば
金曜日の深夜に焼き菓子を焼くとか、誰の誕生日でもないけど手巻寿司パーティーをするとか、おうちでドーナツを揚げてみるとか、翌朝のためにフレンチトーストを仕込むとか、お正月にガレット・デ・ロワを買ってみるとか、ちょっと良いフルーツをおとりよせするとか、梅仕事にチャレンジするとか…

ミニイベントは4つくらいに大別できるのと思います。

・馴染みのある料理でも作るタイミングを変えることでミニイベント化
⇨平日揚げ物、手巻き、フレンチトーストなど

・コストのあまりかからないアイテムの購入
⇨おとりよせ、ガレット・デ・ロワなど

・季節を感じる食イベントへのチャレンジ
⇨梅仕事など

・普段は買うものを家で手作りする
⇨ドーナツづくりなど

上記のように、食を通じて生活に「ミニイベント」や「起伏」を無意識に作ろうとするのではないかなあ、と思います。

🍳

長々書いてきましたが、いろいろ暗いニュースがあふれる世の中で、家庭料理の変化をこの目で見られることにはとてもワクワクしますね。

自分の予測も立ててみたわけですが、これからの料理雑誌でどのような特集が組まれていくのか、楽しみです。

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