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西表島、アダナデの滝 その⑥海の気配を感じた

 「歩く」と「飛込む」と「泳ぐ」を繰り返し、アダナデの滝まであと少し、ほぼ平坦で快適だ。

ふと、山はカラフルだと気づく。流れる沢の水の色は瞬時に色を変えて立体的に生きているし、岩は灰色だけでなく、ルビーに負けず赤く輝いて、オーラを空高く放っていた。地味な小魚も瞳が青く、手長エビは爪の先を渋いオレンジ色にアレンジしている。手長エビの半透明な黄色い胴体がキラリと光かり、光を追って顔を真上に上げた。適度な空と雲の割合が黄金比だ。今日は風もなければ今のところスコールもない、いつまでもお日さまが見つめているイイ天気。幸せだ。

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まぶしい空を仰ぎ見ながら、ハッと気づく。

海が色彩豊かなのは山がそうだからだ。

誰が言っていたか忘れたが、「山があるから豊かな海が広がる。」そう言われて、そうだろうと知ったふりをしていた。知ったふりを平気でしていた事にアダナデの滝の手前で気づいた。

山に降った雨が色彩豊かな新緑の隙間や赤く輝く岩の上を滑り流れ、小魚の光るウロコに触れて、手長エビの力強いオレンジの尾っぽで弾かる。そうして色付けされた命が海に流れたどり着く。だから西表島の海はカラフルに人を魅了するのだ。今度、西表島の海に潜る時には、今日見た景色を思い出すことができるだろう。海中でジャングルの生命を感じながらスキューバダイビングが出来るかもしれないと思うだけヨダレが垂れた。

アダナデの滝にたどり着くまでは小さな滝も楽しむことができる。あるポイントでは滝の内側に入り込む事ができて、天然のジャングルクルーズ体験が味わえた。水が途切れている隙を見つけてスルッと滝の裏に潜り込む。狭い空間に駆け抜ける轟音が鳴り響く。

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轟音とは逆に滝の後ろ姿からの景色は透明で真っ白でとても轟音を作り出している元とは思えない立ち振舞いだ。そして、ここにも海の色を見つけてしまった。海の中には白い砂地が広がるポイントがあって、癒し系ダイビングには欠かせない。ジャングルの中にも純白の世界があるのだ。

沢登りの終点がアダナデの滝だった。突然、沢が終わり、滝から落ちた水がたっぷりのエメラルドグリーンの天然プールが現れた。アダナデの滝からは若々しい命が勢いよく溢れ出ていた。

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ようやくゴールしたと言うよりも、吸い寄せられ、たどり着いたという感じだった。目の前には何も隠さずその全貌のすべてを見せてくれている光景があった。アダナデの滝は、西表島という大きな島の中でも引けを取らない存在感だ。人間が作らないものは、その想像力のはるか高い所を越えて現れるものかもしれない。つづく。