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西表島、アダナデの滝その⑦なるべく大きな一歩で飛び出す

未知なる出来事は人を良くも悪くも変化させる。目の前の出来事が自分にどんな変化を起こすか考え、期待しながら旅をしたい。

西表島で自分の心の変化や成長を感じたかった。

 アダナデの滝に触れてみよう。触れに行く手段は泳いで近づくことだ。西表島ティダカンカンのツアーガイドKさんがアダナデの滝の流れ落ちる根元に向けて泳ぎ始める。私もそのあとに続いてお粗末なカエル泳ぎを始めた。手で水をかくと数ひきの魚が慌てて方向転換をする姿が見えた。「いいところに住んでいるね。」うらやましくなり声をかけた。泳ぐと言っても、ライフジャケットのおかげで優雅なカエル泳ぎでも鼻歌まじりで快適だ。

滝の水が落ちているギリギリの所まで近づくと左側の岩を力いっぱいよじ登る。体がずっしり重く感じたのは、きっと気のせいだ。私がアダナデの滝に触れるよりも先に、岩によじ登る私の手の甲をアダナデの滝が触れてくるので、気持ちが焦った。

岩によじ登り、滝に触れようとした時、ツアーガイドのKさんが「滝に打たれてみますか?」と言った。触れるだけで十分だった気持ちが一気に高まる。滝の中はどうなっているか「知り」に行こう!何かを感じるというよりも、好奇心が先走った。

ツアーガイドのKさん指導のもと、目の前を轟音を立てて流れ落ちる滝を左側に見てまっすぐ立つ。

右手で左腕ごしに滝の端っこの岩の割れ目に手をかける。体をクルッと180度、滝に背を向けるように回転させる。ここが少し怖くて、岩の割れ目に入れている右手の指4本が水圧や岩のヌメリで抜けてしまわないか心配になる。でも、大丈夫です。滝の中の岩はしっかりゴツゴツしていてヌメリもなく、力強くつかめます。滝に背中を向けながら、左手で右手と同じように滝の中に手を入れて岩の割れ目を探り、その割れ目に左手の指をかければ完成だ。

肩から背中に大量の水の流れを感じる。ジャングルの酸素をふんだんに取り込んだ生きている血液を、背中いっぱいに受け止めている気分だ。岩の割れ目から指が外れてしまいそうな感覚はなくなり、ぴったり滝に寄り添えた。端から見れば、大量の水しぶきをあげて、穏やには決して見えないだろうが、肩に当たったさわやかな水しぶきがまぶしい空に次々と溶けていく様で、心地が良かった。こんな清々しい滝行なら真夏の間だけ、ここで滝修行をしたい。

どのくらい滝に打たれていただろうか。肩にかかる水圧がずっしり腰まで響いてきた。いつまでも滝に打たれたままには出来ないから、左手を離すことにした。

アダナデの滝アトラクションはまだ続く。アダナデの滝の岩はよじ登ったが、下りる時にはドボンと滝の水しぶきの先の大きなアダナデのプールに飛び込むだけだ。ツアーガイドのKさんが飛び込む。私もためらわず飛び込んだ。今、思い出すと結構な高さからのドボンだったイメージがあるが、この日はアダナデの滝までドボンを何回も繰り返してきたので、高さから飛び込む度胸が付いたのかもしれない。Kさんが教えてくれた飛び込むポイントは大きく一歩踏み出すことだ。なるべく遠くに飛ぶこと。少し手前は心持ち狭いので、なるべく大きな一歩だ。つづく。

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