危機に怯える精神科医と恐怖を感じない小説家①
揺さぶられた時に人は本性がでます。
普段は偉そうにしていて、新型コロナウイルス感染症の時、不測の危機に慌てふためいた医療関係者と、医療に詳しくなくとも動じなかった一般の方の対比を見ながら、デタラメと誠実な人間の見分け方を学ぶことができる貴重な機会でしょう。
猛威を振るった新型コロナウイルス感染症が広まった2020年、
ある病院の院長は、周りの病院で、スタッフが次々に感染していっているのをみて、
こんなメールを送りました。
4.その他、「市民の行動変容」について以上の通知は、勤務時間外や週末の皆さんの個人的行動を規制するものではありませんが、この緊迫した世界情勢の中で、特にヘルスケアに従事する者として、専門家会議が提唱する「市民の行動変容」という基本戦略を十分理解した上で、節度ある行動をとられることを期待します。
これは一応理解できます。できるだけかからないようにしてください、お願いしますね、ということですね。
この10日後、不安が昂ったのか、長文メールの中で、
1. 緊急事態宣言は出ていませんが、当院として今後2週間、飲食店などでの職員の会食、歓迎会などを禁止します。
と言い出しました。
もちろん、病院関係者に、(専門医を勤務外に緊急時に呼び出す当番制など)雇用契約の例外を除いて、勤務外の行動をあれこれ禁止する権利など一ミリもありません。どこへ行こうと誰と会おうと勝手です。何様でしょうか。
法的な権限もないのに、危機だったら、正しいことだったら、強制してOKということはありません。(このように行動し、後で間違っていたことがわかったとき、さかのぼって訴追された人間がどうなったかの例は歴史上枚挙にいとまがありません。)
それよりも大丈夫かと思うのは、10日間で、言っていることが全然違いますね。
明らかに自分の発信を覚えていません。チェックする周りの部下もそのまま流してしまったんでしょうね。
さらに付け加えると、行動変容すべきだったのは自分です。
なぜなら、デブだからです。
(肥満は新型コロナウイルス感染症を重症化しやすくなると初めの方からわかっていました。)
僕はデブの医者は基本的に信用していません。(何らかの疾患なら別)
全職業の中で肥満のリスクに関する知識を、最も持っている職種です。
ちなみにこの男性院長の専門分野は胃外科ですが、
男性の肥満は胃癌のリスクファクターです。
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8491.html
普段から行動変容していない人間は、こういう時に隠せません。脂肪の量も。
もう一例あげましょう、
ある病院の精神科医は、
院内メールで、「自分がかかったらと思うと怖い」「不安だ」を毎週のように連呼し続けました。
あー不安だ不安だ。
怖い、と思ってしまいます。
こんなんばっかりでした。
気持ちはわかります。
一般市民であれば、ブログやSNSでのように、そのままの感情を発信し続け、共感した人同士で頑張っていくということもできるでしょう。
でも、精神科医ですよね。
自分の不安感に対してはこういう対処をしたという、実践的な内容ならまだしも。
感情をどのように受け入れる、不安に対処する方法など、認知行動療法というものがあります。精神科医であれば誰でも知っています。
普段から実践しているんでしょうか。
そのまま自分の感情を言いまくってみっともないと思っていないのでしょうか。
こんなことをしちゃうのは、普段の患者さんへの診療を自分で実際にやっていないからなのかなと僕は感じました。
あるいは、人間の不安からくる発言を「不安」と言語化して、処方するだけで、あまり深く考えて流れ作業だったのかなと思いました。
いずれにしろ、精神科医としての技量を疑いました。
ここからは僕の経験ですが、平和な時はほとんどの人がいい人ばかりです。
危機が起きた時こそ、その人の普段考えていること、行動していることが出てくることが多いです。
食事会で知り合った人と、一緒に仕事をして、利益配分や支払いを相談する場になって、豹変したみたいなケースはよく聞きます。
飲み会や趣味の集まりではみんないい人であることが多いでしょう。
でも、自分の損得が発生する時、リスクが発生するとき、誰かを切って誰かを守らねばならない時、いい人を繕っている人の本当の姿が出てきてしまいます。
記録に残るものは、残しておいて、後々から突きつけるといいかもしれません。
医療知識が豊富な人間が大騒ぎで逃げまどう体たらくとは逆に、深い知識がなくとも危機に明らかに動じない人間がいました。
次回紹介しましょう。