時代を感じさせる心臓
心臓は血液を送り出すポンプの役目をしているので、
内臓の中では一番ダイナミックに動きます。
逆にいうと、ダイナミックに動けるような組織になっています。
心臓が止まってしまうと生きることはできないので、心臓が固まってしまう病気(収縮性心外膜炎など)は、血液の循環が止まってしまい、重篤になることが多いです。
高齢の方の心臓を見ていると、稀にガチガチに固まってしまっている人がいます。
心臓は血液を収める4つの部屋からなっていて、それぞれ二組ずつセットになっています。
1セットでは、体から血液を集めて肺に送り、もう一セットでは、肺から来た血液を全身に送る機能があります。つまり2つのポンプがあり、それぞれのポンプの中に2個の部屋があるというイメージです。それらの二つのポンプはお互いに分離されながら、同じ臓器の中に格納されているという構図になっています。2つのポンプを別々に配置するより同じところに配置してまとめて同じ筋肉で作動させた方が、効率的ですし、リズムが合うので、2つのポンプ同士の効率性も上がります。
ガチガチに固まっている人は、この4つの部屋のうち1つないし2つ以上が固まっています。どうやって固まっているかというと、部屋の内部にカルシウムのコーティングができてしまうのですね。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcvs/46/5/46_231/_pdf
なぜこんなことになるかというと、子供の頃溶連菌感染という、細菌の感染を経験すると、この細菌に対する免疫が活性化して、なぜか心臓などにも炎症が起きるのですね。それの痕みたいなものがこのガチガチな部屋というわけです。この病気のことをリウマチ熱と言います。
この部屋は左右、心房と心室の二つずつで、掛け算して計4個ということになりますが、なぜか左の心房により多く起こります。
陳旧性リウマチ熱と言います。
今はリウマチ熱は減りましたが、昔は多く、ここは想像ですが、適切な治療が行われなかったケースもあるのかもしれません。
ちなみに、なっていた方は、高い割合で心臓の部屋と部屋を繋ぐ血液の逆流を防止する弁(主に僧帽弁)が壊れているケースが多いです。
僕が見た人では、全員心臓が大きかったです。心臓が大きいとは、負担がかかっていることを意味します。解剖例を触ったことがないのですが、部屋の伸縮性が悪くなったのと、弁が壊れたことによる、逆流が主な原因と思われます。
若い人には少ないので、時代を感じさせる病気ですね。