神経は嘘をつかないの嘘


脳神経外科医が「神経は嘘をつかない」と教えてくれたことがありました。

神経が壊れているところははっきり症状として現れるという意味ですね。

ところが、例外もよくみられます。

例えば、腰椎椎間板ヘルニアという病気は、
背骨と背骨の間のクッションの役目をしている椎間板というものが、圧力でニョキっと突出します。

突出したところが、後ろだと、脊髄が通っている脊柱管を圧迫したり、脊髄から各背骨の間を通る神経を圧迫したりします。

https://www.joa.or.jp/public/sick/pdf/MO0007DKA.pdf

こうなると、圧迫している神経に痺れや麻痺が生じます。

脊柱管内には、脊髄がおさまっており、背骨と背骨の左右の隙間に神経の枝を出しているんですね。
ここのいずれかが圧迫されて障害が起こります。

例えば、エレベーターが脊髄だとすると、各階の扉が、この隙間(神経孔)にあたります。
https://osaka-seboneatama.com/2021/08/14/lfs-3/

背骨の本数は数がほとんど一定であり、従って神経の通る隙間も一定の数になるので、
番号がつけられています。

どこの番号の神経が障害されたかで、どこに症状が出てくるかが大体決まっていて、デルマトームといいう地図になっています。
例えば、L 1,L2(腰椎の上から数えて1、2番の神経)は大体、股関節の周囲になりますね。

https://jtca2020.or.jp/news/cat3/dermatome/

どこに症状が出てくるかで、どこが悪いのかわかるので、
そこを狙って検査をしたりします。

ここまでは、神経が嘘をつかない場合で、主に急性に神経が圧迫されたケースに多いです。

嘘をつく場合とは、慢性的に神経が圧迫されたケースです。

腰椎の椎間板は一部がニョキっと出てくる場合もありますが、全体的に潰れて平たくなるケースがあります。膨隆という名前がついています。
この場合は、椎間板の高さは低くなりますが、外周は大きくなります。ちょうど鏡餅を潰した時のような感じです。

椎間板ヘルニアと同じで、神経を圧迫しますが、これは大体慢性的に徐々になる場合が多いです。

椎間板ヘルニアも合わせて生じている場合も多く、ヘルニアが発見されても、それまで自覚症状が乏しかったケースもあると思われます。

この場合は、神経の障害された部位が、痛みになるとは限りません。嘘をつくわけですね。

ひどいと神経の圧迫されている番号はおろか、左右も異なることが結構あります。

なので、僕は慢性の病変の場合は、神経のどこに障害が生じているかの判断は一旦放棄しています。

おそらく慢性の時は、症状が出ないで慣れていくケースも多いのでしょう、
その中でも、やや最近急にでた椎間板ヘルニアや膨隆によるものだけで疼痛が誘発されていて、他の神経の圧迫は症状が出ておらず、部位が違うように見えるのかもしれません。

いろいろ例外はあるものですね。