事故を起こしたい人と未然に防ぐ人
病院で患者が診察、検査や治療を受けるとき、人ごとに違うことが多く、システム化されてはいるものの、手作業で流れを汲んでいきます。
思い違いや、思い込みが発生しやすく、思いもよらなかったミスが起きたりします。
重大な事故を未然に防ぐ人たちについて解説しました。
よく、医療現場で見落としやミスがあって、患者が危険な状態になった、亡くなった、病気が悪化したことが起こり、社会問題になるケースがありますが、
実際にはもっと大量に起きています。
よく聞くのはハインリッヒの法則ですね、
1件の重大な事故の裏側には重大事故に至らなかった29件の軽微な事故があるというものですね。
要するに、ミスが多く起こっていて、確率的に重大事故に発展しうるということですね。
「やらかすと思ってた」です。
僕も日常的に、ちょっと間違っていたらとんでもないことになっていた出来事に出くわします。
例えば、患者の応対にあたり、書類のチェックなどの事務作業を担当している職員が、僕が報告書に書いた、重症の病気の診断をみて(僕は主治医からの依頼に応じて、診断して文書として報告する仕事をしています)、
「これは重大な情報だから念の為、口頭でも主治医に伝えなければ」とピックアップし、自発的に報告しようとしていたケースを目にしました。
もちろん、このケースでは口頭でも伝えても伝えなくても、文書で伝えることになっているので、ミスは起こらない可能性は高いです。
この職員は、医療資格こそ持っていないものの、通常ではない事態の時に、違和感を発揮して、何かアクションを起こさないといけないと考えている人でした。
「いつもとはちょっと違う」この感覚が大事です。
この感覚を感じていたとしても、うまく言語化できず、「誰かが何とかしてくれるだろう」と言って流すこともできますし、そういう事例は多いです。
いつもと違ったら、誰かに言って、言語化し、共有することで、問題が顕在化します。
何となく、流れるということに歯止めがかかるのです。
一方、以前の病院の医療安全委員会(医療の安全を保つために、ミスを集計したり、報告しあったり、防ぐにはどうしたらいいかを考える組織が病院にはあります。)の長をしていたのが、心臓血管外科医でした。
院内には、ヒヤリハットなど、事故になりかけだったものや、実際に軽微な事故が起きたものなどを報告するシステムがありました。
院内の集会の時に、「軽微なものでも報告してくれると、診療報酬つくからどんどん報告してほしい」と呼びかけていました。
つまり、報告すると、病院の収入になるという意味です。
※いまだに意味を理解していませんが、下記の診療報酬の表を見ると、
「医療安全管理体制の基準」の中の「安全管理のための医療事故等の院内報告制度が整備されていること。」で、報酬がつくということでしょうか、詳しい方教えてください。
https://multimedia.3m.com/mws/media/1965737O/med-624-a-medicalenvironmenttopics10.pdf
これをそのままの意味で取ると、
金がもらえるから、ミスを報告してほしいとやや無理矢理な気がします。
また、この医師は、スタッフが手術室でミスや事故を報告しようとすると「また問題を増やすな!」と言ってよく激昂したそうです。
医療におけるリスクを履き違えているこのような低能には、自分がミスを作り出している側であるということがわかっていないようです。
大事なのは、ミスを報告してもペナルティを受けないという空気です。
もし、何か重大な事故が起きて、訴追される時、最近はこのような雰囲気まで調査されていることが多い印象です。
心理的に報告することに抵抗を感じるのは、雰囲気ばかりではありません。
素人のIT企業の作った使えない報告システムを何も考えずに導入した病院がありました。
ミスやミスに至る事例は山ほど起こっていましたが、
報告する文書システムが、ラジオボタン形式のチェック方式が何十個もあり、事例に当てはまらない項目ばかりでした。
一件書き上げるのに何十分もかかる上に、改善策を提示して報告してもフィードバックも全くなく、みていないんだなとなって、途中から全く報告しなくなりました。
さらに、長時間労働→ミス→使えないシステム報告書作成に時間がかかる→の繰り返しで、
報告書作成がミスを誘発しているのではないかと思えるほどでした。
話を戻しますが、
専門の知識がなくとも、イレギュラーなことがあったら、恐れずに誰かに言語化しようとするスタッフは、今までにも何人も出会ってきました。
このような方とは、現場レベルで再発防止策を立てる時も、建設的でどんどん議論が進んでいきます。
一件重大な事故があると、最悪、億単位の訴訟、行政処分、裁判にかかりっきりになる労力など、全然コストに見合いません。
アメリカの会社ではそのような制度があると聞いたことがあり、日本や医療機関ではとんと耳にしませんが、
本来ならこういうスタッフの素晴らしいファインプレイは、褒められて然るべきで、むしろ臨時報酬を出すべきかもしれません。