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[読書記録] 私の言語学

発想のユニークさと論理の明晰さで、言語学のみならず、日本語・日本文化論に数々の新知見をきりひらいてきた鈴木教授は、問題関心の出発点をつねに自身の知的・日常的生活に置いている。知る人ぞ知る座談の名手が、その発想工房の楽屋裏をはじめてみせてくれた1冊。

Amazonより抜粋

[2008-01-26]
この方の本は何冊か読んだことがありますが、みんな面白いですね。

タイトルが「言語学」となっていますが、言語学というより日本文化論です。ヨーロッパと日本がどのように違うか、学問にしても日常のものにしてもヨーロッパのものをすべて良しとせずに一歩引いて考えを述べている著者の姿勢は、「欧米崇拝」しがちな態度がいかに危険かということを私達が理解するためのきっかけになるかと思います。

著者は、戦争について「戦争中は毎日暗い思い出じゃなくて、あれほど楽しい人生はなかった。つまり張りがあった。」と述べています。また、天皇陛下を神とも思っていなかったし、日本が勝てそうにないのも分かっていても、負ければいいなとは全く思わなかった。そして、負けたときも「自由の国がくる」とは全く思わず「なんで日本は負けたのだろう」とただただ泣いたそうです。もちろん戦争で亡くなった方、その遺族、そして生き延びたけどその後の人生が狂ってしまった方もたくさんいて、その方達が感じたことはこの著者とは全く違うでしょう。

ただ、当たり前のことですが、こんな非常に分かりやすい「戦争」に関しても、こんな個人の体験談を聞けば、戦勝国と敗戦国、そして敗戦国の中でも人によって感じ方はさまざまだということ、そして今でもいろいろな場所で戦争が起きているということは、戦争を「悪」という言葉では片付けられない部分があるということが分かるかと思います。だから、ある事に対して答えを誰か(特に欧米などの外国)から聞いただけでそれを正しいこととして受け入れることが危険だという著者の考え方には、私も賛同したいと思います。

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