【組織編】聞こえない人と聞こえる人が働きやすくなるコミュニケーションtips
こんにちは!
freeeエクスペリエンスデザイナーのnikoです。
先日、聞こえない人と聞こえる人が働きやすくなるコミュニケーションtipsを投稿しました。(読んでくれた方ありがとうございます!スキ!)
「聞こえに関わらず、お互いが働きやすい状態ってどうすればいいんだろう?」
このnoteでは第2弾、「デザイン本部」という部署の単位でチャレンジしたことを書きます。
組織という単位では個人やチームのコミュニケーションと異なる工夫が必要でした。
具体的にどんなチャレンジをしたかお伝えできればと思います。
(この記事に出てくる人やツールの補足)
一緒にはたらく聞こえない方:ぶらっくさん
エクスぺリンスデザインチームでResearchOps(リサーチ実施をサポートする役割。具体的には対象者へのリサーチの打診や、日程調整、謝礼の送付、リサーチルームの管理などを行う)としての業務に従事。日本手話、日本語対応手話を使え、また日本語も理解されている。UDトーク
音声認識と自動翻訳を活用した生活やビジネスの様々なシーンで活用できるアプリ。個人やチームで使う時のtipsは#1で詳しく書いているのでよかったら読んでください。
部全体で行うイベントをどうやるか?
freeeのデザイン本部では、定期的に部に所属するメンバー全員が集まり、取組みや成果を発表する会があります。
形式は前に出てスライドを映しながら話す形で、テーマ毎に発表者が変わっていくという流れです。
これは1〜数人での双方向のやりとりではなく、一方的に話をする・聞くというコミュニケーションになることを強く意識する必要があります。
結論、おすすめの方法は【手話通訳さんにきてもらおう】です。
手話通訳さんに来てもらうための準備
それまで私にとっての手話通訳さんは会見やニュースなど「テレビで見る人」で、身近に接したことがなかった存在でした。でもやってみたら来ていただくのは思ったより難しくなかったです。※お金はかかります。
私たちの場合は区の派遣サービスを利用するためにメンバーサクセスと一緒に下記のように準備をしました。
手話通訳さんの助成金を申請する
指定された日までに派遣依頼申込書に日時や概要を記載。また、おおよそのタイムスケジュールと会場図と人の配置を記入して提出
発表会が近づいてきたらトークテーマや当日使う資料を共有
実施後、報告書を提出。お支払いを済ませる。
特にぶらっくさんと相談したところは、依頼書に載せる「依頼人数」と「配置」です。
ぶらっくさん曰く、会全体が30分程度ならば1人、2〜3時間の場合は15分程度で交代する形で2〜3人いた方が良いそうです。ここは会の時間、予算も踏まえて検討するポイントかと思います。
そして配置は、ぶらっくさんの同一視野に【手話通訳さん・発表者・資料】が入る位置が理想です。発表者の側に手話通訳さんが居るのが一番良いですが、出入り口や発表者が切り替わる導線を塞がないようにするなど考慮するのも大切です。発表会運営メンバーと当日の会場を見ながらみんなに良い設営を模索しましょう。
UDトーク活用は難しかった
実はぶらっくさんが入社されて初めての発表会はUDトークでチャレンジしました。1人の発表に対して聞こえるメンバー5人1組で誤字が出たら直すという体制で臨みました。
やってみると、誤変換が予想以上に多い。。それに加え、耳から入ってくる情報とUDトークで変換される文字の微妙な時差により「先に進んでいる話を聞きながら、ちょっと前の会話が間違っていないかを確認する」というという作業はものすごく脳が疲れるということがわかりました。
さらに、その作業に当たったメンバーからは「変換作業に集中すると発表を聴く(内容に刺激されて考えを回らすというような頭の使い方)ができない」というコメントも出ました。
手話通訳さんを直近でみんなで見る体験
そんなUDトーク活用の難しさを感じた聞こえるメンバーにとって、手話通訳さんが、ぶらっくさんと手話でやりとりしたり、発表者が話す内容を流れるような手話で同時通訳する姿を初めてみたインパクトは大きかったです(発表中「手話通訳さんすごいスムーズ」「このやりとりは難しくて大変では」などslackで感想が飛び交っていました)。
メンバー全員が発表に集中できたことはもちろん、副次効果として耳の聞こえない人の第一言語である手話のテンポやスピードは、聞こえる人の第一言語で話すスピードやテンポとそう変わりがないことを目の当たりにするができた時間になりました。
ダイアログ・イン・サイレント、ダークに有志メンバーで参加してみる
ぶらっくさんが入社されて半年たった冬、ダイアログ・イン・サイレント、ダイアログ・イン・ザ・ダークが同時開催されている期間があり【個々人で参加してきて気づきをシェアする会】をやってみることにしました。
本部全体に声をかけた動機は、聞こえない人が感じる世界をみんなで体験することでした。
メンバーの体験をよくするために気をつけたことは下記です。
参加費用を会社から補填してもらえないか掛け合ってみる
ダイバーシティやアクセシビリティの観点で打診が良さそう
個々人でいく
馴れ合いを防ぎ、刺激が多く得られるのでおすすめです
全員が体験を完了するまでの期間がある場合、体験した人が忘れないうち気づきを書ける共同ドキュメントを予め用意する
miroなど共同で書き込めるツールであればなんでもいいと思います
参加したメンバーからの感想
シェアする会でメンバーから出た感想の一部を抜粋(ネタバレは極力減らしたつもり)します。
やってみると、個人でできるだけ多くの刺激を受けたあとに感想を共有すると視点や気づきが最大化できるように思いました。共有の時間はやはり大事です。
まず「目が合っている」状態でないと、わからない。視界に入ってない手話や動きには気づけない。視界に入ってるかな、と思っても相手が集中してると気づいてもらえないから、まず気を引かなくちゃいけない。
「見えているのに意味がわからない」ということのストレスが思っていた以上に大きかったのを感じました。ぶらっくさんとのやり取りはすごい支えられている。
伝わる相手にばかり話しかけてしまう、伝わらない相手にはコミュニケーションをしないという行為に発展しそうです。これが恐ろしいなと思いました。
手と顔で感情や気持ちを届けることができる。一方で(イベントのワークを通して)仕事のためのコミュニケーションは言葉がないとめちゃ難しいとわかった。
表情で伝えることを普段意識できていなくて、そして自分は苦手な方だと思う。ジェスチャーで何かを伝えたくても、その機微は表情や動きの大きさなどでしか伝えられないことに気がついた。そして若干顔が筋肉痛気味になった。。
思ったことを口に出す、というより、端的に表すには、という表現を考える感じでいつもと違う脳を使う感じだった
(おまけ)
書きながら、、「なんで私は”耳の聞こえない人をサポートしたい”ではなく”耳の聞こえに関わらずコミュニケーションしたい”という気持ちが起こったんだっけ?」となったので、振り返ってみました。
社内研修で受けたショックが私の原体験だったかもしれない
ぶらっくさんの入社目前の昨年5月末、freeeの「社会の進化を担う責任感DAY」全社オンライン研修(mioさんが詳しい内容をnoteにしてくれてます)があり、私はそこで「みんながしんどい世界は簡単に起こって、それはツライ」と思ったことが大きかったと思います。
私は聞こえない人の役で、リモートワークでの研修だったのでパソコンの音量をオフにするだけで擬似環境を作れました。すると、ワンタッチで世界が一気に変わり「みんなで笑顔で楽しそうに話しているが内容が全くわからず入れない」という、もどかしさと孤独がみるみる溜まっていきました。
終了後の振り返りタイムで、その気持ちをぶつけてみるとチームメンバーの感想は想像に反し意外なものでした。
笑っていたのは、”これは難しい!笑うしかない”という笑顔だった
ツールがないと何も制限がない人が制限がある人同士の間に立ちがちで、負担が大きい
目が見えない人と聞こえない人の間にコンピュータがなくて聞こえない人の発話もなかったら、目が見えない人には聞こえない人の存在すら感じられない それを改善しようと間に立とうとするとこれまた大変
自分だけがツライと思っていたのが「実はみんなしんどかった」ということに私は衝撃を受けました。
自然と変わっていった1ON1のコミュニケーション
もう一つは、上の体験の後に聞こえに関わらずコミュニケーションすることは工夫次第で、できるという体験が継続してあること、かもしれないです。
具体的には#1で紹介したツール、そして手話やボディランゲージを気軽に使っています。
私は、ぶらっくさんが入社されてから週に1回、1on1をしています。最初はドキュメントに文章を書いて伝えてましたが、次第に口パクやボディランゲージを交えたものが増え、今はドキュメントは使わずに手話と指文字で(かなりたどたどしいですが)コミュニケーションとっています。
「手話を覚えて使えるようになりたい!」という強い気持ちがあったわけでなく、「それは手話だとこうだよ」「へ〜こう?」と軽い気持ちで真似をして、そのテンポに感情が乗ってくるというか、聞こえる人と会話をしている感覚に近いものに近づいていってその連続が今の形になって言った感じです(ゆるいです
社内で見かけた人が「手話できてかっこいいです!」と褒めてくれることがあるのですが、実はオリジナルなボディランゲージを駆使してる時だったりしますw
なので恥ずかしさが取れたら、割とみんながやれてしまうのでは?そこまで垣根のあるものではない、と思うようになりました。
もちろん正確性が必要な話にはドキュメント形式でやりとりすることが重要なのは変わりないのですが、そのときどきで自由にやり方を変えていくことを気軽にしたいなと考えています。
終わりに
2回にわけてtipsを紹介してきました。
どなたかの働きやすさを考えるきっかけや参考になれば嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!