粛々と、穏やかに。
私は手紙が捨てられない。
人からもらった手紙は、すべて大切にしまっている。
私にとって、シンプルに一番嬉しい贈り物なのだ。
その中でも、手に届くところに置いているものがある。
夫からの手紙だ。
夫はよく私に手紙を書いてくれる。
手紙といっても短くて、小さなメモに一枚くらい。
こう書いてしまうとなんだかとても仲が良い夫婦のようだけれど、
喧嘩した日の翌朝に、「ごめんね」と気持ちを書いてくれたことが始まりだった気がする。
手紙が少しずつ増えて来た頃、日付も入れて欲しいと伝えた。
後から読み返して、どんなことがあったか分かるように。
私が入院していた時も、夫は手紙をくれた。
面会がままならなかった時、一つ一つ、封筒に入った短い手紙をいくつも渡してくれた。
私はその手紙を、毎日一つずつ開けて、ベッドの上で読んでいた。
手紙を読んでいる時は笑顔になれた。
そうして、夫からの手紙は私の宝物になっていった。
命がある、ということは、いずれ避けられようもなく、どちらかの命が先に尽きてしまうということなので。
もちろん想像したくはないし、そうならないと良いと、つい思ってしまうのだけれど、
もしも夫が先に私の前から居なくなってしまうことがあれば、この手紙を読んで寂しさを紛らわせたい。
もちろん、二人で手紙を眺めながら、「こんなこともあったね」と、笑い合えたらもっと良い。
そんな他愛もない日々を過ごして行けたら、それが一番、きっと良い。
今日は私からも、夫に手紙を書いてみようか。