男性浴場を女性が清掃する件について ~男性の性的羞恥心が大切にされる社会を願って~
NHKが、マスキュリズムに関連して、とても意義深い記事を掲載してくれていました。男性用の大浴場を女性スタッフが清掃する件について取り上げています。貴重な統計も載せられた良記事だと思いますので、紹介させていただきます。
“本当はイヤなのに 男湯・男性トイレに女性清掃員 なぜOK?”(2022年7月1日 19時48分)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220701/k10013696731000.html
高校3年生の男子生徒の投稿がまず紹介されています。
また、「温浴振興協会」が実施した調査の結果も掲載されていました。
公衆浴場の脱衣場や浴室は、"異性の存在を前提としない場" です。そこへいきなり異性が入ってくることは、本来はあってはいけないことだと思います。しかし、それが男性に対してはまったく担保されていないというわけです。
温浴振興協会が行ったアンケート調査結果によれば、「気にしたことがない」が5割,「男女どちらでもいい」が2割ということで、約7割の男性が脱衣所や浴室の清掃を女性が行っても平気ということのようですね。しかし、たとえ少数派だったとしても、男性の性的羞恥心を踏みにじっていいということにはなりません。
もっとも、この回答には年代による差が出てきそうだなと思います。若い世代のほうがより羞恥心が強い傾向があり、女性スタッフによる清掃により強く抵抗感を持つのではないでしょうか。この記事が書かれるきっかけを作ったのも高校生でしたし、温浴施設へ是正するように意見を出す男性も20~30代の方が多いようです。
また、「男は恥ずかしがるべきではない!」とのジェンダー規範による抑圧の影響も無視できないでしょう。意識していたとしても意識していなかったとしても、程度の差こそあれ、すべての男性がこの抑圧下で生きています。男性としてこの世へ生を享けたその瞬間からです。そのため、本当は女性スタッフが脱衣場や浴室へ入ってくることに対して羞恥心があり、不快感を抱いているのだとしても、それを表出できない男性も実のところ多くいると予想します。潜在的には、もっと多くの男性が不快感を持っているのかもしれません。
(性的羞恥心が麻痺してしまっている男性も多く居るのではないでしょうか。これもジェンダー抑圧の結果ではないでしょうか)
羞恥心を公に表出することが社会的に許されており、羞恥心に対する配慮が当たり前のように行われるというのは、いうなれば女性の "特権" です。女性の性的羞恥心に対する配慮は誰しもが当然のように行うし、もし不十分であれば女性が直ちに声を上げ、基本的には速やかに是正されるようになっています。
それに対して、羞恥心の表出が許されず、羞恥心に対する配慮をほとんど受けられないのが男性です。ジェンダー抑圧により性的羞恥心の表出じたいを禁じられているため、問題視すらされません。勇気をもって声を上げる人が現れても、その人を待ち受けているのは苛烈なバッシングあるいは無視です。
(ジェンダー規範に縛られた男女からのバッシング,性的羞恥心が麻痺している男性からのバッシング,羞恥心に対する配慮を男性が求めることを許したくない "特権" の上に胡坐をかいた女性からのバッシング……… etc.)
この問題は、以下のように、ジェンダーの偏見に基づく差別的取扱として整理されそうです。
〇 ステレオタイプ:「男性はあまり恥ずかしがらない」
〇 偏見: 男性は全裸で入浴しているところを女性に見られても平気。
〇 差別: 男性用浴場の清掃を女性従業員が行うことを許容する。(女性用浴場の清掃を男性従業員が行うことは絶対に行われないいっぽうで)
店側が、経済的合理性のためにこの差別的な取扱いを行っているという側面が大きいと思います。「男性スタッフは男湯へしか入れられないけれど、女性スタッフは女湯へも男湯へも入れられる」と考えて、女性スタッフを多く配置していると考えられます。繊細な男性の性的プライバシーを蹂躙して、人件費抑制を実現しているというわけです。
しかし、この社会は少しづつですが変わってきているようにも感じます。 声を上げる男性が確実に増えてきています。これが一番大きいです。臆せず声を上げる人が増えれば増えるほど、問題が認知されるようになるからです。「男性が恥ずかしがっても良い」「男性だって性的羞恥心への配慮を求めて当然」という感覚が社会の常識となる日が、遠くない将来には訪れたらいいですね。
補足:この件については、男性浴場を清掃する業務に従事させられている女性たちにとっても、重大な人権問題であると考えます。
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