マッピング解法で解く!私大現代文《1》──青山学院大学(前編)
❖本文を読まずにどこまで選択肢を絞れるか?
『共通テスト現代文マッピング解法』の発刊を記念して,「マッピング解法で解く私大現代文」の連載を始めます(不定期)。
ただし,本文解釈を交えた小難しい解説はしません。細かく解説していくとキリがなく,ブログ形式では煩雑な長文になって読む方も大変です。
ここではマッピング解法の〔作業①〕,すなわち《傍線部──選択肢》マッピングを使った場合,「本文を見ないでどこまで選択肢を絞れるか」を検証するにとどめます。
気軽に読めるエンタメ系記事として,受験生以外の方にもお楽しみいただければ幸いです(細かいところが気になる方は,赤本などの過去問集の解説をお読みください)。
❖《ダイレクトマッピング》,意外に使えます!
さて,《傍線部──選択肢》マッピングですが,これはマッピング解法における〔作業①〕,「傍線部の言い換え表現を選択肢中に探す」のことです。詳しくは以下の記事をご覧ください。
《傍線部──選択肢》マッピングは,傍線部と選択肢との直接的な対応関係から正解候補を探し出す作業です。本文を読み返す必要がなく,あわよくば一撃必中,ダイレクトマッピングと命名しました。
その切れ味を,青山学院大学2021年度【国語】(一般選抜・全学部日程)の大問1[評論]で試してみましょう。
出典は日比嘉高「声の複製技術時代」。スポーツとメディアの関係を考察した硬質かつレトリカル,評論文を読み慣れていない高校生には,やや難解かもしれない文章です。
❖傍線部「物語を構築」の言い換え表現は?
設問で「傍線部b(X)とはどういう意味か」と問う限り,正解の選択肢には「こういう意味(Y)ということ」と書かれるはずであり,X=Yが成立します。つまりは,Xの言い換え表現がYというわけです。
では,この設問の傍線部では「物語を構築(しながら)」に着目し,これが選択肢でどう言い換えられているのかをチェックしてみます。
各選択肢では「***しながら,ということ。」の「***」の部分に該当する表現が対応しています。それぞれ抜き出してみると・・・・・・
どうでしょうか,一発で④を仕留められますね。④以外に「物語を構築」に近い表現は一つもありません。実際の正解も④です。
大問の序盤ですから,作問者も軽いサービス問題として出してくれたのかもしれません。
では,問三~七(問四を除き本文の空欄補充問題)を飛ばして後半の問八にいきましょう。
❖2択からの決戦投票,これっきゃない!
ここでは傍線部「欲求を,(・・・が)高める」に着目し,選択肢にその言い換え表現があるかどうかを探します。各選択肢で対応するフレーズを抜き出すと下のようになります。
③と➄に「当確マーク」がついて“決戦投票”になりますが,本文に戻っての吟味まではする必要がなさそうです。
というのも,傍線部では「欲求」について「本物の試合を、選手を見たいという欲求」と修飾されているからです。これを正しく言い換えているのは,③と➄のどちらでしょうか? 下に抜き出してみました。
迷う余地がありません。③は明らかに違います。➄の「本物を見たい」は傍線部「本物の試合を,選手を見たい」を一括りにして言い換えた表現ですので,正しいと判断できます。実際の正解も➄です。
❖「言い換え表現」を広くとれば一撃必中!
傍線部「欲求を(・・・が)高める」に着目し,その言い換え表現を選択肢に探すと,以上のように「二択に絞ってからの決戦投票」という2つのステップを経て➄を正解と確定できます。
しかし,傍線部の着目フレーズを「本物の試合を,選手を見たいという欲求を,(複製という存在自体が)高める」と広くとってその言い換え表現を探すと,二択に絞るまでもなく一撃必中で➄を仕留められます。
通常の解き方ですと,何度も本文に戻って選択肢を吟味するうちに迷いや予断が生じ,フェイク選択肢を選んでしまうことがあります。それこそ作問者の「思うツボ」なのです。
しかし,ダイレクトマッピングは傍線部と選択肢の関係性のみに着目するため,本文に書いてある内容がいったん頭から離れます。すなわち岡目八目,「なんだ,単純なことじゃないか」と気付けるのです。
❖大盤振る舞いのボーナスステージ?
ここまでの2問,ダイレクトマッピングによる正誤判断によって,素早く正解を仕留められました。ほぼ秒殺と言ってもよいでしょう。
さあ,終盤です。そろそろ厳しくなってくるでしょうか?
後に控える傍線部問題は,問九と問十一の2問。
結論から先に言うと,この2問も本文に戻ることなくダイレクトマッピングで一撃必中。マッピング解法を使いこなせる受験生にとっては,思わぬボーナスステージとなります。
長くなったので,いったんここで切ります。
続きは次回,中編で!