新刊本『共通テスト漢文8本のモノサシ』 熟練・老獪“三羽マジック”炸裂!!
大学入学共通テスト本番まで残すところ1ヶ月余り。ここから先は「まだ伸びそうな科目」に目をつけ,効率よく学習することが大切です。多くの受験生にとって,その筆頭に挙げられるのが漢文ではないでしょうか。
漢文は狙って満点を取れる数少ない科目の一つです。では,この短い期間でどうやって? それを余すところなく教えてくれる参考書を紹介します。
著者は東進ハイスクールの重鎮講師・三羽邦美先生,熟練・老獪の“三羽マジック”が冴え渡ります!
§1《知識+解法の着眼点》を速攻マスター!
本書の前身『センター漢文解法マニュアル』の初版は2000年,縁あって私が企画・編集に携わりました。それ以来,ほぼ四半世紀にわたって版を重ねているロングセラーです(2016年の増補改訂版から「8本のモノサシ」にタイトル変更)。
今回のリニューアル版で三羽先生が示す攻略法はいたって明快,四半世紀前とまったく変わっていません。
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①必要な知識(句法・重要語句と漢字・漢詩のきまり)を覚える
②解法の着眼点(8本のモノサシ)を身につける
③《知識+8本のモノサシ》を駆使しながら過去問を解く
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この3つのステップで完結します。
「必要な知識量」は古文よりずっと少ない。「解法の着眼点」も8つ。句法の知識があらかた抜けてしまっている受験生でも,2週間あれば充分にリマスター可能です。あとは過去問や予想問題集を解きながら《知識+8本のモノサシ》の適用スキルを磨き,本番を迎えるだけ!
それで満点(50点)を狙えるなら,チャレンジしない手はありません。もはや伸びそうにない“飽和科目”を捨て(=現状学力をキープ),漢文で10点,20点の得点上積みを図るほうが賢いと思いませんか?
§2 新傾向対策は「あって無い」ようなもの!
受験生にとって気になるのは,いわゆる新傾向問題かと思います。確かに2年分の共通テスト過去問(追・再試験含む)では,旧センター試験とはちょっと違うテイストの問題が散見されました。
ただし,三羽先生は「新傾向とは名ばかりで,問われている内容は旧センター試験と変わらない」と断言します。以下,本書の一節を引用しておきましょう(太字は日守)。
早い話,新傾向対策はあって無いようなものであり,「〔問題文〕が二つあっても、〔資料〕があっても、要はそれぞれの読解力であり、設問点にある何らかのポイントに着眼できる力、解答の根拠を文中に見つける力が大切である」(本書p.195,太字は日守)ということなのです。
§3 須らく句法・語法を覚えるべし!
読解力という言葉を聞いて,「チッ,それが自分にないから現代文でも苦戦してるんだよ!」と舌打ちする人がいるかもしれません。
ですが,心配はいりません。「漢文の読解力」は句法・語法の知識そのものとも言えるからです。
改めて本書の表紙カバーをご覧ください。
帯の先頭のコピーに「須らく満点を狙うべし。」とあります。この短文を読解できるでしょうか?
「全て満点を狙う必要がある。」
「みんな満点を狙うべきだ。」
どちらもバツ,句法の知識がないことからくる誤読です。
正しくは「必ず満点を狙う必要がある。」あるいは「満点を狙わなければならない。」というように読解(解釈)します。
「すべかラク・・・スベシ」は,「・・・する必要がある」または「・・・しなければならない」と訳さなければなりません。これが「句法」という約束事。知っているか知らないか,ただそれだけの違い!
共通テスト漢文で素材となるのは,随想的な文章(ある人物の逸話や史話)が多く,評論文(第1問)のような難解さはありません。頻出の句法・語法さえマスターしておけば,容易に読解可能なのです。
§4 熟練・老獪“三羽マジック”を手中に!
たとえば,2022年度(本試)の問3を見てみましょう(レ点は省略)。
いわゆる解釈問題ですが,正解に必要なのは,以下に示した仮定形「苟」の句法知識のみ。本書の該当ページを見てみます。
では,三羽先生がこの設問をどう解説されているかを,本書の第3部(共通テスト過去問演習)から引用しておきます。
解説では,このあと「我 当 図 之」の再読文字「当A」(当然Aすべきだ)に着眼し,選択肢⑤の後半「必ずおまえを絵に描いてやろう」との対応について分かりやすく説明されます。
本来,解釈問題は前後の文脈を踏まえた読解・解釈力が求められます。しかし三羽先生の手にかかると,このように「知識上のポイント」から一瞬で正解に達してしまいます。“熟練・老獪の三羽マジック”と言われる所以です(私の勝手な命名ですけど・・・笑)。
本書では「知識で絞れるポイントを探せ!」を含め,全部で8つの着眼ポイント(=8本のモノサシ)とその適用法が説明されます。
§5 例題・演習は全て過去問,10年分に匹敵!
全体では大きく3つのセクションに分かれています。
句法・語法などの必須知識をオールイン・ワン型でまとめた第1部は,90ページ余りでコンパクトに収まっています。
しかも,ただの知識の羅列,知識の丸暗記ではありません。「問題を解きながら,知識を使える形にして定着させる」をモットーに実戦例題が31題挟み込まれており,全て過去問から採っています。
第2部の「8本のモノサシ」も,実戦演習25題を通してマスターできるようになっていますが,ここで扱われる演習題も全て過去問です。
第2部までの計56題は,分量的には約10年分の過去問に匹敵します。すなわち,知識と8本のモノサシを習得した時点で,すでに共通テストの「傾向と対策」をほぼ把握できてしまうのです。
§6 “三羽の兵法”,須らく満点を狙うべし!
以上を土台に,第3部の「共通テスト過去問演習」では《知識+8本のモノサシ》を自在に使えるようにするための総仕上げに突入!
このようなステップを踏むことで,満点狙いの共テ漢文対策をムリなくムダなく,短期間で終えることが可能となります。「三羽の兵法」と言われる所以です(これも勝手な命名)。
§7 イラストを“心の箸休め”に楽しく学習!
全224ページは,分量的には多く感じられるかもしれません。しかし,余白やイラストを生かすゆったりとした紙面構成を心がけているため,「量が多くてやる気が失せる」とはならないと思います。
本文イラストは,三羽先生お気に入りのイラストレーター・福井若恵さん。小気味よくヒネリを利かせた独自の明るい作風は,ともすれば直前期の追い込みでカサカサしがちな心に潤いをもたらしてくれるでしょう。
実は、福井さんのイラストは、この本の表紙カバーにも描かれています。どこに潜んでいるのかはお楽しみ。気になる人は本屋さんに立ち寄って確認してみてください。
最後に,共通テストに挑むすべての受験生へ。
「少しでも楽しく学習を進めて,良い結果を出してほしい!」
三羽先生から預かってきたエールです。
それではまた!